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3Dプリンターで作られた医療用マネキンが鼻腔スワブトレーニングに貢献

WHO(世界保健機関)によると、2021年8月現在での世界における新型コロナウイルス感染者数は2億人を超えている。その新型コロナウイルスの有無を確認する方法として知られているのがご存じ PCR検査で、スワブと呼ばれる長い綿棒のようなものを鼻腔に挿入して行われる。

シンガポールで最大の民間歯科医療グループであるQ&Mは、感染拡大を続ける新型コロナウイルスに対して、非医療関係者でも的確にPCR検査が行えるよう鼻腔スワブの挿入トレーニングを実施する必要があると考えた。そこで採用されたのが3Dプリンターで作成された鼻腔のマネキンだ。

等身大の3Dプリントマネキン

Q&Mは、自グループと同じくシンガポールを拠点とするCreatz3D社と、その子会社であるAuMed社が共同で、昨年夏に最前線の医療トレーニング組織向けに3Dプリントの医療用マネキンを開発したことを知る。そのマネキンはしっかりと人の解剖学的特徴を反映しているだけでなく、等身大でもあったため、Q&Mはスワブの挿入トレーニングにうってつけであると考えた。

3Dプリントされた透明の人体頭部のモデルを使用し、スワブを入れる練習をしている風景

シンガポールにおける鼻腔へのスワブ挿入トレーニングは、自発的に休暇を取って支援する医療専門家だけでなく、医学的知識やトレーニング経験を持たない民間人にもその技術が提供される。そのため、触覚で体験できるトレーニングツールを使用することが重要になる。Creatz3D社と AuMed社が作成した3Dプリントによる鼻腔マネキンは、このニーズに合致する形となった。

4つの色と素材で作られるマネキン

訓練生がテスト用のスワブで練習しながら頭蓋顔面の解剖学的構造を簡単に確認できる断面図を備えたマネキンは、鼻腔内の軟組織を、視覚だけでなく触覚でも区別できるよう、4つの異なる色から4つの異なる材料を使用して3Dプリントされた。

AuMed社は、このマネキンを作成するためのCTやMRIでの撮影データを持ち合わせていなかったが、代わりに独自のライブラリからのさまざまな解剖学的3Dモデルを融合させてマネキンを作成した。マネキンの作成にはデザインと印刷を含め、たったの5日間しかかからなかったという。

120名以上のPCR検査員を派遣するQ&M

2020年4月、Q&Mは歯科用具のプローブをPCR検査のための鼻腔スワブに持ち換えた。シンガポールで行われる新型コロナウイルス検出を支援するために120人を超える歯科医とスタッフが、ホテルや外国人労働者寮、政府の検疫施設の人々に、鼻腔スワブを使ってPCR検査を行っていった。

Q&Mは鼻腔スワブにおいて多くの実績を積んだ。その結果、スワブワークフローの効率化、標準化、および安全性を向上させるために必要な多くのデータを提供が行えるようになった。シンガポールの健康促進委員会(HPB / Health Promotion Board)は、鼻腔スワブの分野で非医療関係者をトレーニングする際に、標準な手順の一部としてQ&Mの提案の一部を実際に取り入れた。

Q&Mは、Creatz3D社とAuMed3D社による3Dプリントの医療マネキンを使用した最初の実地トレーニングの後、従来の鼻腔スワブだけでなく、前鼻スワブや中咽頭中鼻甲介スワブの手順もよりよく理解できる仕組みを提供したいと考えている。

Q&Mは現在、シンガポールでの新型コロナウイルス感染者の選別や、ウイルス検出のための鼻腔スワブが実行できる人材の需要を満たすために、歯科大学を通じて非医療専門家向けに、すべてのスワブ技術と操作、および抗原迅速検査や抗体血清学などの特別な検査の実行方法が学べる「新型コロナウイルススワビング能力コース」を提供している。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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