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「イタリア・デザイン×中国・3Dプリンティング」EVカー量産化

POINT

  • イタリアにデザインセンターを置く香港系企業XEVが中国の造形材料メーカーPolymakerと共同でLSEV(低速向け電気自動車)を量産化。
  • 時速70km、航続距離150㎞で販売価格は70万円~100万円。すでにイタリアの郵便局などから7000台の受注をうける。2019年度第二四半期から納品開始。
  • 専用シャーシに組み付ける外装部は造形範囲2000mm×1200mm×1000mmのFDM方式の大型プリンター で出力。3日で1台組み上がる。

LSEV(低速電気自動車)の7000台の生産に3Dプリンターを本格活用

イタリアにデザインセンターを置く香港の電気自動車のスタートアップ企業、XEVと中国の造形材料メーカーPolymakerが3Dプリンターで製造するLSEV(低速度向け電気自動車)「YOYO 」を 第2四半期から納品を始めるという 。(YOYOはイタリアで発表された車種名)

YOYO は、 長さが2582mm、幅 1500mm、高さ 1545mm、重量は550 kgの2人乗り小型電気自動車だ。最高時速は70km/h、航続距離は150kmとなっている。販売価格は1万ドル前後で、すでにヨーロッパから7000件の注文を受けている。5000件の注文はPoste Italiane(イタリアの郵便局)から、他の2000件の注文は、BNPパリバ系列の車両リース会社であるARVALからとのことだ。一台製造し組み立てるまでに3日程度。

造形資材メーカーpolymakerと共同開発

XEVはpolymakerの協力のもと、従来2000個以上で構成されるコンポーネント数を57個に集約、専用の数十種類のエンジニアリングプラスチック素材を開発、造形範囲2000mm×1200mm×1000mmのFDM方式の大型プリンターを用意し造形後の後加工も行うなどして、シャーシ、ガラス、シート以外のエクステリアは完全にpolymakerの造形素材をつかった3Dプリンターで造形している。

通常、自動車の新車開発には約3~5年かかるというが、XEVは新しいデザインを完成させるのに3~12か月しかかかっていない。 金型も起こさないこともあり、初期費用はかなり抑えられており、試算では投資コストは従来の製造方式よりも70%以上削減できているという。XEVはデザインセンタをイタリアに置き、中国に製造拠点を置いている。

3Dプリンターで造形するからできるカスタマイズの幅の広さを活用し直接販売を推進

今後はXEVが提供するEVのデザインデータを世界中の設計者が自由にアクセスできるプラットフォーム上で販売とカスタマイズを両立したスキームを整備する予定。誰でも参加できるカーデザイン市場として全世界に販売していくために 利益の30%をデザイナーに配分するというインセンティブも用意しているとのことだ。初期のディーラー開拓や継続的な販売奨励金などの管理を省き、直接ユーザーとつながっていく直接販売を推進する方針だという。

3Dプリンター活用とビジネスへのヒント

航続距離はミニキャブ・ミーブ・バンと同等の150kmとなるYOYOだが、価格面では大幅に安く「破壊的」なコストメリット (差額は100万円以上) がある。日本では車検制度の関係でYOYOがナンバーをすぐに取得できるかどうかは未知数な上 (キットカーなどによる 「自作」の自動車は認可のハードルが非常に高く海外で認可を得た自動車を並行輸入する方式 などを取らざるを得ないなど)、車両整備が可能な体制は検討が必要だが、安価なEVをサービスビューロが地方入札でYOYOを公用車として入札するなどすれば、価格面では大幅にメリットがあるため、落札できる未来もあるかもしれない。

最近では米ローカルモーターズがピザ宅配用車両を納品したり、LSEV(低速電気自動車)に関する世界的な市場が立ち上がりつつある。 日本でもLESV分野は注目されている市場で、郵便局が三菱の軽EV「ミニキャブ・ミーブ バン」を2019年から二年をかけて1200台導入したのは記憶に新しい。今後、宅配事業者が都市部での配送にLSEVの導入を本格的に始める可能性はある。

既存の商流にとらわれない新しい商品の勃興はおおきなビジネスチャンスにつながるかもしれない。

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編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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