米国の3DプリンターメーカーImpossible Objectsは2026年9月11日、シリーズBラウンドで4,000万ドル(1ドル約149円換算で約59億6,000万円)を調達したと発表した。同社は調達資金を活用し、独自の複合材向け積層造形技術「Composite-Based Additive Manufacturing(CBAM)」を用いた産業用3Dプリンターの生産拡大や、顧客への導入、サービス・営業体制の強化を進める。
今回の資金調達はInflection Equityが主導し、Aaron Wealth Management、OCA Ventures、Impact Capital、Excell Partnersが参加した。
目次
複合材料を高速造形するCBAM、試作から量産用途へ
Impossible Objectsが開発するCBAMは、炭素繊維などの繊維シートと熱可塑性樹脂を組み合わせ、複合材料部品を製造する積層造形技術である。
同社は、3Dプリンティングが長年にわたり生産技術として期待されながら、造形速度や材料、コストなどの制約から試作用途を中心に利用されてきたと指摘する。CBAMでは、高速な生産プロセスと複合材料を組み合わせることで、従来はCNC加工や射出成形などが担ってきた領域への適用を狙う。
特に金型を必要としないため、設計変更への対応や多品種生産といった3Dプリンティングの特徴を維持しながら、量産に必要な生産性を確保することを目指している。
同社が2025年初頭に投入した産業用システム「CBAM 25」は、最大毎分25層の造形に対応する。Impossible Objectsによれば、これは競合する量産向け積層造形技術と比較して最大15倍の速度であるという。
また、同プロセスで製造した複合材料部品は最大200MPaの強度を持ち、競合する積層造形プロセスの最大4倍に達するとしている。造形時の収縮や反りを抑えられることも特徴としている。
米軍では月産最大1万個のドローン機体生産を想定
CBAM 25はすでに航空宇宙、防衛、先端製造分野への導入が進んでいる。
Impossible Objectsによれば、2025年初頭の発売以降、CBAM 25は5件を受注しており、米空軍(U.S. Air Force)、National Institute for Aviation Research(NIAR)、Oregon Manufacturing Innovation Center(OMIC)、Rochester Institute of Technology(RIT)などへの展開を開始している。
なかでも注目されるのが、防衛分野におけるドローン生産への活用だ。米陸軍のRock Island Arsenalでは、CBAM技術によって月間最大1万個のドローン機体を生産できるとしている。
Impossible Objectsは米政府から総額2,000万ドル(同約29億8,000万円)の契約および助成も獲得している。
米国のSmall Business Innovation Research(SBIR)プログラムのフェーズIおよびフェーズIIでは、高強度・長距離飛行ドローン、従来製法による複合材料に匹敵する強度を持つ積層造形複合材料、3Dプリント部品内部への配線の一体化、軽量な航空機の翼や胴体構造などの研究開発が進められている。
同社の技術は米陸軍Rock Island ArsenalやAir Force Research Laboratory(AFRL)にも販売または導入されており、米空軍の技術ロードマップにも組み込まれているという。
4,000万ドルを投じ、産業用3Dプリンターの生産体制を拡大
Impossible Objectsは今回調達した4,000万ドルを、産業用積層造形システムの生産能力拡大、顧客への導入拡大、さらに増加する導入設備を支えるサービス・営業組織の構築に投入する。
同社CEOのSteve Hoover氏は、CBAM 25について、高い生産性と信頼性に加え、金型レス製造による柔軟性を量産現場にもたらすことを目的に設計したシステムだと説明している。
3Dプリンティングを試作から量産へ広げる動きは各社で進められているが、Impossible Objectsが狙うのは、炭素繊維複合材料と高速生産を組み合わせた領域である。今回の大型資金調達により、CBAMが研究開発や限定的な導入から、どこまで実際の量産設備として普及するのかが注目される。
シェアラボ編集部コメント
今回の発表で注目したいのは、単なる3Dプリンターメーカーの資金調達ではなく、Impossible Objectsが「量産」をかなり明確に打ち出している点である。
CBAM 25の最大毎分25層という造形速度に加え、米陸軍Rock Island Arsenalで想定される月産最大1万個のドローン機体という数字は、従来の「必要な部品を少量ずつ造形する」というAMのイメージとは異なる。
一方、CBAM 25は2025年初頭の発売以降、現時点で受注5件とされている。高速性や材料特性だけでなく、設備の稼働率や部品単価、後工程を含めたトータルコストなど、実際の量産現場でどこまで競争力を発揮できるかが今後のポイントになるだろう。
特に航空宇宙・防衛分野では、単純な大量生産だけでなく、必要な場所で必要な部品を迅速に製造する分散型生産への関心も高まっている。CBAMが射出成形やCNC加工を全面的に置き換えるというより、金型レスというAMの特徴と量産性を組み合わせることで、既存工法とは異なる生産領域をどこまで開拓できるのか注目したい。
用語解説
| CBAM(Composite-Based Additive Manufacturing)とは Impossible Objectsが開発した複合材料向けの積層造形技術。炭素繊維などの繊維シートに熱可塑性樹脂を選択的に付着させ、シートを積層・加熱・圧縮した後、不要部分を除去することで3次元形状を形成する。一般的な材料押出方式とは異なり、シート単位で造形工程を進めることで、高速な生産と繊維強化複合材料による高い機械特性の両立を狙っている。 |
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