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世界の3Dプリンティング ベンチャー企業の今 ― AM VenturesのSimon氏が語る

Lee, Simon (Sangmin), AM Ventures アジア地域局長

3DプリンティングにおけるVC(ベンチャーキャピタル)のリーディングカンパニーであるAM Ventures。そのアジアリージョナルマネージャーのLee, Sang Min(Simon)氏に、3Dプリンティング企業におけるベンチャー企業の役割、世界の3Dプリンティング ベンチャー企業の概況、そして、アジア太平洋地域でのこれら企業の活性化について語っていただいた。(ShareLab編集部)

AM市場の変遷とAM Ventures

アディティブ・マニュファクチャリングは、過去のビジネスモデルを変えるゲーム・チェンジャー・ソリューションとなるために、既存のプロトタイピング・ソリューションから生まれてきました。

世界の3Dプリンティング市場は年率20%以上の成長を続けており、工業用途の採用や近年の連続生産への動きは、金属3D印刷用途を中心に顕著です。
また、われわれは、近年のパンデミックの状況において、緊急医療機器を調達し、サプライチェーンの崩壊からのギャップを埋めるために、3Dプリンティングを柔軟かつオンデマンドの製造ソリューションとして利用する大きな機会を目の当たりにしました。

AM(アディティブ・マニュファクチャリング)は絶えず進化し、真の製造ソリューションになる道を歩んでいます。ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル間の接続が加速し、前処理から後処理までのAMワークフローが統合されてきています。 合理化されたデータチェーンは、部品生産のより良い予測、修正および管理のために使用されており、 AM特有の材料開発とビッグデータと機械分析による、材料性能改善も興味深いトピックとなっています。

そんな中、スタートアップ企業は、ダイナミックで革新的なこのAM産業において、重要な役割を果たしています。彼らは 新時代の「3Dプリンティング」への参入を阻む障害や障壁を克服するソリューションを提供してくれます。
これら技術力のあるスタートアップ企業は、教育水準の高い人材を持つ大学出身の企業が多く、システム開発、ソフトウェア、材料、AMアプリケーションなどの分野で活躍しています。

わたしたちAM Venturesは、AMの初期段階のスタートアップ企業に焦点を当てた、最も活発なベンチャーキャピタル企業の1つです。
2015年の創業以来、AM Venturesは、AM関連のスタートアップ企業を世界中で1,400社以上探し出してきました。 事業計画の分析、資金繰りの追跡、企業の生存率のモニタリングを行い、得られた情報は、成功している起業の動向を把握するのに活用しています。

AMスタートアップ企業の生態系

AMスタートアップ企業の生態系は、以下の4つの分野に分類することができます。

  • ハードウェア、AM関連ハードウェア、周辺機器(マテリアル・ハンドリング・ソリューション、サポート除去、熱処理、表面仕上げなど)
  • ソフトウェア、製造・自動化、後処理、プラットフォームなどの新たなビジネス化、ライセンスのためのソフトウェア・ソリューション
  • マテリアル、材料、金属、ポリマー、セラミック、ガラス、複合材料、グラフェン埋め込みプラスチックおよびバイオインクの製造・精製・研究
  • アプリケーション、ロケットエンジン、E-Mobility(モーター、発電機)、アイウェア、シューズウェア、流体用途、ピストン、少量生産の高級車

ハードウェアソリューションに焦点を当てたスタートアップ企業は特に多く、INCUS社のようなまったく新しいAM技術を開発したり、DYEMANSION社のようなAM特有の後処理ソリューションを提供したりしています。ハードウェアの開発は、多くの場合、最初の収益には数年を要するため、投資集約的かつ高リスクであることが知られています。

一方で、ソフトウェア開発は、投資の減少により参入障壁が低くなるかもしれませんが、競争が激しくダイナミックな市場環境に直面しています。
デジタル製造ソリューションの基盤として、ソフトウェア・ソリューションの重要性が高まってきています。 そんなソフトウェア領域のスタートアップ企業の代表例としては、3YOURMIND社とADDITIVE WORKS社がいます。

また、3Dプリンティングのための材料を開発または最適化する企業としては、ELEMENTUM3D社、EXMET社、SPECTROPLAST社などがいます。AM技術の独自性を活かした新しいアプリケーション開発の領域には、URBAN ALPS社やCONFLUX TECHNOLOGY社などのスタートアップ企業が活躍しています。

3Dプリンティングスタートアップエコシステムの4つの分類比率
3Dプリンティングスタートアップエコシステムの4つの分類比率

世界全体のベンチャー企業 成功率と生存率

われわれの研究では、3Dプリンティングにおける新規事業の全体的な成功率と生存率は30%未満であることが示されています。 ここでいう「生存」とは、少なくともエンジェル投資家の支援や、融資のシード権が回ってきたりするまで、企業を存続させる能力を指しています。 「生存した」中で、更に「成功した」スタートアップ企業とは、シリーズAの資金調達が決まっている / もしくはそれ以上のシリーズに進んでいる、またはIPOなどイグジットを実行できる可能性がある企業と定義しています。

地理的な観点から見ると、特に目立つのは、ドイツ語を話すヨーロッパ(DACH -ドイツ、オーストリア、スイス)でのスタートアップ企業の生存率が最も高いことです。その理由は、これらの国では世界をリードする産業プレーヤーが、パイロット顧客や開発パートナーとして、起業のインキュベートや加速を支援してくれる、強力な技術インフラが整備されていることによると思われます。

一方、APAC(アジア太平洋)地域のパフォーマンスは低迷しています。 APAC地域での生存率と成功率を高めるためには、まずリスク回避型の文化に挑戦し、高水準の技術系大学からスタートアップ企業の高い教養のある人材を奨励する必要があると考えます。 APAC地域における現在のAM市場の成熟を考えると、AMの開発とパイロット利用のために、世界の大手AM企業へのアクセスを向上させることも重要な要素です。 また、経験豊富でつながりのある投資家がいれば、これら必要なネットワークと世界的なアクセスを提供するのに役立つかもしれません。

世界のAMベンチャー企業の「生存率」と「成功率」
世界のAMベンチャー企業の「生存率」と「成功率」
地域別 AMベンチャー企業の成功&生存率
地域別 AMベンチャー企業の成功&生存率

AM Venturesについて

わたしたちAM Venturesは、3Dプリンティングにおけるベンチャーキャピタルのリーディングカンパニーであり、3大陸7カ国で16社以上の成功企業からなる広範なポートフォリオを持っています。
深い技術ノウハウも持っており、3Dプリンティング業界で最も経験豊富な業界専門家とのネットワークがあります。そして、投資パートナーとして、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、アプリケーションのスタートアップ企業に持続可能な投資を行う世界有数のエコシステムと彼らに適した形でカスタマイズされた投資を行い、先進的な生産技術へのアクセス提供しています。

また、エンジニアリング、生産、経営幹部のそれぞれに長年の経験を有する業界の専門家集団を起業家に紹介しています。もし日本のAMベンチャー企業でこのようなサポートに興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。 

なおAM Venturesは、アジア大陸において調査を行うために、韓国釜山に初の支店を開設しています。

Lee, Simon (Sangmin), AM Venturesアジア地域局長

【筆者情報】
Lee, Sangmin (Simon),
AM Ventures アジア地域局長
simon.lee@amventures.com
www.amventures.com

AM Ventures logo

シェアラボ編集部

3Dプリンターの繊細で創造性豊かなところに惹かれます。そんな3Dプリンターの可能性や魅力を少しでも多くの人に伝えられるような執筆を心がけています。

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