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Carbon社の最新事例「JINSはNeuron4Dをどのように産み出したのか?」―JSR主催ウェビナーレポート

Carbon社の3Dプリンターとは

DLS方式を採用しているM2プリンター

今回Neuron4Dに用いられたCarbon社の3Dプリンター M2プリンターについて、ウェビナー講演では伺いきれなかったテクノロジー、導入事例などをJSRの銅木氏に追加でお伺いすることができた。

綺麗で繊細な連続造形が可能

Carbon社の3Dプリンターは、光と熱のハイブリッドを利用するプロセスに特徴があります。まず従来の光造形と近い方式で光で形を作り、そこに熱を当てて機械特性を付与します。肝としてはやはり光の部分で、デジタルミラーを使った面露光に加え、酸素を使ったトリックが用いられており連続的に造形出来るのが特徴です。(JSR株式会社 Carbon事業推進部 銅木 氏)

CarbonのM2プリンターの造形プロセスについては、先ほど紹介したATRUS社が分かりやすい動画を公開しているので、以下をご覧いただきたい。

提供元:株式会社アトラス公式Webサイト

M2プリンターの一番の特長は、綺麗で繊細な造形が可能ということである。DLS(Digital Light Synthesis)方式という光と熱を駆使するデジタル光合成プロセス造形方式を採用している。DLS方式は独自の造形技術「CLIP(Continuous Liquid Interface Production)」が活用されており、FDM方式など他の造形方式に見られるような一層一層を順番に積み重ねて造形するのではなく、連続して積層できる。(まるでもともとレジンの液槽に沈んでいた造形物をゆっくりと引き上げるように、光と共に造形される姿がSF的な印象を与える。)

酸素透過性の窓で酸素を通し、UV硬化樹脂に光の照射で固め、プラットフォームを引き上げていく形での成形という、光と酸素のバランスを保つ仕組みにより、この連続積層を実現している。酸素が通り酸素濃度が高くなると、樹脂が硬化せずにくっつかないという特性を生かし、造形物の底部分が浮いた状況で硬化できるため、連続した積層が可能で従来よりも短時間で造形できる。

国内の産業用途でも増えてきた導入事例

銅木氏によるとCarbon社の3Dプリンターは海外ではRiddellのアメフト用ヘルメットやAirpodsのカスタムカバーの造形に用いられたりと豊富なカスタマイズの事例が多く、最近は国内でも産業用途での導入事例も増えてきたとのこと。

Carbon社3Dプリンターが使われているRiddellのアメフト用ヘルメット
Carbon社3Dプリンターが使われているRiddellのアメフト用ヘルメット(Carbon社公式Webサイトより引用)

国内事例であれば、NITTOKU株式会社のRFIDのタグの造形にCarbon社の3Dプリンターが用いられている

「NITTOKU 株式会社は、FA機器に用いられるRFID(非接触ICタグ)を使った製造工程や物流工程のデータ連携で有名な企業ですが、同社の特注対応品にはCarbon社の3Dプリンターが利用されています。利用シーンによって耐熱性や耐候性を求められるRFIDを要件に合わせて造形できる点でリードタイムの短縮に貢献していると伺っています。」(JSR株式会社 Carbon事業推進部 銅木 氏)

また、直近だと山本光学株式会社のスポーツアイウェアブランド「SWANSスワンズ)」のアイガードにもDLS方式のCarbon社の3Dプリンターが用いられており、銅木氏曰くAM技術の特性を活かすことができた好例となったとのこと。このアイガードは2019年バレーボールワールドカップにて鍋谷選手が着用していたこと話題にもなった。その後、世界初の3Dプリンタアイガード「Guardian Fit」として発表された。3Dプリンターだからこその設計がなされており、安全性、優れたフィット感と通気性を併せ持つ製品が実現されている。

購入後の強力な利用サポートを含んだサブスクサービス

Carbon社の3Dプリンターでもう一つ特筆すべきこととして、購入後の利用サポートを含んだサブスクリプション契約が挙げられる。サブスクリプション契約は、年間725万円で機材の利用料とサポート費用を含んでおり、サポート内容は機材利用方法の説明にとどまらず、Carbon社の持つDfAM向け設計ツールを使った支援が受けられる点が特徴的だ。

ラティス構造を実現するDfAM向け設計ソフトウェア

Carbon社は、3Dプリンターを動かすソフトウェアとは別に、自社独自で「カーボン・ラティス・エンジン」と呼ばれるラティス構造を設計データに落とし込むソフトウェアを開発している。同ソフトウェアを用いることで二次元図面上の圧縮曲線(compression curve)を元に、ラティス構造を設計データに落とし込むことができるという。

このソフトウェアは利用者には開放されないが、サポートの一環で設計データへの落とし込みを受けることが可能だという。あくまでも設計の主体は利用者側にあるとは言え、強力なソフトウェア処理をCarbon側で対応してくれる点は、積層造形に初めて取り組む利用者には心強いだろう。Carbon社ではラティスエンジン以外にも、テクスチャに関するエンジンも保有しており、こちらは利用者側で活用できるという。

発売前の設計データをCarbon社と共有することが前提となるため、利用のハードルは低くはないが、アディダスのミッドソールをはじめ世界中で量産を支援してきた同社のサポートは魅力的といえるだろう。

今後の展望について

“日本人の丁寧さ”を生かした3Dプリンター活用に見る今後の可能性

最後に、日本のものづくりが直面している課題や今後の展望についてお話をいただいた。

「“日本人の丁寧さ”を生かした3Dプリンター活用を行っていきたいし、そこに今後の可能性を感じています。具体的には出力後の工程、材料の取り扱いにおいて日本人の丁寧さが活きてくるシーンがあると思います。また、J Eyewear Labとして今後も新しい技術の導入を、積極的に推進していく事で、今までより特定のニーズに応えるようなプロダクトの開発も進めていきたいと考えています。」(JINS J Eyewear Lab 浅田氏、中屋氏)


AM技術を用いた製造シーンは、試作品だけでなく最終製品まで拡がりはじめている。世界的には巨額の資金調達を実施したユニコーン企業として知られるCarbon社だが、その真価は『量産を志向』している点だ。JINSという国内屈指の知名度を誇る眼鏡ブランドが他に先んじて取り組み始めている中、実践した事は今後の大き採用した好事例ではないだろうか。自社が抱えている課題を解決したりブランドを表現するために、他社などと組むオープンイノベーションと呼ばれる成功事例の一つとも言えるだろう。

JINSですら、当初は3Dプリンターによる造形物を品質評価基準を含め社内で評価する体制は存在せず、苦労した話があったように、誰しも新しい技術を採用し、評価・検証までサイクルを回していくのは初めての挑戦となり、その壁は高く分厚いだろう。しかし、イノベーションの重要性を理解し、今回のような事例を日々キャッチアップすることこそが第一歩となるのではないだろうか。また、JSRやCarbonのようなその壁を一緒に乗り越えてくれるパートナーを見つけることが次の大きなステップとなるだろう。

今回のNeuron4Dの事例は、そんな企業のチャレンジを後押しするものとなったと言える。

関連情報

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シェアラボ編集部 | + posts

3Dプリンタ―の”先進っぽさ”を感じさせる作りに男心をくすぐられる毎日。さまざまな業界にて活用されるアディティブ・マニュファクチャリングの今をお届けします!最近のニュースは、鳥を飼い始めたこと。

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