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ShareLab NEWSハイライト記事 ー 2023年1月

BMF記事

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。そこでShareLab(シェアラボ)編集部では月に1回、その月で何があったかをまとめるハイライト記事をまとめている。2023年1月は印象的な知らせがいくつもあったので、注目トピックスという形で、ご紹介していく。また勢いがある建築、バイオ、などは個別に記事をご紹介していきたい。

<AM市場動向>

国内3Dプリンター市場動向と規模:矢野経済研究所の所感と業界展望を聞く

国内3Dプリンター市場動向と規模:矢野経済研究所の所感と業界展望を聞く

日本国内の3Dプリンター出荷台数を調査しているのが、矢野経済研究所の小山氏だ。小山氏によると毎年1万台弱の3Dプリンターが日本国内で出荷されている。数字は横ばいだが、着実に稼働数が増えているといえるだろう。

「デスクトップタイプは順調に出荷が進み成長しました。反対に、投資の先行きが不透明になったことで、本来はもっと伸びて欲しい産業用の3Dプリンターは商談がストップしたものもあるなど、出荷台数を思うように伸ばせなかったのが実情」(小山氏)

という事で、より広い層に3Dプリンターが広がっているといえそうだ。2022年以降の見通しに関して聞いた。

「3Dプリンターの有力メーカーは海外に多いです。そのため、日本でも、設備投資の意欲はあるものの、円安の影響を受けているようにも見受けられます。そういったことから、2022年の市場の動向も、昨年とそれほど変化はなかったのではないかと見ています。3DCADの販売が伸びてきているのに伴い、3Dプリンターの出荷も順調に増えるのではと予測しています。ただ、ネックになるのは人材の問題で、3Dプリンターを使える人材の育成が急務です。」(小山氏)

そういった意味では3DCADを導入し使いこなしている企業と、受託加工する際にも2DCADをベースに作業している下請け企業の間にある温度差を解消していく必要があるだろう。受託加工メーカーでも3Dプリンターを便利に使いこなせる人材の育成がメリットとして感じられる具体的事例がもっともっと必要なのかもしれない。

無印良品に「3Dプリンタ工房」開設 ― 良品計画・ファブラボ品川

無印良品に「3Dプリンタ工房」開設 ― 良品計画・ファブラボ品川

3Dプリンターという言葉の認知度は相当なもので、主婦やタクシーの運転手でも知っている言葉だ。一方で実際に3Dプリンター製の部品や、3Dプリンター自体にふれたことがある人はごく一部に限られるのが今の日本の実情だった。

こうした動きが大きく変わりつつあると感じられたのが、無印良品の店舗で3Dプリンターを実際に置き、店舗で作った部品に触れることができるモデル店舗の登場だ。自助具への取り組みで一目置かれているファブラボ品川が無印良品を展開する良品計画とコラボレーションし、生活を少し便利にする3Dプリンター製製品の販売を行うというニュースが飛び込んできた。

団塊世代とともに成長してきた無印良品が都市型店舗で打ち出すのは、シンプルな暮らしとその暮らしに溶け込み、豊かにするちょっとした工夫である点は非常に興味深い。「もういろいろ持っているから沢山はいらない。良いものを少しだけほしい」という都市型シニアのニーズを上手くとらえたサービスのように思う。フラグシップ店舗だけの実験的な取り組みなのか、今後全国に展開されていく一つの型に成長していくのかを見守っていきたい。

マークフォージド・ジャパンが国内ドローン市場への参入を表明

マークフォージド・ジャパンが国内ドローン市場への参入を表明

アルミ同等の強度を誇り製造現場の治具ニーズを形にしていく立役者となったマークフォージド。その次なるターゲットがドローン市場だという。軽量で強度が求められ、用途によって種類が多く、付帯備品も必要になってくるというドローンの商品性と柔軟なモノづくりが可能な3Dプリンターの親和性が高い。筐体や羽根以外にも、多用途で用いられるがゆえに付帯設備が必要となる点にも成長の余地がある。

羽根を保護するフライトガードや、ジンバル付きの高性能カメラ、高層ビルなどの点検用リード、農薬などの散布を行う場合の薬剤容器固定など、ドローンに装備を追加するためのアタッチメントは、今後ますます種類を増えていくことが予測される。用途に応じて安全設備や拡張のための部品が複数種類必要となることも考えると、3Dプリンターとドローンの関係は今後も深まっていくことだろう。

