卒業生2人が起業構想を発表 日本3D教育協会が「海洋3Dアルムナイチャレンジプログラム」を始動

2026年7月27日
出典:日本3D教育協会
出典:日本3D教育協会

一般社団法人日本3D教育協会は2026年6月27日、東京ポートシティ竹芝で開催した「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」第5期研究発表会において、卒業生(アルムナイ)の挑戦を継続的に支援する新プログラム「海洋3Dアルムナイチャレンジプログラム」を発表した。

同プログラムは、これまで育成してきた卒業生が研究や起業など新たな挑戦を続けられるよう、資金や技術、企業・研究機関とのネットワークを活用して伴走支援を行う取り組みである。発表会では第1弾チャレンジャーとして高校生2人が起業構想を披露し、教育で培った3D技術を社会へ生かす具体的なビジョンを示した。

卒業後も支援を続ける新たな仕組みを発足

「海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト」は、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として2021年にスタートした中学生向け教育プログラムで、これまでに約50人の卒業生を輩出している。

今回発表された「海洋3Dアルムナイチャレンジプログラム」は、卒業後も3D技術や海洋研究を生かした活動を継続できるよう支援する制度だ。対象はプロジェクトの全卒業生で、以下の3つを柱として支援を行う。

  • 起業や事業化に向けた資金・経営支援
  • 3D技術、CT撮影、3Dスキャン環境、研究データ、専門家ネットワークの提供
  • 協賛企業や大学、研究機関との連携支援

一般社団法人日本3D教育協会代表理事で3D主任講師の吉本大輝氏は、「卒業後も相談を受ける機会が増えたことが制度化のきっかけになった。3D技術と海洋の知識を卒業と同時に途切れさせるのではなく、本気で挑戦する卒業生には本気で伴走したい」と説明している。

高校生2人が起業構想をプレゼン

発表会では、第3期卒業生の渡邉翔さんと永井健太さんが、それぞれの事業構想を発表した。

渡邉さんは、研究生時代に深海ザメ「ミツクリザメ」の可動式骨格標本を制作した経験を生かし、3Dプリントによる可動式骨格標本事業を構想。EC販売や教育ワークショップ、博物館・水族館向けのカスタム製作を展開し、海洋教育への関心を広げることを目指すという。

また、現在は日本財団「マリンチャレンジプログラム」で深海魚キホウボウの耐圧構造を研究しており、将来的には民間研究機関の設立を目標に掲げている。

一方、永井さんは「3Dプリンターの魅力を多くの人へ伝えたい」というテーマをもとに、教育事業を提案した。

これまで校内コミュニティ「@clubファブラボ」の立ち上げや教材開発、ワークショップなどを行い、約250人に3Dプリンター体験を提供してきた実績を紹介。さらに、学校へ3Dプリンターが導入されても十分に活用されない「文鎮化」の課題を挙げ、教員向け研修やオンライン3Dモデリング講座、新教材の開発などを柱とする教育サービスを構想した。

協賛企業も高校生の挑戦に期待

プレゼンテーション後には、協賛企業から応援のメッセージも送られた。

株式会社エヌエスエスおよびエキスパートマテリアルラボラトリーズ株式会社代表取締役CEOの野田裕介氏は、永井さんが指摘した「文鎮化」は製造業でも共通する課題だと述べ、「3D業界全体で応援したい」とコメントした。

また、さくらインターネット株式会社営業本部第二営業部の増田崇志氏は、社会を変えるきっかけは若い世代の挑戦にあるとした上で、「初心を忘れず、コミュニティの力を借りながら挑戦を続けてほしい」とエールを送った。

卒業生の挑戦を次の5年へつなぐ

吉本氏は、「卒業生の側から『3Dで社会をこう変えたい』という具体的なビジョンが示された初めての事例であり、5年間培ってきた学びが社会実装の段階へ入り始めている」と評価した。

日本3D教育協会では、「海洋3Dアルムナイチャレンジプログラム」を通じて、第2弾以降のチャレンジャーや協賛企業・支援パートナーも募集していく予定だ。

シェアラボ編集部コメント

教育プログラムは、受講期間が終わると支援も終了するケースが多い。一方、日本3D教育協会は卒業後も資金や技術、人脈まで含めて支援する仕組みを立ち上げた点が特徴的である。

今回発表された2人の起業構想は、高校生によるアイデア発表にとどまらず、3Dプリンティング技術を教育や海洋研究へどのように展開するかを具体的に描いた内容となっていた。教育から人材育成、そして社会実装へつなげる新たなモデルとして、今後の展開が注目される。

用語解説

海洋研究3Dスーパーサイエンスプロジェクト
日本3D教育協会が日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として2021年から実施している中学生向け教育プログラム。海洋生物をテーマに3D技術やAIを活用した研究活動を行っている。
アルムナイ(Alumni)
学校や教育プログラム、企業などを修了・卒業した人を指す言葉。近年は卒業生との継続的なネットワークを意味する用語としても使われている。
CTスキャン
X線を用いて対象物の内部構造を断層画像として取得する技術。取得したデータは3Dモデルの作成や研究用途にも利用される。
ZBrush
Maxonが提供する3Dデジタルスカルプトソフトウェア。生物やキャラクターなど複雑な形状を高精度にモデリングでき、3Dプリント用データの制作にも広く利用されている。
文鎮化
導入した機器が活用されず、置かれたままの状態になることを指す俗称。本記事では学校に導入された3Dプリンターが十分に活用されていない状況を表している。

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