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風に飛ばされるほど軽いサングラスに3Dプリンター活用―山本光学

AMは新しい工法だが、既存の工法のすべてを破壊するものではない。工法はあくまで手段で、目的はよりよいものづくりなのだ。そんなことを教えてくれるプロダクトが、3Dプリンターを利用したサングラス、DeneB(デネブ)だ。

風に飛ばされるほど軽いサングラス

DeneBはSWANS(スワンズ)というブランド名でアスリート向けのアイガードを製造販売しているスポーツメーカーで山本光学がクラウドファンディングのMAKUAKE(マクアケ)で募集を行っている凄く軽いサングラス。

9.3gの重さのサングラス(一円玉約9個分の重さ)ということで、平均的な眼鏡の重さ(約35g程度と言われている)の3分の1以下の重量だ。

DeneBではCarbon社の3Dプリンター「M2」を利用して、ノーズパッドを造形している。Carbon社が得意とする柔らかいラバーライクな材質とラティス構造を活かして、軽く鼻の形にあわせたフィット感を実現している。

通常こうした軽量サングラスでは、軽量化のためにチタンなどが利用されるが、DeneBではPEEK材を利用。耐摩耗性、耐薬品性、難燃性、耐放射線性に優れるだけでなく、βチタンの3分の1程度の比重という事で、やはり軽い。

3Dプリンターで鼻パッドを造形

山本光学はアイガードの開発を通じてバレーボールの鍋谷選手をサポートする際に、Carbonの3Dプリンターを活用して超短期間のうちに鍋谷選手モデルとも言うべき屋内スポーツ用アイガードを作り上げた。次に目にボールが直撃すると失明すると医師に宣告された鍋谷選手の目を守り、選手としての競技力を損なわない広い視野を実現したアイガードとは異なり、今回のDeneBでは徹底した軽量化となにも付けていないかのような解放感を実現したサングラスに仕上げてきた。

3Dプリンターなどの新しい工法を効果的に活用して、新しいものづくりを行うSWANSのDeneBだが、すでに2色あるうちのアイスグラスは受付終了、とのこと。24,500円(一般販売価格は税込み34,000円)という事で、安い買い物ではないが、突き抜けた新しい価値には着実な市場が存在することを示しているように思われる。

3Dプリンターによる突き抜けた強みを持つ製品を短期開発し続ける

コロナで小売業が不調な時に、海外をはじめ国内でもB2Cビジネスを行うメーカーはECサイトでの販売を強化した。いわゆるD2Cによる直販だ。

既存の製品とは別ラインの製品展開を行い、既存商流への配慮を見せる場合もあれば、全く同じ製品を販売する場合もあるだろうが、D2Cでまったく新しい層にアプローチすることで、不況下でも可処分所得を確保している層や、今までのアプローチでは到達できない層の開拓を実現できる可能性がある。こうしたボリュームゾーンではない、カテゴリーニッチを狙ったものづくりは、開発コストを抑え、ロングテールに販売を続けることで収益に貢献できる。

そういう観点で言えば、試作を活用し、開発期間を圧縮し、金型投資や外注工場への加工依頼を行わずに製造を内製化しオンデマンドにモノづくりを行うことができる3Dプリンターによる部品製造は非常に向いている設備であり工法だといえるだろう。(重量が軽いほど材料費や加工時間を低水準に抑え、販売価格は非常高い水準にある。職人の手仕事でクオリティが決まる部分を3Dプリンターでうまく大体できれば、収益性も期待できるかもしれない)量販大手JINSが同じくCarbonの3Dプリンターをつかってアイウェアを製造している事は非常に興味深い。

集客チャネルとして、クラウドファンディングのように、新しい価値にむかって挑戦するブランドを好むプラットフォームは大きなテストベッドになりうる。3Dプリンターで造形した炭素繊維製の自転車をクラウドファンディングで投入したArevoや3Dプリンター製の自動車をクラウドファンディングで受注生産したXEV YoYoなどの事例もあるが、今後もこうしたモノづくりで新しい価値創造に挑戦し続ける企業が続く事を期待したい。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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