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いよいよ積層造形による、自動車部品の大量生産がはじまるか?デスクトップメタル社がドイツの大手自動車メーカから約9億円のシステム注文を発表

Production System™ P-50(出典:デスクトップメタル)

マサチューセッツ州バーリントンに本拠を置く3Dプリンターメーカー Desktop Metal(以下 デスクトップメタル)は、金属製パワートレイン部品を大規模に大量生産するドイツの大手自動車メーカーから、790万ドル(約8億9千6百万円)の受注を獲得したことを発表した。

デスクトップメタルが対応する材料は、金属、複合材料、ポリマー、セラミック、生体適合性材料、砂、木、エラストマーと多岐に及ぶ。そして、自動車、ヘルスケア、歯科、消費者向け製品、航空宇宙などの業界で急速に成長している顧客基盤を、世界中の1,350人を超えるチームでサポートしている。

年間売上げを1億200万$へ上方修正し、前年対比で500%を超える成長を記録しているデスクトップメタル社にとって、今回の受注は金額以上の意味がありそうだ。

デスクトップメタル社の3Dプリンター戦略

デスクトップメタルの創設者兼最高経営責任者であるリック・フロップ氏は、次のように述べている。

「この画期的な受注は、バインダージェットソリューションを世界で最も先進的なものにするパフォーマンスと経済性の証拠であり、積層造形による大量生産のビジョンの実現を支援するためにたゆまぬ努力を続けてきたチームの証です。」

デスクトップメタルは顧客とチームで積層造形を進化させている。そして、提唱するAdaptive Manufacturing 2.0(AM 2.0、積層造形 2.0)がより具体的になり、コスト面で大量生産が現実的になったことを受けて、顧客側が積極的に動き出した結果である。

特に、AM 2.0による製造の比率が2022年の終わりには46%にも上ると予測し、積層造形による大量生産のビジョンが示されている。

2022年終わりには金属の積層造形が46%を占める:デスクトップメタルのIR資料より

同社は、昨年末にニューヨーク証券取引所へ上場し、得た資金でExOne社とForust社を買収した。

ExOne社の買収

2015年創業のデスクトップメタルが、1995年創業の老舗の産業用3DプリンターメーカーであるExOne社を買収した目的は、信頼のベースになる経験が得ることであろう。自動車産業を始めとする従来型の企業に積層造形による大量生産に踏み切らせるには、防衛産業で培われたExOne社の経験が重要になる。

デスクトップメタルがExOneを約634億円で買収

Forust社の買収

デスクトップメタルは、金属材料の対極にある木材を3DプリントできるForust社を買収している。自動車産業にどう活用されるかは未知数であるが、EV化(電動車両化)は車室空間を住空間的に活用できるようになるとされていることから、内装に木材が使用される可能性がある。豪華客船やJR九州のななつ星クルーズトレインなどの内装が木製であることを考えると、軽量化にも寄与できる形でいろいろな可能性がでてくるであろう。

SDGsに貢献する環境に優しい3Dプリンター積層造形プロセス-Forust

自動車メーカーにデスクトップメタルが選ばれた理由

今年行われたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)は、自動車産業界に多大な影響を与えた。デスクトップメタルの最終製品の大量生産を実現するための積極的な計画とその実績は、自動車産業界の希望の星になる可能性がある。

生産ラインの治工具製造に始まり、試作車製造に3Dプリンターを活用してきた自動車産業界は、シームレスに大量生産に移行するタイミングを探ってきていた。パワートレインの部品構成が大幅に変わり、部品点数が大幅に削減されるEV車両化(電動車両化)のタイミングで移行できるのが最も望まれるはずである。

デスクトップメタルが提唱するAM 2.0は、そのコストダウン効果が3Dプリンターを活用した積層造形への移行を促すに十分と判断されたのではないだろうか。まだまだ規模は小さいが大きな転換点になる可能性がある。

AM 2.0は大量生産によりコストダウンを実現:デスクトップメタルのIR資料より

デスクトップメタル

2015年10月に創業したデスクトップメタルは金属3Dプリンターを製造するスタートアップ企業。連続炭素繊維プリンター「Fiber」や金属3Dプリンター「Studio System」「Production System」、金属バインダージェットプリンター「Shop System」など高品質の工業用3Dプリンターを数多く手がけるリーディングカンパニーだ。10億ドル以上の価値がある株式非公開のスタートアップ企業を指す「ユニコーン」企業のひとつに数えられる。2020年12月8日、ニューヨーク証券取引所へ上場し、積極的にM&Aを進めている。

デスクトップメタルの3Dプリンター戦略は今後ますます注目だ。

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電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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