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DMG森精機、5軸複合加工機ベースのレーザー金属3Dプリンターを開発

DMG 森精機株式会社(以下、DMG森精機)は、旋削とミーリングを一台で行う複合加工機にレーザ金属積層造形技術であるアディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing/以下、AM)を融合し、切削加工と金属積層造形をワンチャッキングで実現するレーザ金属積層造形機 LASERTEC 3000 DED hybrid を開発したことを発表した。

開発背景

3Dプリンター市場は、従来の切削加工では困難な形状を造形することができるため、近年飛躍的に成長を
続けていることは読者の皆様はすでにご存じのことと思う。ShareLab NEWS編集部でも、半導体エレクトロニクス、医療、航空宇宙など、さまざまな分野の製造現場で導入事例をご紹介してきた。今後、注目されている金属積層3Dプリンターだけでなく、金属粉末材料や造形品の市場もそれぞれ拡大していくと考えれらる。

また生産形態の多様化に伴い、多品種少量生産を行う企業が増加しており、金属積層造形、コーティング、欠損
箇所の補修などの付加加工と、切削除去加工の工程集約の需要が高まっている。

しかし、AM技術を採用した金属3Dプリンターは市場としての期待感はあるものの高価であることから、航空機関連や宇宙関連など、高付加価値製品への適用に限定されてきた経緯がある。そこで、DMG森精機ではいよいよ一般産業用としても通常の生産用途で使用されるフェーズに入ってきたと強調する。

以下、DMG森精機 AM開発部 部長の廣野陽子氏のコメントを記載する。

AMの用途が高付加価値品だけの時代は終わりを告げようとしている。それには使い方の変化がある。従来はAM技術で複雑な造形品を最初から造形するような使い方が想定されていたが、現在は“チョイ盛り”や金属の組み合わせによる機能付加のように積層造形技術の利点をうまく生かす使い方が浸透してきた。そのため工程集約など採算の合う用途が広がってきている。

具体的には「生産・製造」用途の他、傷ついた金属部品を補修する修理・修復、主材以外の金属素材で機能を付加する「コーティング」、複数の金属を組み合わせて特性を作り込む「バイメタル」などの用途が想定さる。

これにより、用途も大きく拡大することが想定される。

航空宇宙業界での新規パーツ開発の他、石油ガス産業やプラントエンジニアリングなどの領域でも補修やメンテナンスでの需要拡大。さらに、自動車業界でもEV(電気自動車)化などで製造工程が大きく変わる中、工程集約を進める動きが広がっている。その中で、従来は10台以上の工作機械を使って行っていた作業が、AM搭載複合加工機では一台で行えるような可能性もある。そういう面で検討が幅広い業界で進んでいる。

DMG森精機 AM開発部 部長の廣野陽子氏

これらの新たな用途開拓の推進をターゲットとした製品として開発されたのが「LASERTEC 3000 DED hybrid 」だ。

今回開発された3Dプリンターは複合加工技術と金属積層技術を 1 台に融合し、切削加工と金属積層造形を 1 台で行う DED(Directed Energy Deposition/指向性エネルギー堆積法)方式のレーザー金属積層造形機だ。この3Dプリンターで、多品種少量生産を行う企業が増加しているなか金属積層造形だけでなく切削も含めた工程集約を実現する。

DMG森精機 AM開発部 部長の廣野陽子氏は、「新製品は幅広い用途でR&Dではなく製造現場で使用してもらうことを想定している。そのため実際の現場で必要なサポート機能を充実させた」と新製品の開発の狙いをコメントしている。

5軸複合加工機ベースのレーザー金属3Dプリンターの特徴

開発された「LASERTEC 3000 DED hybrid 」の特徴は以下の通りだ。

  • 旋回式のAMヘッドを搭載 最大積層ワークサイズφ670mm×932mmの端面積層を実現
  • 金属部品の修復が可能 破損個所の切削・積層・仕上げ加工をワンチャッキングで実現
  • 耐腐食、耐摩耗のコーティングにも使用可能 機外工程の集約を実現
  • AM Assistantにより、安定した品質の積層造形を実現

DED方式は、ノズルから金属材料粉末の噴射と レーザーの照射を同時に行い、レーザーで金属材料粉末を溶融、凝固させて積層する方式である。造形時間が早いため大型ワークの積層に適しており、φ400 mm×1,321 mm2 までの積層に対応しているが、AMヘッドを旋回させることで、さらに最大積層ワークサイズφ670mm×932mmの端面積層も可能とする。

旋削/ミーリング主軸に金属材料粉末とレーザーを同時に照射する AM ヘッドを搭載することで、B 軸を加えた 5 軸の積層造形を実現。切削加工を行うときは AM ヘッドを収納して、切削加工も段取り替えなしのワンチャッキングでできるため工程集約を実現。また、積層状態をモニタリングする AM Assistant により、パウダの自動キャリブレーションやノズルの溶着検知など、積層品質を安定させてワークの不良を未然に防ぐことが可能。

パウダーノズルはコーティングに最適なコアキシャルノズルを搭載し、レーザー出力は3kWとしている。さらに、造形の精度に合わせて、スポット径3mmと1.6mmを切り替え可能だ。切りくずなどの影響を抑えるために、AMヘッドを使用しないときはAMヘッドストッカーに収納することも可能としている。

また、パウダー供給装置から異なる金属材料粉末を切り替えて供給することができるため、1 つの素材の上に異なる材料の積層造形が可能で、複数の素材を融合させて 1 つの製品を造ることができる。また、パウダー供給装置は異なる金属材料粉末を混ぜ合わせて供給することもできるため、複合材の造形にも適しており、さまざまなワークの造形、補修、コーティングなど行うことができる。

これらに加えて、製造現場での使用を促すための多彩なサポート機能を充実させている。

  • 溶融点の温度を測定する「Adaptive Process Control
  • パウダーノズルと溶融点までの距離を監視する「ワーキングディスタンスモニタリング」
  • パウダーの供給量をセンサーで制御する「自動パウダキャリブレーション
  • 粉末材の流量を自動調節する「光学式パウダー流量センサー
  • 完成したワークの品質を分析する「AM Evaluator

製品機能紹介動画

こちらはDMG森精機が公開している製品紹介動画だ。充実した機能を実際の動画でわかりやすく紹介しているので、気になる方はぜひご覧いただきたい。

製品価格

製品価格は1億3800万円(税別)。
現場活用を想定したサポート機能を含めた充実した機能で市場開拓を進め、年間10台の販売を目標に掲げている。さらに、2030年にはDED方式のAM搭載機の売上高を4~5倍となる50億円としていくとさらなる発展を宣言している。

DMG森精機の3Dプリンター活用

DMG森精機では、2013年にAM採用のハイブリッド機の投入を行ってから、金属積層造形技術を採用した複合型の工作機械製品を投入してきた。AMの方式としては最初にDED方式の製品を投入していたが、SLM(Selective Laser Melting/パウダーベッド)方式の製品ラインアップなども追加。多彩な製品群を用意している。

今後、新たな用途開拓の推進をターゲットとした新製品「 LASERTEC 3000 DED hybrid 」の販売を始め、一般産業用としても通常の生産用途で使用されるAM市場のさらなる発展を後押しするだろう。

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シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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