ほぼ24時間稼働!高さ1㎜、幅数㎜の微細な造形を3Dプリンターで内製―ヒロセ電機

ほぼ24時間稼働!高さ1㎜、幅数㎜の微細な造形を3Dプリンターで内製 ― ヒロセ電機

車載機器、IoT家電、ウェアラブルデバイスなど電子部品の重要性は今後もとどまることを知らない。そんな電子部品の製品実装に欠かすことができないのがコネクタだ。ヒロセ電機は、コネクタの製造に取り組むグローバルメーカーである。多様化なコネクタの開発に3Dプリンターを活用することで生産性を向上させている。

複数種類の3Dプリンターを用途に応じて使い分けているヒロセ電機だが、ほぼ24時間365日稼働させている機種があるという。それがBMFの3Dプリンターだ。マイクロミリメートルの精度で造形を行うことができる同社の3Dプリンターは、コネクターと基板をつなぐ金属部品を嵌合させることも可能な精度がだせる唯一の選択肢だったという。

試作品開発を内製化できたことで、大きなコストダウンとリードタイムの短縮を両立させることができたヒロセ電機の取り組みは電子部品に取り組む企業にとって必見の取り組みだといえるだろう。

サントリーのグループ企業が世界初の「液体に3Dデザインを描く技術」を開発

サントリーのグループ企業が世界初の「液体に3Dデザインを描く技術」を開発

3Dプリンティング技術は次々と進歩を遂げている。そんな技術進歩の一つが液体に3Dデザインを描く技術だ。飲食店向けにカフェラテにアートを印刷する技術などはすでに商用化されているが、液体の中に
立体的な絵を書くことができる技術は斬新だ。用途開発のためにパートナーも募っているので、今後の新しい市場をサントリーと一緒に開拓できるよいチャンスとなっている。

金属内部に磁気コードを埋め込む偽造防止技術を開発 ― テキサスA&M大学

金属内部に磁気コードを埋め込む偽造防止技術を開発 ― テキサスA&M大学

3Dプリンターは、3Dデータがあれば、同じ部品を製造できる。もちろん材質や造形条件に大きく品質が左右されるわけだが、設計者や製造するメーカーの権利を保証する取り組みは今後の課題だ。3DCADでデザインされた部品の設計データは、一度配布されてしまうと、利用を禁止することが困難となる。紙幣の偽造を防ぐためにオムロンが開発したオムロンリング(コピー機や画像加工ソフトがオムロンリングによる偽造判定を採用した紙幣を読み込めない、再加工できないようにしている)のように、3Dデータに関しても何らかの対策は必要となってくる。

テキサスA&M大学の研究グループはこうした偽造防止を目的としたトレーサビリティの確保のために、製品データにIDを付与し、造形した構造体に埋め込む方式を開発した。具体的には、金属材料に磁気コードを埋め込むことで、非接触で判定できる仕組みを検証している。製造時のロット番号を埋め込む他に、MESで管理されるような製造時の条件などを記録するほか、販売記録やメンテナンス記録などもクラウドと連携することで管理が可能になるなど、偽造判定以外にも利用用途は広がりそうだ。

MITが発電用ガスタービンを3Dプリントするための新たな熱処理方法を考案

MITが発電用ガスタービンを3Dプリントするための新たな熱処理方法を考案

3Dプリンティング技術を活用した部品製造の生産性や品質を高める取り組みは、3Dプリンターの装置性能だけで実現するものではない。熱処理を加えることで、品質を向上させる取り組みに関して、MITが発電所のガスタービンを想定して技術開発を行ったという。

海外のアカデミアでは、こうした装置の使いこなしなどもアカデミアが開発に取り組む。データ取りを地道に行い、最適な加工条件を見つける取り組みは日本企業のお家芸でもあるが、デジタルな技術を使って効率化する点では、アカデミアの力を借りることも必要になってくるだろう。材料探索と同様に最適なパラメーター開発に産学連携がもっと取り入れられるべきかもしれない。

