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3Dプリントによってコンクリート使用量を削減する石壁「Hive」を発表

ウォータールー大学建築学部の研究チームは、幾何学的な機能を応用することで、少ない材料でも十分な強度を有する石壁「Hive」のコンセプトを発表した。(写真は石壁「Hive」/出典:ウォータールー大学)

持続可能なコンクリートの活用が当たり前の時代へ

環境保全への関心が世界的に高まっていることで、建築の在り方も見直されつつある。

コンクリートは現代の建造物を「支えている」主要な建築材料であるが、近年ではその問題点も指摘されるようになった。役目を終えて撤去されるコンクリートは、環境負荷こそ小さいものの、積もり積もれば多くのスペースを占有することになるだろう。コンクリートを再利用する試みも進められているが、再利用するためにはエネルギーも必要だ。つまり、CO2排出が問題となる。

前世紀に作られたコンクリート建造物はこれから大量に取り壊されるだろう。有限な土地面積を有効に活用し、CO2排出を抑えて持続可能な社会を実現するためには、コンクリート活用をミニマム化していくことが手っ取り早い。具体的に言えば、コンクリートの使用量を減らす必要に迫られている。

石壁のコンクリート削減成功要因-モジュラーウォール「Hive」とは

カナダのオンタリオ州に位置するウォータールー大学建築学部の研究チームは、石壁におけるコンクリート使用量を大きく低減する方法についてデモンストレーションを行った。

その方法とは、石壁を隙間だらけにすることだ。隙間が多ければ、使うコンクリートは少なくて済む。単純だが、これまでその方法が用いられなかった理由は、石壁の強度低下にある。隙間が広がれば、石壁の強度が低下することは必然だ。

加えて、中途半端に穴の開いた石壁は強度の計算が難しい。強度の予測ができない壁は、壊れやすいと分かっている壁よりも使い勝手が悪くなってしまう。

しかし、3Dプリンターを利用することで、上記の問題を一挙に解決できる、というのが研究グループの主張だ。

3Dプリンターは幾何学的に強度が高いとされる中空構造データを読み込み、そのまま現実のものとすることができる。こうして生まれたのが、モジュラーウォール「Hive」だ。

Hiveは、六角形が規則的に組み合わされた構造をしているが、実際には、六角形が4つ組み合わされてできる歪な三角形を1つの構造単位(モジュール)としてプリントアウトされる。後工程でそれらを並べ、間を別のコンクリートで埋めることで石壁が完成する仕組みだ(動画参照)。

つまり、この構造単位の組み合わせ次第では様々な形状の石壁が作り出せる。

HIVE – 3D Printed Masonry Wall(出典:ウォータールー大学)

Hiveの提示する新しい壁の形

Hiveという概念が提示するのは、コンクリート活用のミニマム化だけではない。

コンクリート壁に生じた空間は、視線や空気の流れに関して意図的なコントロールを可能とする。収納やフレキシブルな配線スペースとしての活用も考えられるだろう。これまで、空間と空間を遮っていた「壁」という概念に、「空間を遮らない」という選択肢が生じたのだ。

幾何学的に強度を高めるにあたって、正解は1つではない。同等の強度を持ち、全く異なる見た目の幾何学図形は無数に存在する。つまり、自由なデザインが可能だ。

Hiveは壁の機能を拡張する。ここから派生した次世代の壁は、想像を大きく超えたものになるかもしれない。

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