モルディブで3Dプリント製クレイリーフを設置 13基の人工サンゴ礁で海洋生態系の再生を支援

2026年7月10日
穏やかなラグーンの水中では、長期的な耐久性を確保するため、構造物をラグーンの海底へ固定する作業が行われた。(出典:Minor Hotels)
穏やかなラグーンの水中では、長期的な耐久性を確保するため、構造物をラグーンの海底へ固定する作業が行われた。(出典:Minor Hotels)

モルディブの高級リゾート「アナンタラ・ディグ・モルディブ・リゾート」は、スイスの海洋再生スタートアップrrreefsと提携し、3Dプリント技術を活用した人工サンゴ礁プロジェクトを開始した。天然粘土を3Dプリントした13基のリーフ構造物をラグーン内に設置し、サンゴ礁の再生や海洋生物多様性の回復を目指す。

花をモチーフにした13基の3Dプリント製リーフを設置

今回設置された人工サンゴ礁は、「Theyra Maa(テイラ・マー)」と名付けられた13基の花形構造物である。ディベヒ語で「13の花」を意味し、再生や成長、海洋生物の繁栄を象徴している。

プロジェクトは、ルフトハンザグループのEdelweissおよびhelp allianceの支援を受けて実施。海洋保全と持続可能な観光を両立する取り組みとして位置付けられている。

焼成テラコッタを3Dプリントしサンゴの定着を促進

リーフ構造には、焼成したテラコッタ粘土を主材料として採用し、強度確保のために鋼材と最小限のコンクリートを組み合わせた。

rrreefsの共同開発チームによると、花びら状のデザインは穏やかな水流を生み出し、サンゴ幼生が付着しやすい環境を形成する。また、積層造形ならではの微細な空洞構造が幼生の隠れ場所となり、捕食者から保護しながら成長を促すという。

さらに、粘土の適度な多孔質構造によって有益なバイオフィルムの形成も促進され、サンゴの定着を支える効果が期待されている。

海洋科学と3Dプリント技術を組み合わせた再生プロジェクト

プロジェクトには、rrreefs共同創設者のJosephine Graf氏、生産責任者のMauro Bischoff氏、海洋生態学者のJulia Spaet氏のほか、ミュンヘン大学の研究者Dr. Gerrit Nanninga氏も参加している。

天然粘土を3Dプリントしたリーフは、自然のサンゴ礁が持つ複雑な地形を再現するよう設計されており、今後はサンゴ片だけでなく魚類やさまざまな海洋生物の生息場所となることが期待されている。

アナンタラ・ディグ・モルディブ・リゾートは、この取り組みを通じて、宿泊客がモルディブの自然保全活動に触れられる機会を提供するとともに、サンゴ礁の長期的な再生を目指していくとしている。

シェアラボ編集部コメント

人工サンゴ礁そのものは以前から存在するが、本プロジェクトは3Dプリントならではの自由な形状設計と微細構造を活用している点が特徴である。水流の制御やサンゴ幼生の定着環境まで考慮した設計は、積層造形だからこそ実現できるアプローチといえる。3Dプリント技術が製造業だけでなく、環境保全や生態系再生といった分野にも応用範囲を広げている好例である。

用語解説

■ 人工サンゴ礁
サンゴや海洋生物が定着・生息できる環境を人工的に作り出す構造物。近年は3Dプリント技術を活用し、自然のサンゴ礁に近い複雑な形状を再現する研究が進んでいる。
■ テラコッタ
粘土を高温で焼成して作られる陶器材料。耐久性や耐海水性に優れ、有害物質をほとんど放出しないことから、人工サンゴ礁や建築材料などにも利用されている。
■ バイオフィルム
微生物が表面に付着して形成する薄い膜状の集合体。海洋ではサンゴ幼生が定着する際の重要な役割を果たし、生態系の形成にも大きく関わっている。

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