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3Dプリンターでつくる自動車は安さだけではない。注目される安全性と環境負荷軽減

自動車産業は第二次産業の代表格であるが、急速に知識産業化が進んでいる。自動車の利用も含めての知識産業化であるが、今回は車両製造の知識産業化に焦点を当ててみる。

一般消費者が手に入れる事ができる工業製品の中で、自動車は極めて部品点数が多く高価である。その常識も今や過去形であり、部品点数の大幅な削減と低価格化が現在進行形だ。その中で3Dプリンターの果たす役割は大きい。

今回は自動車業界で進む3Dプリンターの活用背景を各国の事例をもとに解説する。

なぜ自動車業界で3Dプリンターの活用が推進されているのか

自動車は、製造業そのものを牽引し、自動車の普及ににより社会の経済活動を支えて人類に多大な貢献を果たしてきた。いよいよ、自動運転技術によって完全な自動走行車が実現される。まさに「自動車」になる。自動運転技術は知識産業である。つまり知識産業へのパラダイムシフトであり、車両そのものはいままで以上に安さと安全性を追うことになる。

この安さと安全性の切り札が3Dプリンターなのだ。

自動車工場は、組み立て工場とも言われ多くの部品をジャストインタイムで搬入し、流れ作業で組み立て、検査されて出荷する最終工程を担っている。組み立ては、ビスやボルト、そして溶接によって行われる。この工程は多くが自動化が進んでいる。最新の工場を見るとロボットが精密に機敏に動いて、働いている人の数は劇的に減っている。まさに無人化が進んでいるのだ。製造業の究極は自動化による無人化である。組み立て工場はロボットによる無人化が相当に進んでおり、そして部品工場のロボット化による無人化も進んでいる。

例えば、日産自動車はスペイン工場で3Dプリンターを導入し製造コストを95%削減、製造時間も1週間から1日に短縮することに成功した。

自動車の組立工場で3Dプリンターが活用されている写真
組立工場に3Dプリンターがあることが当たり前の時代に(出典:日立製作所)

3Dプリンターは24時間稼働し、100種類以上のジグやツールなどを製造している。外部のサプライヤーにアウトソースすると製造コストは20倍以上、時間もかかる。しかし、3Dプリンターを使うことでより高い付加価値を創造でき、時間も削減できます。3Dプリンターに投資した分は、すでに回収していると同社はコメントしている。

≫ 日立自動車の詳細記事はコチラ

このように、コストと時間の削減が期待できる。また、3Dプリンターを活用することで従来の金型製造から解放され、一方で、安全性を担保するには設計品質と製造品質が必要であり、製造品質は部品そのものの品質と組み立て作業品質によるので、部品点数が少なくなり自動化によって格段に高まることになる。このように、安さと安全性が確保されていく

環境に優しい車を3Dプリンターでつくる時代

3Dプリンターで製造コスト・時間の削減についてご紹介したが、自動車業界で3Dプリンターが普及する理由はもうひとつある。 それは各国で進む脱炭素の流れだ。英国では30年、米カルフォルニア州では35年にガソリン車の新車販売を禁じる方針だ。そして、日本でも35年に新車販売を電動車にする目標を政府が打ち出している。

そのような脱炭素の流れにおいて、各メーカーは車の電動化に伴い、重くなる車両を軽くする必要に迫られている。

先ほど紹介した日産自動車では、すでに3Dプリンターを活用した試作段階で6割の部品軽量化を実現しており、製造コスト削減にも大きな成果が出ている。今後カーボンニュートラルを実現するために各国での3Dプリンターの活用はさらに促進されていくことが予想される。

例えば、中国ではEV車を3Dプリンターで製造するメーカー企業が登場している。すでに量産も意識した本格生産がはじまっており、LSEV(低速電気自動車)と呼ばれるその車の販売価格は驚きの100万円とのこと。

≫ 「イタリア・デザイン×中国・3Dプリンティング」EVカー量産化

また、PBF式金属3DプリンターのパイオニアであるExOneは、電気モーター用の銅製電子巻線設計の開発を発表した。電気モーターはEV車の主要部品であるため、採用されれば軽量化、コスト低減も実現できるため注目を集めて居る。

≫ PBF式金属3Dプリンターが電気自動車などに使用する電気モーター部品を開発-ExOne

EV製造で注目される3Dプリンター

EV車は自動車の構造を大幅に変えることが特徴だ。構造が変わるということは製造設備が変わるということで、大きな投資が必要になる。このタイミングで3DプリンターによるAM(アダプティブマニュファクチャリング)に変革できるかどうかがポイントになっている。企業にとって長く使用する製造設備への二重投資は絶対に避けたい要因である。

自動車業界にとって、3Dプリンターが自動車製造が期待する品質と性能を確保できているのかを慎重に見極めている時期はそろそろ終わりに近づきつつあり、一部に積極的な投資の動きが出てきたことに注目したい。

関連情報

ShareLab編集部

電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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