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【国内初】卵の殻で出来た大型3Dプリント家具製造に成功

“可能性をデザインする” 株式会社NOD(以下、NOD) は、株式会社ネクアス(以下、ネクアス)、株式会社Boolean(以下、Boolean)とともに、有機廃棄物である”卵の殻”を素材として用いた国内では初の大型3Dプリンター家具を製作した。

 以前、ShareLab NEWSでご紹介したバイオマス素材×3Dプリンターで循環型都市を実現するプロジェクト『RECAPTURE』の第二弾である。

今回は第一弾同様、NODの溝端氏にインタビューを実施し、第二弾で特に注目してほしいポイントなどを伺った。

バイオマス素材×3Dプリンターで循環型都市を実現するプロジェクト『RECAPTURE』 とは

第一弾を知らない人のために、簡単にこのプロジェクト「RECAPTURE」について解説する。

「RECAPTURE」は、酢酸セルロースをはじめとした⽣分解性バイオマス素材や有機廃棄物などを3Dプリンターによって加⼯・再利⽤し、 循環型の都市づくりを⽬指すプロジェクトである。 

第一弾として発表されたのは、酢酸セルロースをベースとした「NEQAS OCEAN」を素材を使用し、3Dプリンターで作られた大型家具の椅子だ。ベースとなる酢酸セルロースとは、木材繊維や綿花等、自然由来の資源を用いた素材である。⾼い⽣分解性を持ち、使い終わった後は⼟に埋めたり、海中に沈めることで、⽔と⼆酸化炭素に分解されるという特徴を持っている。

詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。

有機廃棄物を使った半永久的なプロダクトづくりプロセスの特徴

今回お伝えする第二弾の3Dプリンター家具と第一弾が異なる点は使用されている「素材」だ。その素材を使ったプロセスの特徴を解説する。

有機廃棄物の素材への加工、プロダクトの生成、分解による素材化のサイクルの実現を目標とし、 卵の殻を素材化する段階では、ネクアスの特許技術「SANTEC-BIO」を用いて、樹脂にバイオマス資源を均一に分散させることで、高い物性の維持を実現している。

特許技術「SANTEC-BIO」とは

SANTEC-BIO技術はバイオマス原料をポリマーに高充填することが可能な技術だ。この技術は、プラスチック材料に水分が残留すると発泡など悪影響を及ぼすためタブーとされてきた液媒を、ネクアスではあえて注入した。

高圧水蒸気を発生させバイオマス資源のミクロフィラー化を実現し、樹脂にバイオマス資源を均一に分散させると共に、高い物性の維持を可能とした。

ミクロフィラーとは
自然界にあるプラスチックだけでは、工業界からの要求に応えることが難しいため、通常のプラスチック材料に特定の材料を混ぜ込むことで性能を高めることがおこなわれている。このプラスチック材料に混ぜ込む材料の一つに「充填剤(フィラー)」がある。充填剤にはサイズが3種類あり、ミクロフィラー(10μm~100nm前後)は粉体として制御が容易で、分散させやすい特徴を持っている。

特許技術「SANTEC-BIO」 の解説図。バイオマス資源と水、プラスチックに対し、高温と高圧をかけることで樹脂ペレットを作ることを説明している。
特許技術「SANTEC-BIO」 の解説図(出典:ネクアス)

製造の段階では、Booleanが培ってきた大型3Dプリンターの経験とエンジニアリング力によって、一 般的に3ヶ月から半年かかる新規素材でのプロダクト製造を1ヶ月のスピードで実施した。

有機廃棄物の再利用を促進し、持続可能な社会を目指す

食品などの製造工程から排出される有機廃棄物の再資源化は、持続可能な社会づくりのために欠かせない領域である。世界をみてみると、3Dプリンティング技術を用いた有機廃棄物の再利用は着実に進んでいる。

例えば、The New Rawの研究プロジェクトPrint Your City!では、オランダの首都アムステルダムに、家庭から出るプラスチックゴミをリサイクルし、3Dプリンターで印刷して作るベンチを設置し、都市におけるモノの循環システムの構築を目的に活動を進めている。

