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その場で自分で誤差を図るノウハウ―国立産業技術研究所 計量標準総合センター

産業技術総合研究所インタビュー写真

TCT Japan 2020の会場で、国立産業技術総合研究所 計量標準総合センター(以下、産総研)のブースが目を引いた。3Dプリンターで造形する造形物の公差に関してどのような造形物を評価するべきか、は多くの製造現場や造形者が頭を悩ませる課題だ。精密なCTスキャンや3Dスキャンの設備を持たない造形者が、簡便に造形物を評価できる指標が求められている。

産総研ではそうした現場の声に着目して、造形物評価の研究を重ねてきたという。今回お話を頂いたのは、産総研の松崎氏と渡邊氏だ。

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計測技術のプロ集団によるクローズド・ループ・エンジニアリング

――公設試( 公設試験研究機関 )の産総研さんのブースに伺っています。このブースでは「3Dプリンターの高精度な使い方を探る」というテーマで展示がされています。お二人からお話を伺えればと思います。

「われわれは産総研の計量標準総合センターという部署にいます。 計量標準総合センター は3Dプリンターの部署ではなく、ものを計る、いわゆる計測という技術専門の部署です。計測の専門性と3Dプリンターを連携させたらいろいろなことが出来るんじゃないか、というプロジェクト(名称:3D3プロジェクト)を行っています。(松崎氏)」

計量標準総合センターでは、超精密な公差計測なども研究の一環として取り組んでいる。積層造形で造形される際の公差に関して、どのようなアプローチが最適か検討を重ねてきたという。

「造形物の誤差を評価し、設計値からどれくらいズレているのかを調べ、補正することで設計値により近づいた造形物を作るというクローズド・ループ・エンジニアリングの検証を試みました。具体的には評価用の器物を作り、それをマイクロメーターの技術やノギスといった身近にある測定器で評価し、その誤差を逆に歪ませてCADデータを作って再造形するという流れです。(渡邊氏)」

ユーザーの計測技術に寄り沿ったプロジェクト提案

実際に造形者が試行錯誤する際に、高度な機器ではなく手元で利用できるツールを利用して行える、等身大の計測方法にたどり着いた。

「評価用器物といっても、大きなものから小さなものまでいろいろあるんですね。測る時のものが複雑な形状をしていると、いろいろな情報を得られて高精度な計測ができますが、3Dプリンターのユーザーさん達は、計測の専門家ではないので、もう少し簡単に使える方法を考案しよう、ということでノギスやマイクロメーターで測る、ということに落ち着きました。造形物をノギスやマイクロメーターで測り、高校数学くらいの簡単な三角形の式を解いて角度や倍率にし、それを誤差という数字にして補正のソフトウェアに入力し、造形するときに歪む方向と逆方向にすることで、設計値通りの造形物を手に入れることが出来るのではないか、というのが3Dプロジェクトの提案していた実験方法なんですね。」

公設試としてのノウハウ提供

こうした取り組みは、個別の造形者のためのノウハウとして公開されているわけではない。実際に多くの相談に触れ、その都度解決策を提示していくことが求められる全国の公設試での対応ノウハウとしても提供されている。

「その実験方法を日本全国各地の公設試験研究機関様と協力して実践し、いろいろなデータが得られました。そして今度は民間企業様に情報を提供したり実践してもらおう、ということで今年度の活動をやっています。」

ただ単純にノウハウを開発して提供するだけではなく、さすが国立の研究機関である産総研だ。実際に検証も行っている。

「今回いくつかの3Dプリンターの企業様にもご協力頂きまして造形物の評価を行えました。また他にも無料でセミナーを開催し、造形誤差の測定を体感してもらいました。 今後も関西3Dプロジェクトのセミナーなども開催していく予定ですので、ご興味のある方はどうぞよろしくお願いいたします。 」

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ポスター展示だけだったが、同じデータを複数のサービスビューロに造形依頼し、その公差を計測したという。まさに複数サービスビューロを検証して、発注先を選定するメーカーの取り組みと同じプロセスを同じ手法で検証してみた今回の検証方法は、現場に役立つノウハウと言えるだろう。

今回のTCT Japan 2020でも計測機器の展示が大きく増えたが、実際の現場で積層造形で造形する造形者が増え、市場として成長している姿を反映した形と言える。今後は、現場で簡単に計測して許容範囲かどうかを判断していく機会が増えていくのではないだろうか。また、こうした取り組みの積み重ねが積層造形が現場に根付く際に必要なリテラシーとなっていくのだと感じた。

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