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ShareLab NEWSハイライト記事 ー 2023年2月

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。そこでShareLab(シェアラボ)編集部では月に1回、その月で何があったかをまとめるハイライト記事をまとめている。2023年2月は、1月に米国であった展示会に合わせて登場した新サービスや装置の他、国内最大級のAM展示会TCT Japan2023が開催され、注目するべき製品やサービスの紹介もあった。TCTに関しては別途レポート記事をご用意したので、見ていただきたいが、さまざまなトピックスをご紹介していきたい。

速報! TCT Japan会場で見つけた最新トピックス ― TCT Japan 2023レポート

2023年2月1日(水)から3日(金)まで東京ビッグサイトで開催されている3Dプリンティング & AM技術の総合展「TCT Japan 2023」。主催者情報では、初日はコロナ前水準の9,000人に迫る来場者を迎えた(同時開催展含む)。数多くの注目トピックスがあるため、以下の報告記事を別途ご用意している。是非ご覧いただきたい。

速報! TCT Japan会場で見つけた最新トピックス ― TCT Japan 2023レポート第1弾

海外発の新工法から金属3Dプリントの後処理まで ― TCT Japan 2023レポート第2弾

 

粉末樹脂3Dプリンターの後処理工程に関する業務提携を発表 ― YAM・EOS Japan

EOS Electro Optical Systems Japan株式会社株式会社YOKOITOのAM関連事業部門 Yokoito Additive Manufacturing(YAM)が、「粉末樹脂3Dプリンタ造形品の仕上げ工程の自動化および表面処理技術」に関する協力に合意した。既に協力関係にあるDyeMansionも合わせた3社により、製造から後処理工程まで一貫したシステムを国内でも提供し、粉末樹脂3Dプリントの普及を目指す。ポイントはエコシステムだ。EOSは世界最大級のAM装置メーカーでそのノウハウも膨大な蓄積がある。しかし協業という形で後処理のDyeMansionYOKOITOと関係を結んでいる。自社だけで完結させずに、業界を作っていく企業の生態系を作ろうとする取り組みには学ぶべき点が多いだろう。

粉末樹脂3Dプリンターの後処理工程に関する業務提携を発表 ― YAM・EOS Japan

Formlabsが3Dプリントを自動化する拡張機能「Automation Ecosystem」の国内向け発送の開始を発表

アメリカの3DプリンターメーカーFormlabs社が、自社のSLA方式3Dプリンター「Form3シリーズ」でのプリントを自動化するエコシステム「Automation Ecosystem」の国内向け発送を2023年4月中旬に開始することを発表した。同製品は今年の1月5日に米国ラスベガスで開催されたCESに合わせて発表されたことで注目を集めている。3Dプリンターは意外とアナログな作業を必要とすることが多い。材料の補給、造形終了後の取り外し、簡単なボタン操作など、製造時に人が操作しなくてはいけない思わぬ作業がある。そのため、人手不足を解決するための自働化に貢献する装置とは言いつつも、人の手が必要になる。Formlabsが得意とする光造形卓上プリンターは、材料の進化や装置性能の向上でその生産能力を高めていたが、装置を30台、50台と並べると、並行生産しても人出が必要となり、24時間稼働というわけにはいかない状況があった。FromAutoはこうした連続製造がちょっとしたことでできない現状を打開するための自働化支援装置だ。日本で実物がお目見えするのは4月以降ときいているので、その際に詳しくご紹介できればと思う。

Formlabsが3Dプリントを自動化する拡張機能「Automation Ecosystem」の国内向け発送の開始を発表

日本HPが「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」の国内販売を発表

「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」 は、白色パーツを高品質かつ安定的に製造できる産業用3Dプリンティングソリューションだ。同ソリューションは、HP独自の造形方式である 「HP Multi Jet Fusionテクノロジー」 と組み合わせることで、1パーツあたりの製造コスト削減や製造予測性の向上などが見込める。樹脂部品の量産を考える際に選択肢から外すことができないHPのJetFusionシリーズの最新機種では、白い部品を造形可能だ。エージェントとHPが呼ぶ光硬化性のバインダー溶液の改良によって、黒色を極限まで押さえた部品造形が可能になった。白い部品を造形できるということは、着色時に鮮やかな発色が可能になることを意味する。最終製品を造形できるということは、こうした後工程での着色なども考慮できる必要がある。着実に世界で根を張る最終部品製造を見据えた機能改善だと言えるだろう。

