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次世代3Dプリンター展2021@幕張メッセ報告

コロナ以前は「金曜午後、展示会で情報収集し直帰」したビジネスマンも多かったはずだ。しかし2021年2月5日金曜日、3日間の会期の最終日を迎えた次世代3Dプリンター展(会場:幕張メッセ)の人通りはまばらだった。コロナが本格化した一年前の開催時に比べれば人出は多い印象だったが、コロナによる緊急事態延長の影響が見られたのは否めない。

しかし、そんな中でも、日本3Dプリンター、JEOL、Carbon、ホッティーポリマーなどのブースでは「いわゆる展示会」を感じさせるような熱心に話を聞く人の姿があり、コロナ下でも情報収集を行う熱心なユーザー企業があることを感じさせた。また富士インダストリーズと出展していた日本ミシュランタイヤのように新しい取り組みにチャレンジする企業の出展など、コロナ下でも果敢に挑戦を続けるAM産業の動きを垣間見ることができた。

すべてに触れることはできないが、今回の次世代3Dプリンター展を振り返ってみたい。(画像は、ShareLab編集部撮影)

JEOL(日本電子株式会社)

TRAFAMに参画し、電子ビーム方式の国産金属3Dプリンターの開発を行っていたJEOL(日本電子株式会社)。広いブースに金属3Dプリンターのモックアップを配置し、複数の造形サンプルを展示していた。写真撮影の許可を求めたが、まだ正式発売前、ということで許可は得られなかったが、もうすぐ正式な発表をおこないますので、と会場担当者からの説明を受けた。参考出展の装置を紹介できなかったことが残念だが、JEOL社サイトに同社の金属3Dプリンターに関する取り組み概要に関して紹介があるので、ご紹介しておく。

技術や装置の開発だけの開発ではなく、エコシステムを開発するというコンセプトで実施された国策金属3Dプリンター開発プロジェクトTRAFAMではAM装置メーカーだけではなく、ユーザー企業も参画した国際競争力を高めるための用途分野とそれを支える装置開発を含んでいる。

TRAFAM参画のAM装置メーカーとしては最後発として装置を展示会で公開したJEOLだが、ユーザー企業と共に、航空・宇宙分野、医療分野での量産装置としての活用を想定した装置開発を行ったという。正式リリース後に詳しくご紹介したい。

Formlabs

ブース出展は取りやめていたが、ブース内を休憩スペースとして開放していたFormlabsのブース内で同社の新井原氏にお話を伺うことができた。Formlabsといえば、大型化したForm3Lの販売が好調なほか、米国でSLS方式のプリンター「Fuse 1」をリリースしたばかりだ。

SLS方式のプリンターに関して話を伺うと、「光造形方式であるForm3シリーズでは、対候性の観点で課題が残りますが、SLS方式(材料パウダーをレーザーで溶融させ造形する方式)である「Fuse 1は、その懸念はありません。またサポート材が不要でより複雑な形状を高精度に造形できるので、少量の補修部品用途や特注部品などに適しています」と使い分けができるようだ。

日本での販売の可能性に関して聞くと、「SLS方式は粉末の樹脂材料をレーザーで溶融する方式です。作業者が吸い込むと健康被害が懸念されますので、クリーンルームを設置してもらうなど、ガイドラインを用意する必要を感じています。また最終部品用途でのご利用を想定すると、材料開発に対するニーズに向き合う必要が出てきます。いま使っている材料を使いたい、サードパーティーの材料を使いたいというニーズも想定できます。メーカーとして慎重に考えていくべき課題がいくつもあります」と説明してくれた。

すぐ日本でも発売という雰囲気ではなかったが、試作から治具、最終部品へと高まるニーズを受けた取り組みであることが感じられた。

ホッティーポリマー

(ホッティーポリマー社サイトより)

ゴム・プラスチックなどの樹脂の射出成型で事業を行うホッティーポリマーだが、3Dプリンターを使った受託造形サービス以外にも、自社ブランドの3Dプリンター販売や、柔らかいシリコン系の材料を造形できるジャーマン・レップラップ社の3Dプリンターの販売に取り組むなどAM分野での事業展開に積極的だ。

材料研究を複数の材料メーカーからの依頼で行っているほか、セミナーでも「架橋接合」と同社がよび特許出願中の分割した部品をつなぎ合わせて造形する技術を開発するなど取り組みを活発化させている。さまざまな装置とあわせて説明員が来場者に説明を行っており、活況なブースだった。

富士インダストリーズ/ミシュランタイヤ

航空機材やハイテク機器材料などを商材とした中堅専門商社で金属3Dプリンターの販売を行う富士インダストリーのブースでは、フランス製の金属3Dプリンターの紹介があった。

AddUP社のパウダーベッド式金属3Dプリンター(富士インダストリーズ社サイトより)

富士インダストリーズは、AM分野ではフランス製の金属3Dプリンターの取り扱いを行っています。AddUp(アダップ社)とBeAM(ビーム社)です。」(株式会社富士インダストリーズ 新規事業開発室 上野徳行氏)

また製品の造形サンプルの展示と合わせて目を引いたのは、群馬県を舞台にした産官学連携のAM促進プラットフォームの紹介だ。まだ取り組みに向けた準備が始まったばかりのようだが、AddUpを有するミシュラングループと共に、群馬県で産官学連携のAMプラットフォームを立ち上げ、根付かせる取り組みを行っていくという。ミシュランは自社のタイヤ製造用金型の一部にAddUp製金属3Dプリンターでの製造を取り入れ、大きな成果を上げているという。ブースに居合わせた日本ミシュラン株式会社のAM事業マネージャー、ジャック・バボ氏にも話を伺った。

