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米老舗企業がボストンのエクセレンスセンターにデスクトップメタル3Dプリンターを拡張

米国で最も古いとされる製造サービスプロバイダーの1つであるAmerican Banknote Corporation(以下、ABCorp社)は、ボストンのエクセレンスセンターの新たな拡張を発表した。

ABCorp社は、今年5月に125,000平方フィートの敷地に、ソリューショニクス社の自動検査装置、ギルバウ社の産業用染色装置をラインナップした。すでにHP社の総合的なマルチジェット融合プリンタに加えて、AMT社のPostPro3Dスムージングシステムを含めてラインナップし顧客に提供している。今回の拡張により、DesktopMetal(以下、デスクトップメタル)のショップシステムの提供が開始され、顧客は使用することが可能になった。デスクトップメタル社は世界で最も急成長している3Dプリントのスタートアップ企業である。

ABCrop社とは

ABCrop社とは国家通貨や切手の原版を作成する事で、世界的に有名な彫版工の会社である。

ABCorp社が創業した1795年は、初代大統領ジョージ・ワシントンの時代であり、日本では江戸時代の寛政7年である。伊能忠敬が全国の測量を開始する5年前だ。江戸時代が終わる1867年から72年も前に創業した老舗の製造サービスプロバーダーだ。

日本では、江戸時代から続く老舗となれば古くからの技術(加えて味など)を大切に継承している企業のイメージが強いため、最先端の3Dプリンターなどとは縁遠い存在に感じる人も多いのではないだろうか。

同社が最先端の3Dプリンターを導入した理由は、 ABCorp社が創業以来大切にしてきた最先端のセキュリティー技術にある。偽造されない通貨の製造をミッションとして、現在のクレジットカードの偽造防止機能にも関わっている。このセキュリティ技術を活用し、製造工程においては3Dプリンターを導入すことで製造コスト削減を考慮していることが推察される。

セキュリティレベルが高い3Dプリント施設の提供

ABCorp社は、デスクトップメタル社のショップシステムによってセンターを拡張したことで、比類のない速度と生産性で、費用対効果の高い製品版の金属部品を3Dプリントできるとしている。また、17-4 PHステンレス鋼や316Lステンレス鋼など、複数のベース材料の柔軟性を備え、1つの建屋で設計から中規模の生産能力を提供する。顧客の機密性の高いプロジェクトのセキュリティを確保するために、ABCorpの非常に安全でIntergraf認証※1された施設ですべて生産される。

※1 Intergraf認証:世界最高水準のセキュリティ・マネジメントシステムの要件を規定した国際規格ISO14298の認証

ショップシステムは、ABCorp社の顧客に、柔軟なバッチ生産と大量生産の両方で製品版の金属3Dプリント部品を提供することが可能になる。この部品は、高解像度と優れた表面仕上げを特徴としている。

今後の展望

ABCorp社の会長兼CEOであるWilliamBrown氏は、次のように述べている。

「私たちの関係の多くは、数世紀とは言わないまでも数十年前にさかのぼり、衝動的に戦略的パートナーシップを結ぶことはありません。テクノロジーは私たちのビジネスの中核であり、最新鋭の金属加工においてデスクトップメタル社との新しい提携を発表できることを嬉しく思います。新技術であるバインダージェットプリントの採用により、ボストンを拠点とするABCorp社のエクセレンスセンターの積層造形(3Dプリント)機能が拡張され、メタルサブストレートが含まれるようになりました。デスクトップメタル社の新素材のロードマップとパートナーシップの将来に興奮しています。」

デスクトップメタル社

デスクトップメタル社は、3Dプリントを世界中のエンジニアやメーカーにとって不可欠なツールにするために、速度、コスト、品質という満たされていない課題に対処するため、高度な製造、冶金、ロボット工学のリーダーによって2015年に設立されたスタートアップ企業である。

デスクトップメタル社のCEO兼創設者であるRicFulop氏は「私たちはショップシステムの展開でABCorp社と提携することに興奮しています。この提携により、CNC機械加工などの従来の製造方法による制約の多くを排除し、複雑なものを手頃な価格で信頼性が高く、柔軟なバッチ生産を実現できます。」と語っている。

まとめ

ABCorp社は、自動車、消費財、政府および防衛、機械設計、重工業を含む製造部門全体の既存および新規のクライアントの両方にデスクトップメタル社のプラットフォームを提供することを計画しているようだ。

老舗企業が近代まで成長を続けてきた秘訣は、ABCorp社のCEOがコメントしている通り、テクノロジーはビジネスの中核であり、その動向を追い続け、見極めて最新の技術も積極的に取り込んできたことにあるようだ。しかし、衝動的に提携することはない、ということは時間をかけて場合によっては同じ時間軸で寄り添いながら開発を支援してきた可能性もある。それが老舗の老舗たる所以なのかも知れない。

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ShareLab編集部

電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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