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デジタルとアナログのハイブリッド。最先端の3Dプリント技術と日本の鋳造技術から生まれたヒール

すでに3Dプリンターの活用は、試作に留まらず、ビジネスチャンスとして画期的なサービスが日々生まれ、このサイトでも様々な事例を紹介し続けている。

しかしこれからは、アーティストや工業デザイナーが独自のイメージやアイディアを3Dプリンターを用いてダイレクトに具現化することによって画期的な製品を生み出し、新しい収益を企業にもたらす時代が来るだろう。今回ご紹介するコンセプトモデルは、そんな予感を感じさせる開発事例だ。

デジタル技術を活用したヒール「FORMLESS」

写真を見てもわかる通り、なんとも奇抜なデザインだ。

しかし、驚くべきは、このヒールは、ヒールにかかる力の向きや重さに応じて、ソフトウェアが適切なヒールの形状を自動生成する流れで製造しているという。

デザイナーが形を考えるこれまでのプロセスと異なり、一人ひとりに合わせてコンピュータがデザインをしていくマスカスタマイズの考え方を基にデザインされており、自動生成されるプロダクトを、どう美しく魅力的に見せるかを示した実験的なコンセプトモデルだ。

開発したのは、東京都目黒区に本社を置く、株式会社DiGITAL ARTISAN(以下DiGITAL ARTISAN)。

JSR株式会社(本社:東京都港区、以下JSR)及び株式会社キャステム(広島県福山市、以下キャステム)と、共同で製作したという。

DiGITAL ARTISANとは

DiGITAL ARTISANは、研究者・技術者・アーティストが持つ知見から、ビジネスのプロトタイプを生み出す「ラボドリブンビジネス」を実践する会社だ。

デジタルの職人を結集し、未来のものづくりを推進することを目的として設立された。

WEB URL : https://www.digitalartisan.co.jp/

■MEMBER

Design / 3D modeling 小野 正晴

DiGITAL ARTISAN ディレクター
本業のかたわら3D積層造形から衣服を生み出すプロジェクト「FREE-D」名義でも活動
2016 ASIA DIGITAL AWRD大賞/経済産業大臣賞

Shoe designer AYATO TSUMAGARI

宮崎県出身
ヒコ・みづのジュエリーカレッジ シューメーカーマスターコース卒業後
自己のデザイン研究し深く突き詰めるため特別研究生として卒業
主にハイヒールをデザインしている
作品の主軸には「エロチシズム」をテーマにしている
2016 着物から作るShoe designerとJewelry designer、4人からなる
デザイナーズブランド『MYSARE』を立ち上げる
2016 マレーシアファッションウィーク出展
2017 ヒコ・みづのジュエリーカレッジ特別研究生に選出される。

■オフィシャル動画

デザイン・モデリングはDiGITAL ARTISANの小野 正晴が行い、この技術の特徴である有機的な自動生成される形状をベースに、CGソフトウェアで彫刻的な処理を行ったという。作成されたデータは、JSRが代理店として展開するCarbonプリンターの精密な造形と、キャステムのロストワックスと呼ばれる高精度な鋳造技術で製作されている。

またシューデザイナーとして同社に参加するAYATO TSUMAGARIが、ヒールとの調和と全体のウェイとバランスを考えた、シンプルなデザインを担当。鋳造ウェッジヒール製作にあたって体重の動き、耐久性などの観点からも監修を行っている。

アッパーには革とネオプレーンというクッション性・耐熱性や耐寒性にも優れた、ダイビング用のウェットスーツとして使われている素材を用いることで、高いクッション性と着脱を繰り返しても問題のないフィット感の向上、金属のヒールソールの重さを感じさせない脚との一体感を実現させているそうだ。

Carbonプリンターとは

独自のCLIP(Continuous Liquid Interface Production)技術により、高速造型、造形物自体の優れた精度および物理的特性を実現している最先端の3Dプリンター。

将来のオンデマンド系製造業スタイル

DiGITAL ARTISANは、すでに研究者・技術者・アーティストが揃った会社のようであるが、将来は優れたプロダクトを設計できる人間は2~3人いるだけで、巨額の利益を生み出すことが可能になると言えば言い過ぎだろうか?

そうは思えない。

なぜなら今から10年も過ぎればハイエンドの3Dプリンターが世界中に普及し、同種のハイエンド機器と素材を持つサービスビューロへデータさえ配信すれば、どこの国でも同クオリティの製品をプリントアウトできるようになる。

そこに権利関係さえしっかり確保しておけば、何もしなくても掛け算式に収益が生まれる仕組は作れる。

抜きんでた人材に対しても一般の社員と 欧米ほど報酬について大きな差を設けてこなかった日本の製造業においても、これからは優れた研究者・技術者・アーティストに対して大きな対価を払うだけでなく、より重用せざるを得なくなっていくのでないだろうか。

数十年後には、一人のアーティストや工業デザイナーの動向一つに多くの一般的な投資家でさえ注目する。そんな時代も来るかもしれない。

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