しかし、現状日本ではこのような事例がほとんどないのが実情である。 

そこで同社は、「都市の課題を、素材から捉えなおし、10年後の”当たり前”を作る」というコンセプト で、3Dプリンティングと再利用可能素材による循環型社会の実現を目指すプロジェクト「RECAPTURE」を推進。

第一弾では、生分解性素材である酢酸セルロースを利用した家具 を製作し、第二弾となる有機廃棄物の家具は、卵の殻を素材として利用。

今回製造された家具は、「KDDI research atelier(以下、KDDIリサーチアトリエ)」において試用される予定。KDDIリサーチアトリエは、2030年を見据えた“未来のライフスタイル”を提案する研究拠点である。

KDDI research atelier (出典: KDDIプレスリリースより )

本プロセスを活用した新しいプロダクトづくりの可能性

  • ▶オフィスから出る廃棄物を利用し、オフィスで使用する大型家具を作り続けるエコシステム
  • の実現
  • ▶飲食店や食品メーカーと協業し、製造過程で排出される廃棄物を使った大型家具や飲食空間
    などの製造
  • ▶商業施設や公共施設から出る廃棄物を利用した、橋などのインフラ設備や家やホテルなど建

廃棄物を素材として捉えなおすことで、分解と構築のサイクルを様々なプロダクトに実装し、生活者の都市への関与に新しい視点を投げかけていくとのこと。そして、有機廃棄物の資源化、3Dプリンターによるプロダクト化のプロセスを用いることで、次のような「有機廃棄物の再資源化」による未来を実現できると考えている。

有機廃棄物の再資源化で作る未来像(出典:NOD)

プロジェクトの仕掛人、NODの横溝さんに聞いてみた!

今回は第一弾のインタビューと同様、プロジェクトの仕掛人である横溝さんにお話を伺った。

第一弾からわずか数日の発表の理由は、実は今回の第二弾のプロジェクトは第一弾と同時並行で進捗していたとのこと。二つの異なる素材の製造には、素材特性を把握しながらの調整もあり試行錯誤されたようだが、それでもプロジェクト期間わずか3か月で発表に至ったその実行力には驚きだ。

今回、一番のポイントである有機廃棄物の素材に卵の殻やコーヒーカスを利用しているが、これには理由がある。

その理由は、プロジェクト『RECAPTURE』の目的である『バイオマス素材×3Dプリンターで循環型都市を実現する』ことにある。このプロジェクトを通して、多くの人が何気なく捨てているゴミを、美しい家具によみがえらせることで 「循環型都市」を多くの人に意識してもらいたいという想いがあったためだ。 そのため、有機廃棄物の中でも多くの人が日常で触れ、何気なく捨てている「ゴミ」である必要があった。そこで、卵の殻やコーヒーカスといった、都市にありふれているゴミを選んだ。

本来ただ廃棄されるものがこんなに綺麗な家具に生まれ変わるというのは、なんだかとてもわくわくする。

また、素材によって少し質感が異なるのも味があって良い。卵の殻は重く硬く、質感はマットだ。コーヒーカスは卵より軽さがあり、色は半透明のブラウンで光が反射され綺麗だ。もともとの素材感も生かされつつ生まれ変わっているので家具に愛着がわく。

今後3Dプリンター製の家具に使われたペレットを量産していくことも検討しているとのこと。製造スピードが速い業務用3Dプリンター「茶室」との組み合わせで量産体制を組むことができれば、近いうちに私たちの家にバイオマス素材で作られた3Dプリンター製家具があることが当たり前になる日もそう遅くないかもしれない。

すでに新たなプロジェクトが進行中とのことで、また新たな業務用3Dプリンターの可能性を広げてくれる先進事例に期待したい。

プロジェクトチーム

  • 企画 / プロデュース : 株式会社NOD (溝端友輔 / 稲生雅裕 / 遠藤理音)
  • 3Dプリント / 製造プロセス構築 : 株式会社Boolean(濵﨑トキ / 重田千明)
  • 素材開発 : 株式会社ネクアス(山崎 周一)
  • 設計:株式会社浜田晶則建築設計事務所(浜田晶則 / 飯野ソフィア / ホウ ヤニン)
  • 機材提供 / 技術サポート:エス.ラボ株式会社(柚山精一 / 脇本智正)

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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