SUNLUとInslogic、最大10スプール対応のフィラメント除湿キャビネット「FilaDC i10」を発表―加熱せずモレキュラーシーブで湿度管理

出典:SUNLU、INSLOGIC
出典:SUNLU、INSLOGIC

3Dプリンティング材料メーカーのSUNLUは2026年4月17日、米国ボストンで開催された「RAPID + TCT」において、Inslogicとの戦略的提携を発表した。両社は提携の第1弾として、フィラメント用除湿キャビネット「FilaDC i10」を発表。1kgのフィラメントスプールを最大10個収納でき、50種類以上の材料を乾燥した状態で保管できるという。

一般的なフィラメントドライヤーのように加熱した空気で乾燥させるのではなく、モレキュラーシーブ(分子ふるい)を利用して湿度を管理する点が特徴である。SUNLUは今回の製品投入により、フィラメントの製造・販売だけでなく、材料の保管・湿度管理分野にも事業領域を広げる。

最大10スプールを収納、50種類以上のフィラメントに対応

FilaDC i10は、大量のフィラメントを使用するユーザーを想定した除湿キャビネットである。1kgスプールを最大10個同時に収納でき、50種類以上の材料を乾燥した状態で保管できるとしている。

3Dプリンター用フィラメントの中には吸湿性の高い材料があり、空気中の水分を吸収することで造形品質や材料性能に影響が生じる場合がある。特にナイロンやTPUなどを安定して扱うには、造形時だけでなく保管時の湿度管理も重要となる。

FilaDC i10は、こうしたフィラメントをまとめて保管しながら湿度を管理する用途を想定している。複数種類の材料を日常的に使用する企業や研究開発部門、3Dプリンティングサービス事業者などにとって、材料管理の負担を軽減する選択肢となりそうだ。

加熱ではなく「モレキュラーシーブ」で水分を低減

FilaDC i10の大きな特徴が、フィラメントの湿度管理に加熱した空気を使用しないことである。

従来型のフィラメントドライヤーでは、ヒーターによって庫内温度を上げ、フィラメントに含まれる水分を除去する方式が一般的である。これに対してFilaDC i10では、モレキュラーシーブを利用してPETG、TPU、ナイロンなどのフィラメントに含まれる水分を低減する。

モレキュラーシーブは、微細な孔を持つ多孔質材料を利用し、特定の大きさの分子を選択的に吸着する材料である。乾燥・除湿用途では水分子を吸着する性質が利用され、工業分野でも広く使用されている。

FilaDC i10では、モレキュラーシーブとファンを組み合わせることでキャビネット内部を乾燥状態に維持する。この方式により、SUNLUとInslogicは従来型のフィラメント乾燥機と比較して消費電力と騒音を大幅に抑えられるとしている。

SUNLU、フィラメント販売から「材料管理」へ事業領域を拡大

SUNLUは2013年に中国・珠海で設立された3Dプリンティング関連製品メーカーである。フィラメントやレジン、3Dプリンター周辺機器などを展開し、270以上の生産ラインを保有。累計販売数は2,500万点を超えるとしている。

今回のRAPID + TCTでは、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどのエンジニアリングフィラメントに加え、シルク、レインボー、木材充填、ギャラクシーなど意匠性を重視した材料も展示した。

さらに、CMYK+Wカラーレジン、14K ABSライクレジン、高耐熱PLUSレジンなどを使用した造形サンプルも紹介しており、材料メーカーとして幅広いラインアップをアピールした。

一方、Inslogicとの提携によって投入するFilaDC i10は、材料そのものではなく、造形前の「材料コンディション」を管理する製品である。SUNLUにとっては、フィラメント供給から保管・湿度管理までをカバーする方向へ製品ポートフォリオを広げる動きといえる。

FilaDC i10は2026年7月1日の発売が予定されている。

シェアラボ編集部コメント

FFF/FDM方式の3Dプリンターでは、フィラメントの吸湿が造形品質を左右する要因の一つとなる。特にナイロンなど吸湿性の高いエンジニアリング材料を扱う現場では、購入後の材料をどのような状態で保管するかも重要な工程管理の一部である。

FilaDC i10で興味深いのは、単に大型のフィラメントドライヤーを作ったのではなく、加熱方式からモレキュラーシーブを利用した除湿方式へ発想を変えた点だ。最大10個の1kgスプールをまとめて管理できるため、複数材料を常用する企業や研究開発現場との相性も良いだろう。

一方で、実際の導入を判断するには、到達可能な庫内湿度、各材料の乾燥に必要な時間、モレキュラーシーブの交換・再生方法、ランニングコストなども重要になる。従来型の加熱式ドライヤーと比較して、実使用環境でどこまで省電力化と安定した材料管理を両立できるのか注目したい。

用語解説

FilaDC i10
SUNLUとInslogicが共同で発表したフィラメント用除湿キャビネット。1kgのフィラメントスプールを最大10個収納でき、50種類以上の材料を乾燥した状態で保管できるとしている。一般的な加熱式フィラメントドライヤーとは異なり、モレキュラーシーブとファンを利用して庫内の湿度を管理する。
モレキュラーシーブ(分子ふるい)
微細な孔を持つ多孔質材料で、分子の大きさや性質によって特定の物質を選択的に吸着する。乾燥用途では水分子を吸着する性質が利用され、ガスや溶剤の乾燥、工業設備の除湿など幅広い分野で用いられている。
フィラメントの吸湿
3Dプリンター用フィラメントが空気中の水分を吸収する現象。ナイロンやTPUなどは比較的吸湿しやすく、水分を含んだ状態で造形すると、ノズル内で水分が気化し、糸引きや表面品質の悪化、気泡、機械特性の低下などにつながる場合がある。そのため材料に応じた乾燥・保管管理が重要となる。
RAPID + TCT
米国で開催されるアディティブ・マニュファクチャリング(AM)分野の展示会・カンファレンス。産業用3Dプリンター、材料、ソフトウェア、後処理装置など、AMに関連する企業・技術が幅広く集まる。

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