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経営に与えるアディティブマニュファクチャリングのインパクト

2019年名古屋で開催されたインターモールド2019の会場でセミナーに登壇していたドイツのコンサルティング会社テュフズード・ジャパンのセミナーでは、ドイツ本国でシーメンスと連携してドイツ鉄道でのAM推進でさまざまな効果をあげた事例が紹介されていた。テュフズード社はドイツでの品質規格の認証を行う第三者認証機関としてAMに関わる中、AMの品質に関する定義や最適化のための取り組みなどもコンサルティングしてきた実績をもつ。あらためて経営に与えるアディティブマニュファクチャリングのインパクトに関して話を伺った。

Q.ここ数年アディティブマニュファクチャリング(AM)に注目が集まっていますが、その理由は何ですか?

アディティブマニュファクチャリングには従来の加工方式にくらべて、大きく異なる特徴があります。その特徴を活かすことで大きな経営へのインパクトがあるからだと考えています。

 

■ AM「4つの特徴」

1:生産数が少なくても多くてもコストがほぼ変わらない

2:複雑な形状でもシンプルな形状でもコストがほぼかわらない

3:0からでも母材がある状態でも加工ができる

4:大規模な生産設備を要しない

つまり月間100万個生産する部品にはアディティブマニュファクチャリングはまったく向いていませんが、ドイツで設計された100個の特注部品や10個の補修部品を日本で生産し、物流費用、保管費用、生産費用といった支出を圧縮することができます。また複数部品を統合することで、部品点数を減らせば、さらに経費圧縮につながります。大きなメリットです。このメリットは経営にも大きなインパクトがあります。だから多くの企業が取り組みを始めようとしているのだと思います。

Q. 多くの企業が関心を寄せていますが、リスクへの心配も多いようです。いま推進している企業はどのような対策をとっていますか?

アディティブ・マニュファクチャリングは積層加工できる装置を導入しなくては実現できません。その装置は安価なものではありません。つまり経営判断と投資を伴います。生産側が経営判断をするためには、市場でニーズがあり、リスクをコントロールできる見込みがたたねばなりません。先ほどお伝えしたように、アディティブマニュファクチャリングには独自の特徴とそれを活かしたメリットがあります。このチャンスは生産側、購入側双方にとってのチャンスです。ですが、成熟した今までの技術に基づく製品への信頼を覆しても、デメリットがないかどうか、合意を形成する必要があります。

私たちが着目したのは規格への準拠です。この規格は日本でいえばJISのような生産されたワーク自体の準拠であり、ISOのような生産プロセス自体への準拠です。規格は一定の水準を合格している事への信頼であり、合意です。規格への準拠を証明するためには第三者による認証が有効です。私たちはこの規格への準拠と認証をジーメンスやドイチェバーンに提供しています。

その結果、ドイチェバーンはICE(ドイツにおける新幹線)に1万5000点の補修部品を実際に利用してメンテナンスをおこなっています。これは現在運航している車両のすべてに最低1個のAMで作られた部品が利用されていることを意味します。列車という何百人もが乗る公共機関で事故が発生すれば大きな社会問題にも発展するミッションクリティカルな現場でも通用するという合意をサプライヤー、バイヤー双方で形成することができたのは、規格準拠への認証が大きな役割を果たしたと考えています。

Q. 今後どのように展開していくのでしょうか?

AMですべてのパーツを作るべきとは今の段階では言えませんし、今後も既存の製造技術でつくられた製品は大きな位置をしめていくと思います。しかし、複数部品を統合し、規格認証のプロセスを削減していく動きは広がっていくでしょう。また工作機械の高性能化でより適用される範囲は広がっていくでしょう。金型をつかった加工方式が一般的でありつづけるように、AMもより一般化し普通のことになっていくと思います。規格への準拠による共通理解の形成はその際の推進力になり、より広い範囲での認証取得が行われていくでしょう。

現実的な枠組みとしての規格準拠

新しい技術には大きな可能性がある。だが一方で、現場を知る人ほど、新しい技術がもつリスクも身に染みているはずだ。こうしたリスクは安定稼働を目指す生産現場責任者や経営数字預かる経営陣からみると不安でしかない。しかし新しいチャレンジなしには成長機会もない。AMに代表される新しい加工技術を備えた装置導入の際は、導入前にリスクを洗い出し、小規模に導入し、その後横展開してきたはずだ。今回の取材については、そんな対策を講じてきた各社の取り組みをもとに生み出されてきた「規格」という枠組みへの準拠を通じて、早期に具体的なリスクをつぶしていくアプローチとして、非常に現実的な印象を持った。

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