3Dプリント製アルミ部品の品質向上へ マンチェスター大学、MMD造形時の温度制御が欠陥低減に重要と発表

2026年7月31日
出典:マンチェスター大学
出典:マンチェスター大学

英国マンチェスター大学は、金属3Dプリンティング技術「Molten Metal Deposition(MMD:溶融金属堆積法)」において、造形時の温度条件がアルミニウム部品の品質に大きく影響することを明らかにした。研究成果は学術誌「Materials & Design」に掲載され、製造時の温度を適切に制御することで欠陥を低減し、材料組織を改善できる可能性が示された。

造形温度が結晶粒や欠陥形成に影響

研究チームは、製造業で広く使用されるアルミニウム合金4043を対象に、ノズル温度と基板温度を変化させながら試験片を製造した。その後、顕微鏡観察や機械的特性評価を実施し、造形条件が材料内部の微細構造へ与える影響を分析した。

その結果、ノズル温度や基板温度が高い場合は冷却速度が遅くなり、結晶粒が粗大化するとともに、材料内部の微細な空隙(ポロシティ)が増加することが確認された。一方で、より低い温度条件では冷却速度が速くなり、結晶粒が微細化し、欠陥も少なくなることが分かった。

また、積層が進むにつれて欠陥量や結晶粒径が減少する傾向も確認され、造形中の熱環境が時間とともに変化し、それが材料の凝固挙動へ影響していることも明らかとなった。

従来工法と同等の機械特性を確認

試験片には一部欠陥が見られたものの、硬さや弾性率は従来の製造方法で作られたアルミニウム合金4043と同等の水準であることが確認された。研究チームは、結晶粒径とポロシティとの間に強い相関関係があることも明らかにしており、今後は造形条件の最適化によって、より高品質な部品製造につながる可能性があるとしている。

マンチェスター大学材料学科のDr. Fan Wu氏とDr. Wajira Mirihanage氏は、「造形条件と微細組織、欠陥形成との明確な関係を示すことができた。この成果は今後の製造条件の最適化や、MMDで製造されるアルミニウム部品の信頼性向上につながる基盤となる」とコメントしている。

MMDは、ベルギーの金属積層造形メーカーValCUN BVが開発した技術であり、既存の金属3Dプリンティングよりも低温かつ制御しやすい条件で造形できることから、省エネルギー化や複雑形状部品の製造技術として期待されている。

シェアラボ編集部コメント

金属積層造形では、新しい装置や材料の発表だけでなく、造形品質を左右するプロセス条件の解明も重要な研究テーマとなっている。今回の研究は、温度という基本的なパラメータが結晶粒やポロシティ形成に大きく関与することを示しており、MMDだけでなく他の金属積層造形プロセスにおいても参考になる知見である。産業用途では品質の再現性や信頼性が導入の鍵となるため、このような基礎研究の積み重ねは実用化を後押しするものといえる。

用語解説

Molten Metal Deposition(MMD:溶融金属堆積法)
あらかじめ溶融した金属をノズルから押し出して積層する金属3Dプリンティング方式。レーザーや電子ビームで粉末を溶融する方式に比べ、比較的低温で造形でき、装置構成もシンプルになる可能性がある。
アルミニウム合金4043
シリコンを多く含むアルミニウム合金で、溶接材料や鋳造用途などで広く利用される材料。流動性や耐割れ性に優れ、積層造形分野でも研究対象として用いられることが多い。
ポロシティ(Porosity)
材料内部に生じる微細な空隙(気孔)のこと。ポロシティが多いと強度や疲労寿命、気密性などが低下する原因となるため、金属積層造形では重要な品質評価項目の一つである。
結晶粒(Grain)
金属材料を構成する結晶の単位。一般的に結晶粒が細かいほど強度や靭性が向上する傾向があり、積層造形では冷却速度や熱履歴によって大きさが変化する。

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