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FORDがオープンソース3DCADファイルを公開、その背景とは

自動車製造会社のFORDは、自社のマーベリックピックアップトラック用に独自アクセサリの3DCADファイルを、オープンソースの形で正式にリリース。 その背景と実際に公開された3DCADについてご紹介する。

FORDが3DCADのオープンソースを提供した背景

自動車業界でありそうでなかった自動車アクセサリ用の3DCADのオープンソースの公開は、多様化する顧客ニーズに応えるための企業の取り組みの一環であることが推察される

自動車は、大きなアフターマーケットが存在する世界だ。燃料やタイヤ、保険など多岐に渡り、内装品や外装品は種類も多く、カー用品店やディスカウントストアにもさまざまなアイデア商品が陳列されているのを見ることは多いだろう。一方で、純正品やディーラーオプションの付属品も一定数存在する。自動車の愛好家はこれらを活用し、自身の使用目的に合わせてカスタマイズすることで、より快適さを求めながらオリジナルな1台に仕上げることで、その出来栄えが愛車度につながっていくようだ。

利用者の数だけ種類が必要になるため、その商品の種類は膨大な数になる。さまざまな工夫がされているものの、自身が所有する車種にジャストフィットするものを見つけるのはなかなか大変だ。

その原因の一つは、取り付け形状の問題であろう。オーディオ装置は専用の規格があるので、そのサイズで作られていれば綺麗に装着することが可能である。しかしながら、後部座席などは安全性も考慮されて余計なでっぱりがないのが普通である。そこで、今回FORDが提供したオープンソースのように、車両側から装着を前提とした機構が用意され、その構造データをもとにさまざまな提案がされることは自動車の所有者にとって「こうしたい!」を実現でき、気軽に愛車をカスタマイズできるメリットがある。

いよいよ、マイカーを自作する時代が始まると考えるのは時期尚早かも知れない。しかし3Dプリンター技術の発展とともに、大量生産=低コストとは限らない世界観ができつつある現在において、少々割高でも自身がイメージする車を持ちたいと考える人が一定数いると考えられる。そのような時代を想像した場合、3Dプリンターによる内装のカスタマイズイメージを自動車利用者に持ってもらうには3Dプリント用のCADデータをオープンソースとして提供する意義は大きく、比較的安価なプロモーション手段と捉えることができる。

住宅展示場などでいろいろなアイデアを得て、専門家とともに設計図を描いて注文住宅を作る流れに似ていて、ノンカスタマイズな車より割高になるが、顧客満足度は高くなり高付加価値な車両の提供、すなわち利益率の高いビジネスが実現する可能性がある。コストダウンが限界になりつつあり、今後は自動走行が実現すると総生産車両数は減ると予測されるパラダイムシフトが起こるこのタイミングで、製造コストを抑えながら利益率の高いビジネスモデルへの転換を見据えているものと考えられる。

車の場合、オープンソースながら安全性が担保されるとすればその価値は非常に高いものとなり、有料化による新しいビジネスチャンスが期待できるかも知れない。

公開されたデータとは

今回公開されたパーツは、公開されたのは携帯電話用マウント、ゲームコンソール用マウント、ダッシュボードカビー、カップホルダーなど、あったら便利なアクセサリーパーツだ。一般的なFDM方式の3Dプリンターで出力できるほか、3Dプリンティングサービスビューローで出力できるとしている。

3Dプリンターで制作されたアクセサリーの例(提供:Ford社)
3Dプリンターで制作されたアクセサリーの例(提供:Ford社)

FORD社は、Ford Integrated Tether System (FITS)と呼ばれるシステムが提供されており、これに従ってデザインすることで簡単に制作できる。

シート下の収納スペースにCADファイルのイメージ(提供:Ford社)
シート下の収納スペースにCADファイルのイメージ(提供:Ford社)

まとめ

オープンソースは、付加価値が付加価値を生む知的財産の普及に効果的な手法であることは、コンピュータソフトウエアの世界が実証済みである。無料という点に意識が行きがちであるが、ビジネスとして成立していることを考えると、一定のルールの中で普及する無料のパワーには破壊的なものがある。特にユーザ数の拡大と開発側の人材育成には大きく貢献する。

FORDのような有名な企業が3DCADを無料公開することで、3Dプリンターが多く認知されるとともに、3Dプリンターを使用するユーザーが拡大したりと、今後さらに波及していくことに期待されている。今後はそのダウンロード数や実際出力したユーザー事例などの続報に期待したい。

また、ブロックチェーン技術の登場により、有料データの普及にも可能性が出てきている。今話題のNFT(Non-Fungible Token)技術によって著名なデザイナーによるパーツや芸術価値のあるパーツが登場する可能性も期待したい。

関連情報

ShareLab編集部

電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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