エプソンアトミックス、不要な金属を原料として資源化する新工場が竣工

2025年7月4日
北インター第二事業所 金属精錬工場。

エプソンアトミックス株式会社(青森県八戸市、以下、アトミックス)は、セイコーエプソン株式会社(長野県諏訪市、以下、エプソン)のグループ会社として、2023年10月より建設を進めてきた「北インター第二事業所 金属精錬工場」(以下、北インター第二事業所)を竣工させた。建物および生産設備への投資総額は約55億円にのぼる。同事業所は、エプソングループおよび地域から排出される不要金属を金属粉末の原料として再資源化し、金属資源の循環利用を実現する中核拠点として位置付けられている。(上部画像は北インター第二事業所 金属精錬工場。出典:アトミックス)

シリコンウエハー再利用で資源循環を加速、安定供給体制を構築へ

アトミックスはこれまでにも、エプソンの半導体製造工程で使用されたシリコンウエハーを金属粉末原料として再利用する取り組みを、2020年より開始している。将来的に地下資源の枯渇や金属原料の価格高騰といったリスクが高まる中、同事業所は、バージン原料からの脱却と再生資源の活用を通じて、安定した製造体制の構築を目指している。

シリコンウエハーとは、半導体チップを製造するための高純度なシリコン製の円盤状基板である。直径は通常100~300mmで、スマートフォンやパソコン、自動車などに使われるICやLSIの基盤として不可欠な存在だ。製造は単結晶シリコンからスライスし、表面を研磨して仕上げられる。

不要金属を高品位原料へ再生、独自技術でMIM部品に展開

具体的には、アトミックスの製造工程において規格外となった金属粉末製品や、工場から排出される金属くず、さらにはエプソングループから排出される金属端材や使用済み金型などの廃材を回収し、これらを再資源化して高品位な金属原料を生成する。この再生原料は、アトミックス本社および北インター事業所において、独自の金属粉末製造技術を用いて新たな金属粉末製品へと再生され、金属射出成形(MIM)部品にも活用される。

こうした新たな精錬プロセスの導入により、アトミックスは金属資源の循環型利用を一層加速させるとともに、高品質な金属粉末の安定供給体制を確立する。これにより、次世代の省電力・小型デバイスの開発・製造を支える技術基盤としての役割も担っていく構えである。

「環境ビジョン2050」の実現へ、循環型経済を牽引する環境技術開発

この取り組みは、エプソングループが掲げる「環境ビジョン2050」における「カーボンマイナス」および「地下資源消費ゼロ」という長期環境目標の実現に資するものである。大量生産・大量廃棄に象徴される従来型の経済構造から脱却し、資源の再利用と環境負荷の低減を両立する循環型経済への移行は、今後の社会において不可欠である。エプソンは、材料開発をはじめとする環境技術の研究開発を通じて、このビジョンの実現に向けた先進的な取り組みを継続していく方針である。

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