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3Dプリンターを使った人工呼吸器開発に見る医療機器の認可問題~コロナ感染拡大を受けて~―新潟病院

ShareLab編集部は、今までさまざまな3Dプリンティング技術の活用事例を取り上げてきた。特に、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)拡大の影響下においてはマスク、医療用ゴーグルなど、医療に関わるさまざまな製品・機器が3Dプリンターによって生産されている。メディアでも医療機器開発に関わる情報は多く見て取れるものの、正式に国による認可・承認を受けて研究、開発、流通を行っている事例を目にすることは、未だ少ないのが現状ではないだろうか。

今回は、独立行政法人国立病院機構新潟病院(以下、新潟病院)によるCOVIDVENTILATOR PROJECTという、3Dプリント人工呼吸器モデルに関するプロジェクトをご紹介したい。本プロジェクトは、 3Dプリンターによる医療機器支援を目的に、医療機構や現在厚生労働省による承認を目指し進行している。

COVIDVENTILATOR PROJECT

プロジェクト概要

新潟病院の石北直之医師が発明した、3Dプリント人工呼吸器モデルの研究成果を無償で提供し、実用化しようとしている。当面は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)による審査と、厚生労働大臣による承認を得るための取り組みを行っているようだ。

何を目的としているか

どのような状況でも安定して動作するだけでなく、製造が簡便で、供給体制が整備でき、需給調整が容易であるというメリットを持つ3Dプリント人工呼吸器モデルを、国際的に通用する医療機器として確立することによって、「必要とする患者が人工呼吸器の支援で生命を維持できる」ことを目的としているようだ。

プロジェクトの変遷

もともと、本プロジェクトは2010年より研究は開始されていたものの、この度のコロナウイルスの感染拡大に伴い、世界中から問合せが殺到し、情報提供と実用化のためのプロジェクト発足が決定された経緯を持っている。

進捗報告から読み取れる3Dプリンターを使った医療機器開発の難しさ

無償ボランティアによる協力

本プロジェクトが進む中で、無償ボランディアによる人工呼吸器の出力協力も仰いでいる。協力の中身は、どのような機能を持った3Dプリンターが、人工呼吸器の出力に適しているかを知るためだったという。

プロジェクトチームがボランティア側にサンプルデータを送付し、さまざまな機種で実際に人工呼吸器を出力をしてもらっていたようだ。

医療機器の製造販売に関する国の法規制

しかし、サンプルデータを送付した後、プロジェクトチームにはボランティア側から「 3Dテストプリントは今後の人工呼吸器生産に向けた準備となるのか否か。どうすれば実際の人工呼吸器を作れるのか? 」といった問い合わせが多数あったという。

種明かしをしてしまうと、送付したサンプルデータは実際に人工呼吸器として動作出来るものではなかった、ということだ。(本モデルの発明者である石北直之医師の進捗報告より)

この背景として、国の法規制上、医療機器の製造販売について承認申請し、認可された団体・個人以外は、データを使用した人工呼吸器を製造販売・流通してはいけない、という事情があった。そのため、プロジェクトチームとしては、 実際に人工呼吸器として動作出来るデータではなく、サンプルデータを無償ボランティアに送らざるを得なかったというわけだ。

*  *  *

国からの認可が必要であり、法規制をクリアする必要がある。また医療機器は生命維持に直接関係するため 、実際の現場で使えるようになるまで、関連団体による審査が必要。この他にも、法規制が絡むため外部メンバーの巻き込みの難易度の高さ、膨大な研究資金など、数え上げればキリがない。

しかし昨今では厚生労働省が、消毒液の代わりに濃度の高いアルコールの使用を認めるなど、製品不足を解消するために特例措置が出される事例もある。コロナ禍で、人工呼吸器などの医療機器の不足も取り沙汰される中、そこにも何らかの特例措置が出される可能性があるのではないだろうか。ShareLab編集部としては、大きな可能性を秘めているデジタルのモノづくりの歩みが止まることなく、よい方向に動き続けることを期待している。本件も続報があれば積極的にお伝えしていく。

本プロジェクトは現在も進行中であり、YouTubeでは人工呼吸器の長時間耐久テストの様子が見れる。ぜひ、本プロジェクトの動向と合わせてご覧いただきたい。

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