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世界初!アップリサイクリングされた3Dプリントによる小型ヨット”ベルーガ”をミラノデザインウィークに出展

イタリアの3DプリンティングサービスビューローのCaracol社(以下、カラコル社)と、グリーンテクノロジービジネスのNextChem社(以下、ネクストケム社)は共同で、3Dプリントされた小型ヨットの船体プロトタイプ「Beluga(ベルーガ)/共同研究プロジェクト名)」を「ミラノデザインウィーク2021」に出展した。

この小型ヨットの船体は、ネクストケム社のリサイクル素材MyReplast™が使用され、カラコル社が得意とするサイズ制限がない6軸ロボットアームに独自開発した材料押出方式での3Dプリンターを使用して、ワンピースで製造された。大規模な3DプリントによるAM(アディティブ・マニュファクチャリング)の世界と、素材のアップサイクリングが提供する可能性に注目が集まる。

”ベルーガ”プロジェクトの狙いは何か


「ミラノデザインウィーク」は、イタリアのミラノ市の全域を使った世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」のことで、さまざまな出展が行われる。ブルガリやベルサーチなどの高級ブランドが美術館で展示を行なったり、ランボルギーニやレクサスのような高級車も出展する。そんな中に、廃材から作られた小型ヨットが出展され、そのメーカーであるカラコル社とネクストケム社のCEOが熱く議論した、その目的は何なのか。

昨日まで廃棄物だったものが、ネクストケム社のリサイクル技術でアップサイクリングされて優良な素材MyReplast™として蘇り、カラコル社の3Dプリント技術によって小型ヨットという形を得て命が吹き込まれる。その成果は高級ブランドに引けをとらない理想的な形状、使い勝手、さらには耐久性を実現しているはずだ。

従来のリサイクル/リユースの概念では、元の品質を超えることはなかった。むしろ、洋服が雑巾に生まれ変わる、新聞紙がトイレットペーパーに変わるようというダウンサイクリングが主流だった。ところが“ベルーガ”プロジェクトでは、金型を必要とせず、職人並みの造形が可能な3Dプリンティングによって、リサイクルする度に価値が高まる新しいサーキュラーエコノミーが生まれる。そこに投入されるのは人間のアイディアであり創造力で、自然エネルギーや再生可能エネルギーでなくてはならない。

年間40,000トンのリサイクルポリマーを供給

ネクストケム社のMyReplast™の生産プラントは、イタリアのブレシア県ベディッツォーレにある。このプラントは現在ヨーロッパで最大規模であり、年間約40,000トンのリサイクルポリマーを生産している。

革新的なアプローチ「アップサイクリング」

MyReplast™ は、従来のリサイクルとは異なり、化石由来のバージンポリマーと同様の化学的物理的特性と機械的特性を備えている。この革新的なアプローチはアップサイクリングと呼ばれる(価値が高まるリサイクルのこと)。さらに、顧客のニーズに基づいて配合を調整することで、目的の性能を得ることができるテーラーメードでもある。

サーキュラーエコノミーとは


従来型の「Linear Econony(直線型経済)」を転換したリサイクルを中心とする「Reuse Economy(リユース経済)」に対して、さらに進めた考え方が「Circular Economy(サーキュラー経済)」と位置付けられる。直線型経済では「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことである。そのためには、廃棄物を出さないデザインが重要になるため、循環型の製品設計は「サーキュラーデザイン」とも呼ばれる。

従来の小型ヨットの船体には、リサイクルしにくいグラスファイバー素材が使われることがあったが、“ベルーガ”プロジェクトでは MyReplast™ によってグラスファイバーの特性を超える「アップサイクリング」された「テーラーメード」な素材が提供された可能性が高い。

オランダ政府は「2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現する」という目標を掲げている。

オランダ政府 From a linear to a circular economy より引用

サーキュラーエコノミーには、エネルギーを使って人工的に廃棄物を資源化する方法と、バクテリア等の自然なエネルギーを使って地球規模で廃棄物を資源化する方法がある。ネクストケム社は前者のタイプである。日本には後者のタイプの企業があるので紹介する予定だ。

“ベルーガ”プロジェクトでは、カラコル社の3Dプリンターもネクストケム社のリサイクル設備も完全なグリーンエネルギーで稼働させて、完全にグリーンな社会を目指して欲しい。ヨットは自然エネルギーで動くグリーンな乗り物なのだから。

カラコル社

イタリア・ロマッツォを拠点とするの3Dプリンティングサービスビューロー。すべての高度な積層造形ソリューションのワンストップパートナーを標榜する。6軸ロボットアームを駆使し、独自の押出機を駆使し、サイズ制限のないプロトタイプを得意としている。

ネクストケム社

イタリアのエンジニアリング・テクノロジー企業 Maire Tecnimont S.p.A. の子会社。グリーン化、サーキュラーエコノミー、グリーングリーンの3つの活動領域で構成。リサイクルされた MyReplast™ 素材を提供している。

”ベルーガ”プロジェクト

メーカーとしてカラコル社とネクストケム社が参画し、パートナー企業としてeuroscatola社、Yacht Club Santo Stefano社、elli社、bombeer社の4社が関わっている。

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電機メーカー、デジタル地図ベンダーのソフトウエアエンジニア、サービス企画の経験を経て、コンサルティングファームのメンバーとして自動車会社の開発を支援する。予防医学を学び、幹細胞に興味を持つ。3Dプリンターで自身の車や家を作る時代がくることを夢に見ながら日々執筆に勤しむ。

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