イタリアの自転車用サドルメーカーSelle Italia(セライタリア)は、サイクリストの身体データと圧力分布をもとに、3Dプリントサドルを個別設計するカスタマイズプログラム「UNICA」を発表した。従来の3Dプリントサドルがあらかじめ設定されたクッションゾーンを採用するのに対し、UNICAでは実際の計測データに基づき、3Dプリントされるカバー構造の密度をユーザーごとに調整する。
目次
圧力分布を測定し、3D構造をユーザーごとに設計
UNICAの特徴は、既製の3Dプリントサドルからユーザーに合った製品を選ぶのではなく、実際の身体特性や乗車時の圧力分布を設計データとして活用する点にある。
カスタマイズはSelle Italia UNICAの認定センターで行われ、資格を持つバイクフィッターが一連のプロセスを担当する。
まず、デジタルカメラを使用したバイオメカニクス分析を行い、続いて「idmatch Pressure Map」を使って、ペダリング中にサドルへかかる荷重と圧力分布を測定する。
取得したデータはバイクフィッターからidmatchのポータルを通じてSelle Italiaへ送信される。同社はこのデータをもとに、サイクリストの身体的特徴に応じて各部の密度を調整した専用の3D構造を設計・製造する。
完成したサドルは約3週間で店舗へ届けられ、サイクリスト本人の立ち会いのもと、バイクフィッターが自転車への取り付けと身体データに基づいたポジショニングを行う。
「SLR 3D Carbon」など3モデルがカスタマイズに対応
UNICAによるカスタマイズは、Selle Italiaが展開する3Dプリントカバー採用モデルのうち、「SLR 3D Carbon」「SLR 3D Elite」「Novus Boost Evo 3D」の3モデルが対象となる。
製作されたサドルにはユーザー自身の名前を入れることも可能で、一人ひとりに合わせた一点ものとして提供される。
また、専用パッケージには「Pressure Map」による測定結果をまとめたグラフィカルレポートと、顧客および製作したサドルの情報を記載した専用カードが同梱される。
3Dプリントは、複雑なラティス構造などを活用して部位ごとの硬さや変形特性を設計できることから、自転車用サドルへの採用が広がっている。UNICAはさらに一歩進み、実際のユーザーから取得したデータを3D構造の設計に反映することで、量産製品でありながら個人ごとに異なる特性を持たせるアプローチである。
編集部コメント
3Dプリントの強みのひとつが、「形状を変えても金型を作り直す必要がない」という点である。UNICAはこの特徴を活かし、単に3Dプリントでサドルを製造するだけでなく、ユーザーの圧力分布を測定し、そのデータから一人ひとり異なる内部構造を作るところまで踏み込んでいる。
こうした「計測→データ化→個別設計→3Dプリント」という流れは、サドルだけに限ったものではない。シューズやヘルメット、義肢・装具など、人体と直接接触する製品との相性も良く、マスカスタマイゼーションにおける3Dプリントの活用方法として注目したい事例である。
用語解説
| ■ 3Dプリントサドル 3Dプリンティング技術を用いてクッション部分などを製造した自転車用サドル。ラティス構造などの複雑な形状を利用することで、部位ごとに硬さや変形特性を調整できる。従来のフォーム材では難しかった細かな構造設計が可能となる。 |
| ■ idmatch Pressure Map サイクリストがペダリングしている際に、サドルへかかる圧力の分布を測定するシステム。UNICAでは、この測定データを3Dプリントされるサドル構造の設計に利用する。 |
| ■ マスカスタマイゼーション 量産の効率性を保ちながら、顧客ごとの要求や身体的特徴などに合わせて製品を個別化する生産手法。金型を必要とせず、デジタルデータから異なる形状を直接製造できる3Dプリンティングとの親和性が高い。 |

