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無人の3Dプリンター工場!?加速する中国3Dプリント市場の今

博理科技が建設中の3Dプリンターのスマート工場(出典:36Kr Japan)

今や世界中で使用されている3Dプリンター。材料の性能やプリント速度、コストといった課題は残るものの、その市場は2025年には約60兆円にまで成長すると見込まれている。製造業をはじめとする各種企業のほか、教育現場や家庭などにも3Dプリンターの導入が進んでいる。

3Dプリントの最大の市場は欧米だが、近年ではアジア太平洋地域、特に中国で、3Dプリンターの開発や導入が活発化している。

今回は、加速する中国3Dプリント市場の今にスポットを当てる。

博理科技が光造形プリントの無人工場を建設

中国で高速光造形3Dプリント事業を手がける「博理科技(Polly Polymer)」は、中国・安徽(あんき)省に3Dプリンターのスマート工場を建設している(本記事冒頭の画像参照)。

本工場の特徴は、3Dプリンターを用いた生産フローをクラウド経由で制御できる点だ。遠隔制御が可能なので現地での人手が不要となり、「ダークファクトリー(照明が不要な工場)」が実現する。また、クラウドを活用することで生産性も向上するという。

具体的に、どのようにして生産性が向上するのだろうか。靴の大規模生産でよく採用される「射出成形(合成樹脂などの材料を溶かし、あらかじめ製造した金型に流し込んで冷やし固める製造方法)」と比較してみよう。

例えば、射出成形で新しい靴をつくる場合、90タイプ以上の金型を作製しなければならないこともある。金型をつくるだけで1ヶ月以上かかる計算だ。さらに金型作製後には試作などの準備も必要であり、工場での生産開始までにはトータルで約2ヶ月かかるという。

一方、今回のスマート工場で同じように靴をつくる場合、クラウド上のデータと同期するだけでこの事前準備が瞬時に完了する。射出成形と比較して、迅速に生産を開始できるのだ。

今回のスマート工場では、生産ラインを複製することで生産能力を容易に拡大できる。日用品、医療、工業用品、航空宇宙分野などさまざまな領域への応用が可能だという。

博理科技とは

博理科技が3Dプリントした日用品(出典:36Kr Japan)

博理科技の設立は2017年。高速光造形3Dプリントに関連する材料や設備の研究開発、ソフトウエア開発などを法人向けに展開している。創業1年目にして1千万元(約1億7000万円)超の売上高を達成し、それ以降は毎年200%の速度で成長している。

博理科技の強みは、「新たなプリント材料の開発」「プリント速度の高速化」だ。同社は、中国ではじめて3Dプリント材料に関する研究所を設立。同研究所で開発した素材を使用して、従来の3Dプリンターの100倍のプリント速度を誇るHAS(Hindered Asynchronous Light Synthesis)3Dプリント技術を生み出した。

中国3Dプリント市場の発展

現在、3Dプリント市場を牽引しているのは欧米だ。しかし、今後は中国やアジア市場の急成長が期待されている。実際、中国3Dプリント市場の成長率は世界平均を大きく上回っているという。

また、中国で出願される3Dプリンター関連の特許数も年々増加している。2020年までの公開特許総数は中国が1位であり、2位のアメリカに大きな差をつけている。

3Dプリンターに関する公開された特許公報件数の推移(出典:アイアール技術者教育研究所)

中国のなかでも3Dプリンターに関する企業が多く集まるのが、「中国のシリコンバレー」とよばれる広東省深セン市だ。深セン市は1980年に市の一部が経済特区に指定されて以降、ものづくり都市として急速な発展を続けている。深セン市では、3Dプリンターの技術も加速度的に発展しているという。

こういった中国3Dプリント市場の発展に目をつけ、日本の中小企業と中国の3Dプリンターメーカーとをつなげるコンサルティングサービスを行う企業も出てきている。北九州市で2018年に創業した株式会社ブーリアンは、深セン市の3Dプリンターメーカーとのネットワークを構築。2019年には、深セン市のパートナー企業と協働で製造した部品を日本企業に納入した。2020年には、パートナー企業が開発する3Dプリンターを日本企業に販売する予定だという。

深セン市のパートナー企業が大型3Dプリンターで製造したテーブル(出典:ブーリアン)

急速に発展している、中国3Dプリント市場。そんな中国から、現在の3Dプリント業界における課題を解決する革新的な技術が生まれるかもしれない。

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化学系大学院を卒業後に組込みエンジニアとして勤務。現在はフリーランス特許翻訳者、技術系ライター、技術リサーチャーとして活動中。難しい技術を分かりやすく伝えるのが得意。

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