大型金属3Dプリンティングを手掛けるDEEP Manufacturingと、先進金属材料を開発するFortius Metalsは、複数の金属材料を1つの部品内で造形する「マルチマテリアル積層造形」の実用化に向けた共同プロジェクトを開始した。
両社は、DEEP Manufacturingの同期型マルチロボットワイヤーアーク積層造形(WAAM)システムを活用し、異なる金属材料を組み合わせたシリンダー形状の造形に取り組む。WAAMはDED(Directed Energy Deposition:指向性エネルギー堆積)方式の一種であり、大型金属部品を高い造形速度で製造できる技術として注目されている。
目次
複数の金属材料を1回の造形で製造
今回のプロジェクトでは、異なる特性を持つ先進合金を1つの部品内に連続的に積層し、量産環境で求められる精度や再現性、プロセス制御を実現できるかを検証する。
従来の金属部品では、耐熱性や耐食性が必要な部分と、高強度や軽量性が求められる部分を別々の部材で製作し、溶接や接合によって組み合わせるケースが多い。一方、マルチマテリアル積層造形が実用化されれば、必要な箇所だけに最適な材料を配置できるため、性能向上や部品点数削減につながる可能性がある。
また、大型部品や複雑形状部品の製造においても、新たな設計自由度を提供すると期待されている。
大型WAAMの課題解決を目指す
DEEP Manufacturingはこれまで、複数のロボットを同期制御する大型WAAMシステムの開発を進めてきた。
その過程で、造形サイズの大型化に伴う熱変形や、複雑なツールパス生成が主要な課題であることを確認している。また、マルチマテリアル積層造形についても、今後の発展に向けた重要なテーマとして位置付けてきた。
今回の共同開発では、Fortius Metalsが持つ材料開発やシミュレーション技術と、DEEP Manufacturingの大型造形技術を組み合わせることで、これらの課題解決を目指す。
米国新拠点開設後初の大型プロジェクト
今回の発表は、DEEP Manufacturingが米国テキサス州ヒューストンに新たな生産拠点を開設して以降、初期段階の主要プロジェクトの一つとなる。
同社は新施設に1,000万ドル(1ドル150円換算で約15億円)を投資しており、北米市場向けの大型WAAMサービス体制を強化している。高信頼性が求められるエネルギー、宇宙航空、防衛分野などへの展開を視野に入れているとみられる。
2026年夏に本格造形を実施
プロジェクトはまず試験片と小型シリンダーによる評価から開始される。その後、2026年6月中旬から7月上旬にかけて本格的なシリンダー造形を実施する予定である。
両社は今後、各開発段階の進捗や造形映像などを公開し、プロジェクト完了後には成果を発表するとしている。
大型金属積層造形の分野では、造形サイズの拡大に加えて、複数材料を活用した高機能部品の開発が次の成長テーマとして注目されている。今回の取り組みは、マルチマテリアルDED技術が量産領域へ近づくかを占う事例となりそうだ。
編集部コメント
金属3Dプリンティングでは「より大きく、より速く」が注目されがちだが、今後は「どの材料をどこに配置するか」が競争力の源泉になっていく可能性がある。
特にエネルギーや宇宙航空分野では、部位ごとに求められる性能が大きく異なるため、1つの部品内で複数材料を使い分けられる技術への期待は高い。一方で、異種金属の接合部における品質管理や熱変形制御など技術的なハードルも多く、量産レベルでの安定運用は容易ではない。
今回のプロジェクトは、大型WAAMとマルチマテリアル造形という2つの難題に同時に挑戦するものであり、今後の進展に注目したい。
用語解説
| ■ WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing) 溶接用ワイヤーとアーク熱源を利用して金属を積層する3Dプリント技術。大型部品を比較的高速かつ低コストで製造できる。 |
| ■ DED(Directed Energy Deposition) レーザーやアークなどの熱源で材料を溶融しながら積層する金属3Dプリント方式。補修や大型部品製造にも活用されている。 |
| ■ マルチマテリアル積層造形 1つの部品内で複数の材料を使い分けながら造形する技術。性能向上や部品統合、軽量化などが期待される。 |

