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Carbonの3DプリンターでSWANSが起こした「モノづくりの革新」

従来の日本の3Dプリンター業界らしからぬ、特異な取り組み方

お話を聞きながら「なんだかドラマみたいだ」と思った。そう、昔よく見たプロジェクトXのような、熱いモノづくりがそこにあった。しかし何だろう。このモノづくりは3Dプリンターメーカーとスポーツメーカーが行うモノづくりとしてはなんだか特異な関係で実現しているもののような気がする。一般的には3Dプリンターメーカーは機器の販売が業務範囲だと思う。設計には立ち入らない。サービスビューロでもアドバイスこそすれ、設計変更を自ら行うことはない。なんだか特殊なことが起こっているぞ、と感じた。

これは前回JINSがCarbonの3Dプリンターを利用して3Dプリントサングラスを製造販売している取り組みを伺った際にも感じた事だが「毎週定例ミーティングを行った。」「テストショットを週1回のペースで行った。」など、まるで共同開発を行っているパートナー企業や長年の取引関係にある系列企業との取り組みのように、濃密な協力体制を感じる。

こういう感触を得た事は今まで200名ほどの業界関係者を取材しても初めての経験だった。なんだか昔の日本企業と出入りのデザイン会社や加工会社が一緒にモノづくりを行っているような親密な関係性。サブスクリプションとは聞いていたが、この緊密な連携はいったい有償なのか、無償なのか。ウェビナーに登壇した一部の企業だけのものなのか、それとも他の利用企業とも同じような関係性を培っているのか、別途時間をもらい、JSRの銅木 克次氏に疑問をぶつけてみた。

モノづくりのどこまでを一緒に行っているのでしょうか?

ウェビナーで当時を振り返るJSR銅木氏

―ウェビナーを受講してみて、なんだか他の3Dプリンターの導入事例とは毛色が違うような印象を持ちました。まるで協業パートナーとの事例発表会のように、登壇企業が自然にCarbonやJSRを語っている点が印象的だったんです。実際どこまで一緒にモノづくりを行っているか、伺ってみたいと思います。AMのプロセスには造形するためのデータ準備から造形、後加工まであると思いますが、協業の中身はどこまで及んでいるのでしょうか?

全部です。

―全部ですか?

はい。全部です。

―装置購入時におまけとして支援を行ったり、サービスビューロ的に、一部業務を追加料金をうけとって提供しているんですか?

勿論デザインはお客様のものです。また3Dスキャニングや後加工はさすがに別ですし、材料代は別途いただいていますが、一部の設計代行、お客様の設計されたデータにラティス構造を埋め込むようなデータ処理、よりAMを意識したデータに修正していく作業は、すべてCarbonのアプリケーションエンジニアが、定額料金内でお手伝いしています。

―それは顧客の設計データをCarbonのエンジニアが加工したり修正しているという事ですよね?

はい、Carbonは社員が400人以上います。アメリカ駐在のアプリケーションエンジニアやAMに精通したソフトウェアエンジニアのリソースは、必要に応じてサブスクリプション契約の中で、利用可能なんです。アメリカで働くCarbonエンジニアをJSRが通訳しながら、作業してもらっています。こういうスケジュールで実際に行動するので、リソースが必要と交渉すれば、そのリソースが活用できます。

Carbonのサブスクリプションがめざすユーザーの成功

―なにか条件はあるんでしょうか?

特にありません。年間725万円で3年契約のサブスクリプション契約をCarbonと結べば、どんな企業様でも同じサービスを受けることができます。ですが、強いて言えば熱量が大きい企業、目標がはっきりしているプロジェクトが優先されます。「やるかどうかわからないけれど、念のため相談したい」「まだ経営層とコミットできていないので決定ではない」という状態ではリソースの限りもありますので同様の協力を得ることは難しいでしょう。「経営層とも握っているので絶対にあと2ヶ月でローンチする」のように具体的なゴールが明確で、企業として意思決定している場合、Carbonはリソースを惜しみません。意思決定できるChampionがそのプランにコミットしていれば、極論設計者がいないプロジェクトでも、デザインからサブスクリプション契約の範囲内でお手伝いすることもあります。

―設計者がいないという事は、利用企業が3Dデータを作れないということですよね。3Dモデルをサブスクの範囲で用意してもらえるのですか?

はい、すべてのケースがそうという訳ではありませんが、すでに日本でも2社推進中です。まだ公表できる段階ではありませんが、とても画期的で、インパクトのあるモノづくりをされている企業様の事例があります。両社とも、プロジェクトに3DCADを描ける設計者はアサインされていません。紙に書いたデザインイメージを元に、Carbonのアプリケーションエンジニアがモデルを起こすところから作業しています。

このサブスク、思ってたのと違う

Carbonの3Dプリンターをサブスクリプション契約すると、3Dプリンターに関しては、電気代と材料費等の消耗品以外にランニングコストがかからない。その上で、担当チームが付き、極端な例(そして先ほどの銅木氏の発言にあったように日本で実際に2社契約済みの事例がある)では、3DCADを操作できる設計者がいない場合でも、AMで造形する際に最大限の効果を生むようにラティス構造を埋め込むなど3Dモデルを設計し、シミュレーションで造形の妥当性の検証を行い、最も生産性が高い積み方になるように積層造形用のデータを用意してくれるという。字義通り見るなら、デザイン会社やサービスビューロが有料サービスとして提供している業務と同じように聞こえる。

―これはいわゆるサブスクリプションの中身なんでしょうか?

はい、Carbonの考えるサブスクリプションは、材料費などの費用は別ですが、3Dプリンターの利用、DfAMに基づく設計支援、造形準備など、3Dプリンターを利用したモノづくりのための業務の全ては支援対象です。

―これはサブスクであってサブスクじゃない気がします。3Dプリンターを買ったらサービスビューロがおまけで付いてきたような印象を受けますがが、、、

やりすぎ、なんでしょうかね?ですがサブスクリプションビジネスの本来の定義に従うと、私たちの行っている内容こそが正しいと思っています。材料以外の3Dプリンター、設計やデータに関する支援体制、造形パラメーターの最適化やもっとも適切な造形の方法のご支援、そのすべてを含み、カスタマーエクスペリエンスを第一に考えるのがサブスクリプションです。守秘義務などに縛られる企業様は自社で進めていかれますが、私たちを使いこなしてくださる企業様とは、パートナーとして一緒にモノづくりに取り組ませていただいています。

***

通常の3Dプリンターの導入では、製品としての3Dプリンターの設置や試験造形の実施、教育トレーニングを受ける事はできるだろう。機器の保守も受けることができるだろう。しかし別途で費用を払って依頼しているわけでないのなら、「こんな製品を作りたい」という狙いを聞いて、サンプルデータを設計してくれる3Dプリンターメーカーはいない。作ってみたデザインデータを元に構造の一部をラティス化したり、アプリケーションエンジニアの観点でデータを修正してくれることは料金外の別の仕事になる。そう、Carbonを除いては。

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