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オーストラリア海軍 フリゲート艦の船舶部品を3Dプリンターで製造

オーストラリアの金属3Dプリンターメーカーである Aurora Labs (以下、オーロラ ラボ)は、イギリスの国防・情報セキュリティ・航空宇宙関連企業 BAE Systems(以下、BAEシステムズ)のオーストラリア支社である BAE Systems Maritime Australia とパートナーシップを結び、同社の金属3Dプリンター技術を用いてステンレス製の海洋部品の試作を行うことを発表した。(写真はHMAS Hobart/出典:オーストラリア海軍)

今回はパートナーシップ締結の背景と、金属3Dプリンター技術を活用した船舶部品の製造事例、また海軍と各社3Dプリンターの事例と併せて紹介する。

パートナーシップ締結の背景

オーロラ ラボが BAEシステムズ と提携したことは、同社の金属3Dプリンター技術を商業化するための重要なステップだ。

オーロラ ラボは、BAEシステムズ のハンタークラスフリゲートプログラム(HCFP)に、粉末床溶融結合(PBF)技術を提供する可能性があるところに目をつけた。同社は、オーストラリア海軍のフリゲート艦の部品を3Dプリンティングし、その商業的可能性をテストする予定だ。

ハンタークラスフリゲートプログラム(HCFP)のためにテスト・プリンティングを行う機会を得たことを大変嬉しく思います。このような技術的な検証は、我々の商業化戦略にとって非常に重要であり、顧客を満足させるために我々の技術を開発・提供することができます。

オーロラ ラボ CEO ピーター・スノーシル氏

オーロラ ラボの3Dプリンター活用実績

オーロラ ラボは2018年初頭、1.5×1.5×2.5mのサイズまでの部品を、既存システムの100倍の速度で製造できる大型金属3Dプリンターを導入する計画を発表。その直後、同社は800万オーストラリアドルを調達してLarge Format Technology(LFT)の開発を計画し、同年末には複雑な部品を高速で3Dプリントするための LFT のテストに初めて成功した。

2019年、オーロラ ラボは500万オーストラリアドルの資金を調達して、同社の LFT Rapid Manufacturing Technology(RMT)の開発を進め、当初は市場標準の55倍の速度で部品を製造することが実証されたと発表している。この技術は、2019年5月にライブベータテストを開始した同社の3Dプリンター「RMP1」に搭載され、金属の3Dプリント速度が2000%向上した。

RMP1(出典:オーロラ ラボ)

金属3Dプリンターによる船舶部品の試作品

オーロラ ラボは、HCFPプロジェクトにおいて、3Dプリント技術の技術的および商業的な実現性を証明することを目的とし、オーストラリア海軍のフリゲート艦9隻の建造に必要なステンレス製の3Dプリント部品を製造。フリゲート艦は、世界中で行われる海軍の対潜水艦戦および防空活動をサポートすることを目的としている。

ステンレス製の3Dプリント部品(出典:オーロラ ラボ)

同社と提携したBAEシステムズは、オーストラリア海軍の HCFP において、9隻のフリゲート艦(軍艦の一種)の設計・建造を担当している。

BAEシステムズとの連携は約20年前から。ともに3Dプリンター技術の開発に取り組んでおり、3Dプリンターメーカーの Renishaw (レニショー)や Stratasys(ストラタシス)と提携し、3Dプリンター技術のメリットを防衛用途に活用。現在、BAE Systems Maritime Australia の Research and Technology グループは、大規模な金属3Dプリンターの活用を調査し、オーロラ ラボを HCFP の PBF 技術のサプライヤーとして選定されている。

両社は、HCFPの取り組みの一環として、試作品を3Dプリンターで出力。今回のプログラムの実際の建設段階は2022年末までに開始される予定で、PBF 3Dプリントを使ってどのように最適化できるか調査を実施し検討していく。このプログラムは連邦政府が1830億ドルを投じて進める海軍造船計画の礎となるもので、オーストラリアで70隻以上の海軍艦艇を建造する予定とのこと。

各社の海軍3Dプリンター活用実績

3Dプリントは、世界中の軍隊において遠隔地からオンデマンドで部品を供給したり、メンテナンスしたりするための貴重な手段である。オーストラリアの防衛分野も同様で、海軍は以前部品のサプライチェーンを改善するために、エンジニアにCADと3Dプリントのトレーニングを行うワークショップを毎週開催していた。

また、海軍は巡視船のメンテナンスを効率化するプロジェクトに、Advanced Manufacturing Alliance(AMA)や Charles Darwin University とともに、オーストラリアの金属3DプリンタメーカーであるSPEE3D を採用した実績がある。SPEE3D の金属製コールドスプレー3Dプリント技術は、通常のサプライチェーンから供給される部品と比較して、海軍への部品供給量を大幅に増やすことができるか試された。

2020年9月、アデレードを拠点とする新興企業 AML3D は、世界的な造船会社である Austal と提携し、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)により、海軍の商用および防衛用艦艇に搭載されている現行のリフティングデバイスを更新するに至った。両社は、より軽量で、人間工学的にも使いやすく、耐荷重性が強化されたリフティングデバイスの3Dプリントを目指すことを宣言している。

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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