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ニューバランスがFormlabsと共同開発の3Dプリンターシューズを発売

この出来事の要点

  • ニューバランスは3DプリンターメーカのFormlabsと共同開発した 新モデルシューズ「990 Sport 」を発売開始した。
  • 新開発の弾力性のある格子構造をもつRebound Resin(リバウンドレジン)と名付けた独自のフォトポリマー樹脂により従来不可能だった足の各部にかかる負担に応じたミッドソールの最適化を実現したという。
  • 今回は世界限定500足。今後はFormlabsと共同開発中の専用3Dプリンターを配備した生産拠点を整備し量産化に取り組む。

ニューバランスの「990 Suports」発売開始

米ボストンに拠点を置くスポーツブランド「NewBalance(ニューバランス)」は 2017年より協業している米3DプリンターメーカFormlabsとの共同開発で3Dプリンティングで作成されたミッドソールTripleCell(トリプルセル)を搭載したスニーカー「990 Sport」を発売した。日本では、2019年6月29日(土)よりニューバランス公式オンラインストアとニューバランス原宿・ニューバランス六本木19:06にて限定販売開始。

990 Sport写真

開発パートナーは3DプリンターメーカーのFormLabs

Formlabsは、米マサチューセッツ州サマービルに本社を置き、ドイツ、日本、中国、シンガポール、ハンガリー、米国ノースカロライナ州にオフィスを持つ3Dプリンターメーカー。光造形(SLA)方式の最新技術である「LFS」を搭載したForm 3とForm 3L、Form 2 SLA 3Dプリンタ、洗浄および二次硬化ソリューションであるForm WashとForm Cure、Fuse 1 SLS 3DプリンタやForm Cell 製造ソリューションなどがある。また高性能素材ならびに業界最高クラスの3Dプリント用ソフトウェアの開発も手掛け、2017年からはニューバランスと開発協業契約を結んでおり、ニューバランスのマサチューセッツ州マスーアンに設置する新工場の準備にも大きくかかわっているという。

ニューバランスにとっての位置づけは?

ニューバランスは1906年インソール製造からはじまったアメリカのシューズメーカ老舗だが、足長(26.5cmなど)だけではなく、足囲(幅:ウィズ)でもモデル展開している事が特徴だ。シンプルなオーソドックスなスニーカースタイルを根底に置きながら、機能性を重視した製品開発と志向する同社はこれまでも洗濯機で丸洗いできるスニーカーなどを発表してきた。ニューバランスにとっては高機能製品開発という中での一取り組みだが、製品調達や在庫管理という意味ではさらに大きな意味を持つ。2007年の全世界売り上げは1650億円だったが以降毎年10%の成長を継続しており、2018年度の売り上げが 約4950億円 見込みとのこと。成長著しいがそれでもマーケットシェアは4%。5年後に 約7700億円 を目指すという高い目標を掲げている。

AMで「量産化の壁を超える」、「調達上の自由度を広げる」

3Dプリンターは複数の素材の混合や複雑な形状の造形が可能だ。一方で生産歩留まりに難点があり、ロット数が増加してもコスト低減効果は少ない面を持つ。

フットウェア業界は一般的に、膨大な量の在庫を伴う。すべてのモデルについて、場合によっては男性用と女性用を15サイズずつ、それも複数の色で生産する必要がある。さらに各モデルには、個別に加工された多数の部品が用いられる。

ぺトレッカは、ひとつのプリンターで複数の設計データを基に素早くプリントできれば、米国と英国における自社シューズのパーツ生産能力の維持に非常に大きな恩恵をもたらすだろうと考えている。ニューバランスはマサチューセッツ州マスーアンに設置する新たな工場の準備を、Formlabsと進めている。

https://wired.jp/2019/07/23/new-balance-triplecell-3d-printed-shoe/

ニューバランスのイノベーション・デザイン・スタジオゼネラルマネージャーを務めるキャサリン・ペトレッカの談話をWIREDが取り上げているが、足長(レングス)と足囲(ウィズ)でサイズを展開するニューバランスにとってはどこでなにをどれだけ作るかというバランスシートへのインパクトは大きいといえるし、生産数とデリバリーコストの計算から生産ロットを最適化できる選択肢が増えることは大きな武器となるだろう。

サンプル写真
3Dプリンターで造形したミッドソール

量産化の壁を超えるために。

製品ライフサイクルが短く、素材や最新技術への感度が高いフットウェア業界での3Dプリンターへの取り組みは日進月歩だ。

1足数万円から十数万円の高付加価値限定シリーズを数量限定で販売するビジネスはシューズメーカの大小を問わず行っている手法である。世界限定500足などフラグシップ製品や多品種売り切り生産であり、様々なサイズを季節ごとに展開する 靴やインソール(中敷き)は、かねてから3Dプリンターによる製造に注目していた。これはビンテージスニーカー市場を意識した施策であり、ファッションシーンでのブランディングを意識したプロモーションでもある。 今回のニューバランスの取り組みは機能性にフォーカスを当て、量産化の壁を超えるために3Dプリンターを活用したものだ。こうした取り組みが進めやすい背景もある。今後の動向に期待したい。

関連情報

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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