Apple、折りたたみiPhone「iPhone Duo」のヒンジに3Dプリントを採用

2026年10月2日
出典:Apple

Appleは、同社初となる折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」を発表した。同製品では、折りたたみ機構の中核となるヒンジカバーに、100%再生材のグレード5チタンを用いた3Dプリント部品を採用している。AppleはこれまでApple WatchやiPhone Airの一部部品でアディティブ・マニュファクチャリング(AM)を量産に取り入れてきたが、今回その適用範囲を、耐久性や寸法精度が求められる折りたたみ機構へと広げた。

100点以上の部品からなるヒンジ、カバーをチタン3Dプリントで製造

iPhone Duoのヒンジ機構は100点以上の部品から構成されており、そのヒンジカバーには100%再生材のグレード5チタンを使用した3Dプリント部品が採用されている。表面にはビーズブラスト処理が施され、筐体のほかの部分に採用された鏡面仕上げとは異なる質感に仕上げられている。

折りたたみスマートフォンのヒンジは、繰り返しの開閉動作に耐えながら、ディスプレイや筐体を高い精度で保持する必要がある重要部品である。Appleがこうした部位に3Dプリントを採用したことは、AM技術の適用範囲が外装部品などから、製品の機能を左右する機構部品へ広がっていることを示す事例といえる。

さらにAppleは、3Dプリント後の部品精度を高めるための工程も導入している。Appleのハードウェアテクノロジー担当シニアバイスプレジデントであるJohny Srouji氏によると、共焦点レーザーで各部品の表面形状をスキャンし、そのデータをもとに独自開発したフォトポリマーを最大25層の微細なレイヤーとしてプリントする。

これにより、部品表面に残るわずかなうねりを補正する。また、AIアルゴリズムを利用して、それぞれのヒンジに最も適合する筐体を選定して組み合わせるという。

HonorやOPPOも折りたたみスマートフォンにAMを活用

折りたたみスマートフォンへのAM技術の導入は、Appleが初めてではない。

Honorは2023年、折りたたみスマートフォン「Magic V2」のチタン製ヒンジにレーザー粉末床溶融結合法(LPBF)を採用した。元記事によれば、コンシューマーエレクトロニクスの量産製品にAM技術を採用した初の事例とされている。

OPPOも2026年、折りたたみスマートフォン「Find N6」に「Liquid 3D Printing」と呼ばれる技術を採用した。このプロセスではレーザースキャンと5ピコリットル単位のフォトポリマー液滴を組み合わせ、約20回にわたって処理を繰り返すことで、ディスプレイ下部に平坦な面を形成する。

一方、Appleの競合であるSamsungは、Galaxy Z Fold8についてAM技術の採用を発表しておらず、折りたたみ機構ではパネル下部にチタン合金製フィルムを採用している。

Appleは約10年間にわたりAM技術を検証

Appleにとって、3Dプリントによる量産は今回突然始まった取り組みではない。

同社は2025年11月、Apple Watch Ultra 3およびApple Watch Series 11のチタン製ケースを、LPBFによる3Dプリント製造へ移行したことを明らかにしている。また、その成果をもとにiPhone AirのUSB-Cポートにも3Dプリント部品を採用した。

Appleによれば、同社は約10年間にわたってAM技術の検証を続け、品質と量産規模の双方で自社の要求水準を満たせる段階に達するのを待っていたという。

iPhone Duoでは、その適用先が折りたたみスマートフォンの中でも耐久性や精度が重要となるヒンジへと広がった。スマートフォンのような大規模量産製品でAMがどこまで従来工法を補完・代替していくのか、今後の展開が注目される。

シェアラボ編集部コメント

AppleはこれまでApple WatchのチタンケースやiPhone AirのUSB-Cポートなど、量産製品への3Dプリント採用を段階的に拡大してきた。今回興味深いのは、単にチタン部品を3Dプリントするだけでなく、レーザースキャン、フォトポリマーによる微細な補正、AIを用いた部品マッチングまでを組み合わせている点である。

AMでは「造形できるか」だけでなく、造形後の検査や補正、組み立てまで含めた製造プロセス全体の設計が量産化の鍵となる。年間数千万台規模にもなり得るスマートフォン市場でこうした製造手法が定着すれば、AM業界にとっても大きな意味を持つだろう。

用語解説

LPBF(Laser Powder Bed Fusion/レーザー粉末床溶融結合法)
金属粉末を薄く敷き詰め、レーザーを照射して選択的に溶融・凝固させ、この工程を繰り返して立体物を造形する金属3Dプリント方式。チタンやアルミニウム、ステンレスなど幅広い金属材料に対応し、航空宇宙、医療、自動車などの分野で利用されている。
グレード5チタン(Ti-6Al-4V)
チタンにアルミニウムとバナジウムを加えた代表的なチタン合金。高い比強度と耐食性を持ち、航空宇宙部品や医療機器などに広く使用されている。金属3Dプリントでも代表的な材料の一つである。
共焦点レーザー
レーザー光を利用して対象物の表面形状や高さを非接触で測定する技術。微細な凹凸を高精度に測定できるため、製造現場における形状測定や品質検査などに利用されている。
フォトポリマー
特定の波長の光を照射することで硬化する樹脂材料。光造形方式(SLA)やDLP、MSLAなどの樹脂3Dプリントで広く利用されるほか、微細な表面形成やコーティングなどにも用いられる。

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