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あのニコンからエレベータで搬入できる金属3Dプリンター登場!

なにかを「普及させること」について考える際、スペック、価格、納期の観点ばかりに目が行くが、実際はどうやって搬入設置するか、安定的に利用できるために何が必要なのだろう?と考えることは非常に重要である。

「大型冷蔵庫を買って、キッチンに設置するまでに非常に苦労」した記憶がある方、「キングサイズのベッドを寝室に搬入するのが大変だった」方などは想像しやすいだろうが、産業用設備に関しても(特にエントリーモデルに関しては)同様の配慮が必要だ。

その点、非常に考え抜かれているな、という印象を受けたのがニコンの金属3Dプリンター 光加工機「Lasermeister 100A」だ。3000万円台という価格、エレベーターに乗るサイズ、都心部のオフィス内ラボに設置しても違和感がない洗練された筐体、タブレット端末のような操作感のタッチディスプレイなど、普及機として市場に親しまれやすい一台になっている。高精度難加工技術展2019で株式会社ニコン半導体装置事業部の北村芳樹氏にお話を伺った。

「Lasermeister 100A」(ホワイト、ブラック)

ニコンというとカメラという印象がある方も多いと思いますが、どれくらい前から研究開発を進めていらっしゃったのでしょうか?

「ニコンはご指摘の通りカメラという印象が強いと思いますが、その強みはレンズにあります。そのレンズを使った産業用装置の製造も行っておりまして、半導体の元となるシリコンウエハに回路を露光させる「半導体露光装置」という装置を製造しています。半導体露光装置は史上最も精密な機械と呼ばれるほど精度が求められる装置で、ナノ単位での回路露光を行います。今回の金属3Dプリンターはその技術的蓄積をもとに開発しました。
金属3Dプリンターは半導体レーザーで金属粉末を照射し、造形を行いますが、レーザーコストが大きく効いてきます。弊社はガラス、レンズの製造を行っていることから、高精度なレンズを組み合わせることで、レーザーに求められる機能を補完しました。その結果、コストダウンにも繋がりました。」(北村氏)

コストダウンの成果が気になります。具体的な販売価格は?

「仕様により異なりますが、約3000万円です。現在日本で入手できる金属3Dプリンターはかなり種類も増えてきましたが、〇億円前後になる高価な装置です。それもあってか、日本は3Dプリンターの活用が世界の国々にくらべて遅れているともいわれているようです。国内で入手できる金属3Dプリンターがもっと安価になれば、独自のものづくりに取り組む中小企業や産業に新しいイノベーションを起こせる起業家、デザイナーの方に入手して頂きやすいのではないかと思います。そういう意味での普及価格を目指しました。3000万円は相対的に安価な水準ですが、先ほどご紹介したレンズ技術の活用によるコストメリットのため、金属を使ったモノづくりという意味では必要十分なスペックを備えていると自負しています。」(北村氏)

大きな冷蔵庫くらいの大きさですね。

「はい。『Lasermeister 100A』は、高さ1.7メートル、床面積約0.64平方メートルと、設置場所の省スペース化を実現しました。工場などの加工現場以外にも、企業や学校の研究施設、一般的なオフィスなど様々な場所への導入ができるように設計しています。 重量は約300kgなので、一般的なエレベータでも載せられます。」(北村氏)

なんというか特徴的な出力サンプルですね。

右:ニコン北村氏と Lasermeister 100A
左:造形サンプル。スパナに足が映えている恐竜みたいなやつ、お茶目ですね。

「はい。特殊な形状の出力サンプルは3Dプリンターメーカー各社で展示がありますが、私たちは別の観点で取り組みました。例えばこの写真です。 点字の要領で、指で触れて写真の形状を認識することで、 目が不自由な方にも写真を楽しんでいただくことができます。この凹凸の間隔は実際のサンプルを触っていただいてもっとも形がわかるものを選定頂きました。」(写真右)

写真右:目が不自由な人向けの写真。
写真左:ドアノブに点字を積層加工で後付けしたもの

「(写真左の)ドアノブには、点字が印字されています。3Dプリンターがもっと身近になれば、公共施設の案内標識や手すり、ドアノブなどに点字をもっとたくさん設置できるようになると思います。」(北村氏)

JRや私鉄各社もドイツ鉄道のように、金属3Dプリンターで鉄道構内に点字案内を整備するようになるかもしれない。県や市が1台ずつもてば、域内の公共施設に同様の取り組みができる未来もあるかもしれない。

ボルトを3Dプリンターで「延長」。指で示している色が変わっている部分が該当箇所。ナットは問題なく回った。

「このボルトは金属3Dプリンターで『延長』しました。指で示した手前部分がもともとのボルトで、すこし色が黒くなっている箇所が延長した箇所です。その後の部分と色が変わっていますが、これは時間をおいて再度試した箇所になります。ナットはスムーズに問題なく回っています。」(北村氏)

産業用装置として「細孔や密閉形状をはじめとした複雑形状に対応できる、肉盛りできる」という「何ができるか」という出力サンプルではなく、「何のために使うのか」考えるヒントをくれた出力サンプル達だった。新しいものづくりを広げるための装置としての「Lasermeister 100A」を送り出したニコンの姿勢を感じた。

「普及させるぞ!」という強い意思を感じます!何台くらい年間に販売される目標ですか?

「実は年間販売目標は設定していません。 新たなものづくり市場・産業創出を目的にしようという事で、通常の製品開発承認のプロセスとは別に製品化を決めています。 「造形」・「肉盛り」「マーキング」、「接合」まで、レーザーによる様々な金属加工を高精度で容易に行う金属加工機をとにかく世に出すんだ!という形で進めました。 」(北村氏)

造形材料はステンレスのみということだったが、今後の展開が気になるところだ。

非常に戦略的な製品なんですね

「はい。価格以外にも、安全対策にも取り組んでいます。レーザーを扱うので、取り扱いは本来危険です。金属粉によっては粉塵爆発を起こす可能性があります。そういったリスクを装置側が適切に処理して、安全に簡単に使っていただけるように配慮しました。装置もタブレットの画面を触る感覚で操作できますので直観的に使っていただけるインターフェイスになっていると思います。」(北村氏)

2019年が金属3Dプリンター普及元年となるか。

今回のニコンの「 Lasermeister 100A」 は機材費約3000万円で導入できる。三菱重工工作機械の国産金属3Dプリンター「ラムダ」も普及価格として5000万円を設定していた。それまで1億円台だった初期導入費用が一気に半値、三分の一の価格で導入できるようになってきた事は、これから金属3Dプリンターの導入が拡大する大きな分岐点の到来を感じさせる。ニコンの「 Lasermeister 100A」 は令和元年が金属3Dプリンターの普及元年となるかもしれないと予感させる象徴的な一台だ。

六本木のTechShopに実機導入済み!

現在ニコンの光工作機「LasermeisterA100」は六本木のTechShop(世界各地に拠点展開する会員制ファブラボ。法人会員の利用も多く六本木の施設はアジア初上陸店舗となる。3Dスキャナ、樹脂・金属3Dプリンター、UVプリンター、レーザーカッターなどを備える。)に導入されているとのこと。都心部でも実機確認が可能なので関心がある方は問い合わせしてみてはどうだろう。

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