丸紅情報システムズ(MSYS)は2026年8月25日、ストラタシスの鉄道・輸送機器業界向け難燃性複合材料「FDM® PA6/66-GF30-FR」の取り扱いおよび注文受付を開始した。欧州鉄道防火規格や米国自動車安全基準に適合し、鉄道車両や自動車などの最終用途部品、補修部品のオンデマンド製造を想定する。
目次
ガラス繊維30%配合の難燃性ナイロン材料
FDM® PA6/66-GF30-FRは、ストラタシスのFDM方式3Dプリンター「Fortus® 450mc」と「F900®」向けに開発された産業用熱可塑性樹脂材料である。海外の鉄道業界における需要を背景に、鉄道メーカーや保守サービス事業者との協業を通じて開発された。
難燃性PA6/66ベースポリマーに30%のガラス繊維を配合しており、ストラタシスのPC-FR材料を上回る強度と剛性を備える。一方、高強度材料として使用されている「ULTEM™ 9085 resin」と比較して、コストパフォーマンスにも優れるという。
難燃性能では、欧州鉄道防火規格「EN 45545-2 HL2(R22/R23)」と、米国自動車安全基準の内装材燃焼規格「FMVSS 302」に適合する。高い剛性と強度を持つことから、つり革のハンドルやレバー、ダクトなど、荷重が加わる機能部品への使用も想定されている。
生産用途を想定し造形安定性や後処理にも配慮
同材料は試作だけでなく、少量生産を含む生産環境での利用を前提として設計されている。高い造形安定性や表面品質、部品品質の再現性を備え、後処理の効率化にも配慮した。
また、ストラタシスの「SUP4050B」ブレークアウェイサポート材に対応する。造形後のサポート除去作業を簡略化することで、生産工程における作業負担の軽減と生産性向上につなげる。
MSYSは、同材料を国内の鉄道業界だけでなく、自動車をはじめとするモビリティ業界全体へ提案していく方針だ。
長期運用される輸送機器の補修部品を必要な時に製造
鉄道車両などの輸送機器は運用期間が長く、長期間にわたる補修部品の確保が課題となる。従来は交換部品を在庫として保有したり、生産終了後も供給体制を維持したりする必要があった。
こうした課題への対応策として、3Dプリンターを利用したオンデマンド生産への関心が高まっている。部品の3Dデータを活用し、必要な場所やタイミングで製造できれば、リードタイムの短縮や在庫コストの削減、サプライチェーンの柔軟性向上につながる。
FDM® PA6/66-GF30-FRは、難燃規格への適合に加えて機械的強度やコスト効率を備えることで、鉄道や自動車などの輸送機器分野における最終用途部品、補修部品の3Dプリントを後押しする材料となりそうだ。


編集部コメント
鉄道分野と3Dプリンターは、補修部品のオンデマンド製造との相性がよい。車両の運用期間が長い一方で、すべての交換部品を長期間在庫しておくことはコスト面で負担になるためだ。ただし、実際の車両部品への採用には難燃性をはじめとした規格への対応が欠かせない。FDM® PA6/66-GF30-FRがEN 45545-2などに適合している点は、こうした用途への展開を考えるうえで重要である。国内でも鉄道や自動車の補修部品を「在庫する」方式から、必要に応じて「造形する」方式へ置き換える動きがどこまで広がるか注目したい。
用語解説
| FDM(Fused Deposition Modeling) |
| 熱可塑性樹脂を加熱して溶融し、ノズルから押し出しながら一層ずつ積み重ねて立体物を造形する3Dプリンティング方式。ストラタシスが開発した技術で、試作から治工具、最終用途部品まで幅広い用途で利用されている。 |
| PA6/66 |
| ポリアミド6(PA6)とポリアミド66(PA66)の特性を組み合わせたナイロン系材料。機械的強度や耐熱性などに優れ、自動車部品や産業機器部品などに使用される。 |
| EN 45545-2 |
| 欧州で使用される鉄道車両用材料・部品の火災安全性に関する規格。鉄道車両で使用する材料について、用途や設置場所などに応じた燃焼特性や発煙性などの要求事項を定めている。 |
| FMVSS 302 |
| 米国の自動車安全基準(Federal Motor Vehicle Safety Standards)の一つ。自動車の乗員室内で使用される材料について、燃焼速度などの要件を規定している。 |
| ULTEM™ 9085 resin |
| 高い強度や耐熱性、難燃性を備えたPEI(ポリエーテルイミド)系の高機能熱可塑性樹脂。航空宇宙や輸送機器など、高い性能が要求される分野の3Dプリント部品に利用されている。 |
| ブレークアウェイサポート |
| 3Dプリント時にオーバーハングなどを支えるために形成し、造形後に物理的に取り外すタイプのサポート材。溶解処理を必要とせず、部品形状や用途によっては後処理時間の短縮につながる。 |
| オンデマンド製造 |
| 部品を大量に作って在庫するのではなく、需要が発生したタイミングで必要な数量を製造する考え方。3Dプリンターでは金型を使用せずデジタルデータから直接部品を製造できるため、補修部品や少量生産品のオンデマンド製造に活用されている。 |
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