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「透明」も再現するフルカラー3Dプリンターで塗装レス―フォルクスワーゲン

試作に3Dプリンターを活用する事は今日なんの新規性もない日常になりつつあるが、そんな日常は片時も止まってはいない。常に進化し続ける3Dプリンターの進化には目を見張るものがある。その代表例がフルカラー造形の進化だ。

ひと昔前のFDMでは灰色や白など単色に染色されたフィラメントが当たり前だったし、パウダーベッド方式でも乳白色の素材の色が残ってしまい透明度が高くないことを許容する必要があった時代もあった。またサポート材を除去しその後積層痕を消すという工程を経るため、複雑な形状では研磨に大きな工数がかかる上、微細な部分の塗装には一定以上にスキルが求められた。

かつての悩みは現在ほぼ解消されており、ストラタシスのPolyJet方式やHPのマルチジェットフュージョン方式の3Dプリンターでは非常に高精細なカラー造形が可能で表面粗さも大幅に改善されている。

Pantoneカラーでの色指定や表面の模様、質感をイラストレーターやフォトショップで利用できるテクスチャ機能で張り込むように、連携するソフトウェアを使って木目や布地の質感を3Dプリンターで再現することができるようになっているほどだ。

フォルクスワーゲンも試作用に2台購入

欧州自動車大手フォルクスワーゲンはストラタシスのPolyJet™技術ベースのJ850™ 3Dプリンタ2台を導入し試作開発で利用を開始している。フォルクスワーゲンのPre-Series Centerでは車両の内装/概観の広範でリアルなプロトタイピングを3Dプリンターをつかい実現しているという。

フォルクスワーゲンは1990年代交換から25年以上にわたって3Dプリンティングを研究・開発に利用してきたが、今回のフルカラー造形による色彩や質感の再現を活用する事で「最大99%の精度で最終製品を忠実に再現」することができるようになったという。

クレイモデルに組み込まれる3Dプリンター製試作部品

ストラタシスが語るところによると、J850によりフォルクスワーゲンは硬度、柔軟性、不透明度、透明度などが異なる最大7種類の材料を使用し、1回のプリンティングでフルカラーのプロトタイプを製作しているという。

自動車業界では永らくクレイモデルに金属的な光沢をもつシートを張り外観を再現したり、合皮やプラスチックのシートを張り合わせるなどの手法で内装を再現してきたが、こうしたクレイモデルに3Dプリンター製部品がビルドインされていると思われる。

フォルクスワーゲンPre-Series Centerチームはクルマのインテリア向けに、布から皮革、木材に至るまでの異なるテクスチャ表面のパーツを3Dプリンティングで製作している。こうして非常にリアリティの高い試作モデルを造形してきた実績があるが、いままで表現しきれなかった合皮や布地のテクスチャ、ダッシュボードやインパネ周りの液晶画面や計器類のように透明感を求められる部品を一括造形できることはクオリティを高めながら、リードタイムを削減することに一役買うだろう。

フィルクスワーゲンの車両内装(ストラタシス提供)

内装も外観も精密にフルカラーで試作造形

Volkswagen Tiguan(ストラタシス提供)

近年自動車のヘッドランプ形状のトレンドがLEDの採用で大きく変わってきており、自動車の表情を大きく印象づけている。VeroUltraClearという透明度が高くガラスの質感を再現できる材料を利用することで、透明度が高い箇所と白色がかった透明度が低い箇所をもつ部品を同時に造形できるほどだという。フルカラーで「透明」や「ガラスの質感」も再現できるという事で、従来のパーツ組み立てや塗装などの複数ステップの設計プロセスと比較し、時間とコストを大幅に低減することが期待できそうだ。

経営にとって時間は資源

試作時間を節約することができるという事は、デザインのフィードバックに対応し改善を行うチャンスが増えることになる。デザインへの投資が大きな競争優位につながる自動車産業にとっては、大きな価値を生み出すことにつながるだろう。そしてこのメリットを活用する事ができる業界は自動車業界だけにとどまらないはずだ。

経営にとって時間は資源であり、金額に換算される目に見える貢献だ。試作造形を3Dプリンターに任せ、設計者はデザインに専念することができれば、限られた人員と外注費と闘いながら多品種少量生産への対応を迫られる設計現場にも大きな福音となるかもしれない。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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