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三菱電機、真空中で衛星用アンテナを3Dプリントする技術を開発

三菱電機は、特殊な紫外線硬化樹脂を用いて真空中で衛星用アンテナを3Dプリントする技術を開発した。衛星用アンテナの大型化や、アンテナ設置コストの低減に寄与する見込み。

民間企業による小型衛星と民間宇宙開発

近年、民間事業者による宇宙開発の気運が高まっている。これは、5Gなどの通信システムを衛星によってサポートし、利用範囲や利便性を拡張しようとする試みの一環だ。

通信衛星を設置するときには、アンテナの大きさが問題となる。十分な強度の電波を地上に送るために、アンテナはある程度の大きさが必要になるが、打ち上げロケットの積載容量によって、アンテナのサイズが制限される。大きなアンテナを設置しようとすれば、折りたたみ式のアンテナが必要だ。

加えて、ロケットで打ち上げを行う際には、瞬間的に大きな力が掛かるため、破損に耐えるだけの強度も必要となる。

今後求められる通信システムの構築のために、相当数の衛星が必要となり、打ち上げ1回毎のコストは可能な限り抑えたい。このためには、通信衛星の設置方法に関して、抜本的な改革が必要だ。

真空3Dプリント技術とは

上記の課題に対する三菱電機の回答は、「真空中でアンテナを3Dプリントする」というものだ。

真空中での3Dプリントができれば、ロケット積載容量の制限を取り払うことができる。強度を保つためにアンテナに厚みを持たせる必要もない。

小型衛星でも大型のアンテナを取り付けることが可能となり、打ち上げコストの削減に繋がる。

三菱電機の提示した完成予定図では、衛星の大きさは30cm×10cm×10cm程度。一度の打ち上げで複数の通信衛星を設置することも可能になるかもしれない。

三菱電機が構想する、通信衛星の真空中でのアンテナをプリントする、完成予想図
完成予想図(出典:三菱電機)

太陽光で硬化する樹脂

本技術は、回転する中心軸に対し、紫外線硬化樹脂ペーストを連続的に塗布していく。アンテナの内側から徐々にアンテナを形成するため、アンテナを固定する支持材が必要ない。

アンテナ製造実験の様子は以下の動画でも紹介されている。是非ご覧頂きたい。

宇宙空間での3Dプリントに最適化されており、太陽光の紫外成分によって硬化する特殊な樹脂を利用する。大気によって減衰されない紫外光を用い、専用の光源を不要とするクレバーな選択だ。

また、通常の紫外線硬化樹脂は極低圧下で成分が蒸発して、急速に硬化してしまい、3Dプリントに利用できない。この問題を解決するために、硬化を抑制する安定剤を配合した。

こうした様々な工夫の結果、三菱電機は、地上で真空下におけるアンテナ製造実験を行い、当技術によって問題なく3Dプリントできることを実証した。

宇宙開発における3Dプリント技術の活用

宇宙開発は3Dプリント技術の利用が活発な分野でもある。衛星やロケットの部品には、高い強度と複雑な形状の両立が求められ、オーダーメイドの少量生産となるために、3Dプリントとの相性が良い。

アメリカ最大の航空宇宙事業者Boeingや、オーストラリアの衛星開発会社FLEET SPACEなど、様々な企業が、3Dプリンターを用いて、衛星部品の開発を行っている。

Boeing、3Dプリンターを使って宇宙衛星用部品製造に乗り出す

完全3Dプリントされた小型衛星「Alpha」を1年以内に打ち上げる計画を発表

こちらは地上で部品製造を行っているが、三菱電機と同様、3Dプリンターを活用した事業だ。航空宇宙産業において、3Dプリンターの活用は、今後益々広がっていくと考えられる。

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