フクビ化学工業株式会社は、廃プラスチックや食品残渣などの未利用資源を3Dプリンティングで製品化する「FUKUVI 3D Printing Hub」を創設する。長年培ってきた樹脂材料開発や成形加工の技術と3Dプリンティングを組み合わせ、材料開発から設計、造形、評価までを一貫して手掛ける体制を構築する。家具や建材、モニュメントなどのオーダーメイド製品を対象に、企業や自治体が抱える廃棄物のアップサイクルを支援していく。
目次
異形押出成形に3Dプリンティングを加え、小ロット・複雑形状にも対応
フクビ化学工業は、第7次中期経営計画で「循環型ビジネス拡大」を重点戦略の一つに位置付け、「Revalue(再価値化)」を推進している。
同社がこれまで得意としてきた異形押出成形は、高品質な製品の大量生産に適する一方、小ロットや特注デザイン、複雑な三次元形状、リサイクル材料を柔軟に活用した製品づくりには制約があった。
そこで新たな加工手段として導入するのが3Dプリンティングである。金型を必要とせず、デジタルデータからさまざまな形状を直接製造できる特徴を生かし、従来工法では対応しにくかった用途をカバーする。
「FUKUVI 3D Printing Hub」では、従来の異形押出成形と3Dプリンティングを用途や要求仕様に応じて使い分けることで、量産品から小ロット、オーダーメイド品まで幅広い製造ニーズへの対応を目指す。
廃プラスチックや木粉、コーヒーかすを3Dプリンティング材料へ
同拠点の特徴の一つが、未利用資源を3Dプリンティング用材料として活用する取り組みである。
廃プラスチックのほか、木粉やコーヒーかすなどを原料として利用し、家具や建材などの製品へアップサイクルする。単に廃棄物を再利用するだけではなく、企業や自治体から発生する廃棄物を新たな製品へ転換するソリューションとして展開する考えだ。
その基盤となるのが、フクビ化学工業が蓄積してきた樹脂配合技術である。バイオマス材やリサイクル材の特性に合わせ、3Dプリンティングに適した独自のペレットやフィラメントを開発・製造できる。
さらに材料開発だけでなく、製品設計、プログラミング、3D造形、完成品の評価までを一貫して実施する体制を整える。
木粉入りフィラメントやコーヒー残渣入りペレットを開発
すでに複数の材料開発と造形が進められている。
その一つが、木質素材と樹脂を組み合わせた「木粉入りフィラメント」である。木材を思わせる自然な質感と3Dプリンティングによる造形自由度を両立した材料で、インテリア製品や生活雑貨などへの展開を想定する。フクビ化学工業の樹脂配合技術を生かした独自材料として開発された。
食品残渣を利用した「コーヒーグラウンズ入り樹脂ペレット」も開発している。コーヒー抽出後に残る搾りかすを樹脂に配合したもので、従来廃棄されていた食品残渣を製造原料として再利用する。
独自の配合技術によって安定した成形性を確保しており、大型3Dプリンターによる製品製造にも対応可能だという。


大型3Dプリンターでベンチやプランターも製作
大型3Dプリンティングを利用した製品開発にも取り組んでいる。
木質バイオマス素材を含む材料から、ベンチやプランターを大型3Dプリンターで製作した。製作例には500×400×H600mmの単色および3色のベンチ、φ610×H420mmの単色プランターがある。
大型3Dプリンティングを活用することで、大量生産を前提とした従来工法では対応しにくかった自由なデザインや小ロット生産が可能になる。公共空間や商業施設などでの利用を想定しており、今後は地域資源や顧客から排出される廃材を使った製品への展開も進める。



企業や自治体の廃棄物を「地域資源」として活用へ
今後、フクビ化学工業は「FUKUVI 3D Printing Hub」を企業、自治体、教育機関などとの共創拠点として発展させる。
廃棄物を処分する対象としてだけではなく、「地域資源」や「新たな原材料」として捉え、材料開発から製品設計、3D造形、評価までを一つの流れとして提供する方針だ。
具体的には、廃プラスチックのアップサイクル、食品残渣の再利用、林業由来の木質バイオマスなどを活用したプロダクト開発を進めるほか、大型3Dプリンティングによる屋外家具や景観分野向け製品への展開も計画している。
企業や自治体ごとに異なる廃棄物に対して、原材料の開発から最終製品への加工までを提案することで、それぞれの地域や企業に適した資源循環モデルの構築を目指す。
シェアラボ編集部コメント
今回の取り組みで注目したいのは、大型3Dプリンターを導入したことだけではなく、フクビ化学工業が持つ樹脂配合・成形加工の技術と3Dプリンティングを組み合わせている点である。
廃プラスチックや食品残渣、木質バイオマスなどを3Dプリンティングで活用する場合、造形装置だけでなく、材料の配合や成形安定性を含めた材料側のノウハウが重要になる。同社が材料開発から造形、評価までを一貫して扱える体制を構築することで、企業や自治体が排出する廃棄物を、その特性に合わせて製品へ転換できる可能性が広がる。
また、大量生産を得意とする異形押出成形と、小ロット・複雑形状に対応しやすい3Dプリンティングを使い分けるという考え方も興味深い。既存の成形技術を置き換えるのではなく、3Dプリンティングを補完的な製造手段として組み込む取り組みは、国内の樹脂加工メーカーにとっても参考になりそうだ。
用語解説
| 異形押出成形とは 樹脂などの材料を加熱して溶融し、特定の断面形状を持つ金型(ダイ)から連続的に押し出して製品を成形する加工方法。住宅用建材や樹脂製レール、モールなど、一定の断面形状を持つ長尺製品の大量生産に適している。 |
| アップサイクルとは 廃棄物や不要となった材料を単純に再利用するだけでなく、加工や設計によって新たな用途や付加価値を持つ製品へ転換する取り組み。3Dプリンティングでは、廃プラスチックや食品残渣、木質資源などを造形材料として活用する事例が広がっている。 |
| 大型3Dプリンティングとは 大型の造形装置を使用し、家具や建築部材、金型、構造物など比較的大きな製品を製造する3Dプリンティングの分野。ペレットを直接押し出す方式などが用いられ、小ロットの大型製品や複雑形状の製造に活用されている。 |
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