FabLab SENDAI-FLATがデジタル工作百科事典サイト「Materials Archive」を開設

FabLab SENDAI-FLATがデジタル工作百科事典サイト「Materials Archive」を開設

まだまだ新しい技術領域であるAM分野には、知識の共有が必要だ。そうした取り組みがさまざまな場で行われている。

FabLab仙台がデジタル工作技術に関する百科事典サイトを開設しているので紹介しておく。一つのサイトで全てを網羅するほどの作業時間やコンテンツ制作に必要なコストを捻出するのは難しいが、こうした知識をより集め、役割分担したり、体系的に整備する取り組みは必要と思われる。

<建設業界動向>

建設用3Dプリンター本格導入に向けた実証試験を続けるプラント建設企業 ― 日揮グループ

建設用3Dプリンター本格導入に向けた実証試験を続けるプラント建設企業 ― 日揮グループ

2022年は建築用3Dプリンターにとって大きな躍進の1年となったが、2023年もその勢いは止まらない。住宅以外にも、生産設備であるプラント製造分野でも取り組みが始まっている。日揮グループのプレスリリースからは精力的に検証を行う姿が伺われるが、こうした取り組みが2023年にも加速することは間違いない。

建設用3Dプリンターに適用できる環境配慮コンクリートを日本で初めて開発-大成建設

建設用3Dプリンターに適用できる環境配慮コンクリートを日本で初めて開発-大成建設

海外から設備を買う動き以外にも、国内企業がすぐれた材料技術を3Dプリンター活用のために行っていることにも触れておく必要があるだろう。大成建設は、環境配慮型のコンクリート材料を日本で初めて3Dプリンター用に開発した。

製造コストという観点では採用できない材料も、ESG経営が注目される中で、広報・ブランディング予算や研究予算であれば利用可能になる。実需の顕在化までに時間がかかる国内のサステナブル材料開発に関しても、取り組みの火を絶やさないような導入シナリオとして、サステナビリティやCo2削減などの取り組みを行っていくことが重要になるだろう。

セレンディクスが国内最大となる大型3DプリンターをWINSUN社から導入

セレンディクスが国内最大となる大型3DプリンターをWINSUN社から導入

社会課題解決型ベンチャー企業としてセレンディクスは各種のビジネスコンテストやピッチでヴィジョンを繰り返し語っている。その構想がますます存在感を増してきた。毎月のように報じているが、毎回着実に進展が認められる。今回は国内最大級の大型装置を購入した点と、中国企業からの資金提供を受け入れたことをご紹介しておきたい。

<バイオ・フード>

ゲル3Dプリントで人体の柔らかさを再現する「やわらか記念写真」を実施 ― 株式会社人間、山形大学

ゲル3Dプリントで人体の柔らかさを再現する「やわらか記念写真」を実施 ― 株式会社人間、山形大学

山形大学によるやわらかい材料のAM造形を身近に引き寄せて表現したのが今回の記事で紹介している取り組みだ。

株式会社人間と山形大学 ソフト&ウェットマター工学研究室 は、ゲル3Dプリンターで赤ちゃんの肌の柔らかさを再現する取り組みを行った。2022年12月3日(土)~25日(日)には、再現された質感を体感できるイベント「やわらか記念写真 – 赤ちゃんの感触を残す記念撮影」を開催した。 赤ちゃんの頬の柔らかさをゲル3Dプリンターで再現し、赤ちゃんの写真を印刷したパックに封入することで感触を残すという画期的な取り組みが注目を集めた。

培養肉を用いてチキンナゲットを生産 ― Matrix F.T.

培養肉を用いてチキンナゲットを生産 ― Matrix F.T.

例年、クリスマスのシーズンに鶏肉を製造したがるフード系AM企業だが、今年はチキンナゲットをマトリックス社が製造した。やはり身近な食材を製造できる点は理解しやすいといえるだろう。

<医療>

マウスピース矯正ブランド「DPEARL」がネット調査で1位を獲得 ― 株式会社フィルダクト

マウスピース矯正ブランド「DPEARL」がネット調査で1位を獲得 ― 株式会社フィルダクト

歯科矯正は大きな市場がある。ShareLabでも過去複数社の取り組みを取り上げてきたが、自社のネット調査で業界ナンバーワンになったと語る株式会社フィルダクトについてご紹介する必要があるだろう。

日進月歩と毎月書いているわけだが、その背景には、何年も前から3DプリンターやAM製造に着目し、研究を行っている人がいるという点は心強い。あとは実際のニーズにあてはめた技術葛生ができるかにかかってくる。今後の続報にも期待したい。

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