ミシュランは自動車のタイヤを製造するメーカーですが、タイヤを製造するだけではなく、素敵なレストランを人々に紹介するミシュランガイドを発行し、車での移動を促すなど、生態系を構築することを大切にしてきました。ミシュランガイドでユーザーに行動を促すように、AM分野でも活用用途を提案していく必要があります。AM事業においては、JETRO群馬の協力もいただきながら群馬県で地域一帯のAM推進事業を立ち上げているところです。(日本ミシュランタイヤ、ジャック・バボ氏)」

群馬AMプラットフォームを完璧な日本語で紹介してくれたミシュランのジャック・バボ氏

AMは新しい技術だ。新規に活用を検討する企業は、購入する前に装置に触れ、技術を学びながら、利用企業相互に技術を高めあう仕組みが重要だという。

装置メーカーの本国で数週間研修をうけて帰国した後に、『あっ、これはどうしたらいいんだろう?』となると困ってしまいます。金属3Dプリンターは樹脂の3Dプリンターに比べて取り扱いが難しいと思いますので、製造拠点のそばで技術を学び、ユーザー相互に技術交流できるような取り組みが重要になってきます。具体的な社名はまだお知らせできませんが、先日も群馬県の地元自治体と複数社の地元企業を交えた打ち合わせを行いました。参加各社はいずれもAM技術への取り組みを積極的に検討しています。(日本ミシュランタイヤ、ジャック・バボ氏)」

群馬県はSUBARUや日野自動車といった自動車メーカーが生産拠点を置くほか、航空産業、産業用機械、医療用機器の製造拠点も軒を連ねる一大産業集積地だ。群馬県自身も県内企業の紹介を行う群馬バーチャルエキスポを開催するなど、県内企業の振興にも取り組んでいるが、コロナで注文が激減した産業と激増した産業の明暗が分かれた地域でもある。

大量生産は海外拠点に任せ、日本国内の製造拠点では高性能部品や多品種少量生産を担うグローバルなサプライチェーンの中に組み込まれた群馬県内企業が、どのようにAMを活用できるのか。こうした生産調整の変動が激しい局面は、小回りの利く3Dプリンターが活用しやすいタイミングだ。グローバル市場と向き合う製造各社の経営層は3Dプリンターに関心を寄せていることだろう。このコロナショックを機に経営層の目論見を受けて、3Dプリンター活用の検討を進める特命プロジェクトも複数立ち上がっているかもしれない。

国内ではおなじく地場の金属加工業の技術振興を図る「ひょうごメタルベルトコンソーシアム」などの動きもあるが、一部の企業だけが参画できる国策プロジェクトとは違って、一般の企業にも門戸が開かれている。

産業設備としての金属3Dプリンターは、廉価帯のものでも3000万以上と決して安い設備ではないし、新しい技術蓄積が必要な分野だ。高額な投資を実行する前に、地元で実際に装置に触れ、自社での活用のために何が必要かを検討できることは大きなメリットだ。地元密着のAMプラットフォームを通じて、ミシュランのタイヤ金型をAMで内製化した取り組みなどのように、経営効果の高い実践的な用途開発が期待される。

Carbon/JSR

樹脂の最終部品生産をサブスクリプションという独自の提供方法で、着実に日本に広めているCaronのブースも人を多く集めていた。シェアラボでも何度か取り上げているが、「新規の取り組みだから社内に十分な知見がまだない、、」そんな不安を一緒に伴走してくれるパートナーシップを提供しているのはCarbonだけの強みだろう。今回の出展でも国内外の多彩な事例に関して紹介していた。(オンライン展示会テクノフロンティアにも出展しているので、そこで同社の事例をダウンロードできる。

GFマシニングソリューションズ

2021年1月に開催された東大のAMシンポジウムでも登壇していたGFマシニングソリューションズのブースを見かけたので立ち寄った。同社は200年以上の歴史を持つスイスの産業用機器メーカーで、ミーリングマシンやワイヤー放電加工機などの工作機械を取り扱う。その一環で金属3Dプリンターの製造にも取り組んでおり、販売チャネルとしては独立しているが、3Dシステムズの金属3DプリンターDMPシリーズはGFマシニングソリューションズが製造を受け持っているという。

情報の中身の濃さ。展示会で人から直接聞く文脈情報は貴重

ウェブサイトでのニュース発信を行っているシェアラボ編集部だが、実は取材を非常に重視している。動画での情報発信に取り組むメーカー各社の動きは非常にうれしく感じているものの(産業用機器全般に言えることだが)サイトではスペック情報や単発の事例が中心で、実際に関係者が説明する際に語ってくれる文脈や機微が表現されていない事が多い。

コロナ下でシェアラボ編集部も在宅中心に体制を切り替えて一年近くが経過したが、この「文脈や機微」を直接聞ける展示会が早く正常に開催され、多くの人でにぎわう世になれば、、と強く感じる。(幕張メッセに行く際にはよく立ち寄っていたバーガーキングがいつの間にか撤退してしまいました。寂しい限り。)

企業はゴーンイング・コンサーンの元、継続を宿命づけられている。逆風下でも企業の活動を止めるわけにはいかない。今までの方法で上手くいかない場合はやり方を変えるしかない。AM活用もその一つとして活用を検討していきたいところだ。

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シェアラボ編集部 | + posts

2019年の創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビュー実施。日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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