日本HPが「HP Jet Fusion 5420Wソリューション」の国内販売を発表

Stratasysが白黒カラー3Dプリンター「J55 Pro」を日本・韓国限定で発売

3DプリンターメーカーのStratasys(以下、ストラタシス)が、試作品製造向けのフルカラー3Dプリンター「J55 Pro」を日本・韓国限定で発売することを発表した。既存のフルカラー3Dプリンター「J55」の白黒カラー印刷限定モデルとなる。「J55 Pro」は既に受注を開始しており、2023年2月17日から出荷開始予定とのこと。中国勢が政治的にも逆境にある中で、韓国企業のAMへの関心は高いと聞く。また日本企業も水面下で情報収集や研究の取り組みを超えた次の一歩を模索している中で、白い部品を造形できることへの必要性が高かったといえるのだろう。

Stratasysが白黒カラー3Dプリンター「J55 Pro」を日本・韓国限定で発売

ニコンがドイツの金属3Dプリンターメーカー「SLM Solutions」の買収完了を発表

株式会社ニコンが、ドイツの金属3DプリンターメーカーSLM Solutions社の買収を完了したと23年1月20日に発表した。今回の買収は、ニコンが有する航空宇宙やエネルギー産業、自動車産業などの顧客に向けて、3Dプリンティングという新たな価値を提供するためのものだとしている。新規事業として産業用装置で売上を立てることは並大抵のことではない。技術要素の蓄積があり
独自の特色を持った金属3Dプリンターを発売しているが、すでに多くの知財を押さえ、製品の導入実績を持つ有力企業を買収したことで、売上とともに業界での地盤を確たるものにしたと言えるだろう。資本蓄積がある大企業ならではのM&Aという闘い方で、日本勢が世界に伍する闘いを挑む姿には、世界中からの注目が集まっていることだろう。

ニコンがドイツの金属3Dプリンターメーカー「SLM Solutions」の買収完了を発表

 

JMCが大型CTスキャンサービスを開始、1m越えの大型スキャンにも対応可能

株式会社JMC(以下、JMC)は、非破壊検査やリバースエンジニアリングを目的とした1m超の大型構造物を対象とするCTスキャンサービスを開始した。自動車や航空機のエンジンなど、大型部品の検査・測定を請け負う。JMCはクラシックカーなどの部品製造にも力を入れているが、大きい部品の製造や品質保証へのニーズは高い。AMはプロセス保証をベースに品質の管理を行うため、開発時に整備した製造条件の再現が重要な意味を持つ。開発時にCTスキャンなどの非破壊検査を繰り返してレシピを整備するために、非破壊検査を行うことができる装置とノウハウは今後2,3年後に登場するAM最終部品の製造に大きな貢献を果たすことだろう。

JMCが大型CTスキャンサービスを開始、1m越えの大型スキャンにも対応可能

3Dプリンターのヘッドスピード高速化を実現するアップグレードキットを販売開始 ― 日本3Dプリンター

「Hyper Speed Upgrade Kit」とは、3Dプリンター「Raise 3D Pro3 シリーズ」の既存部品を換装して使用するアップグレードキットである。既存部品を換装することで、ヘッド加速度を最大10倍に引き上げ、ヘッドスピードは従来の約5倍となる350mm/sまで高速化することが可能となる。人は使い慣れた装置への愛着をもつものだ。こうしたモディファイ部品を提供することは、買い替えを抑制する有効な一手になるかもしれない。

3Dプリンターのヘッドスピード高速化を実現するアップグレードキットを販売開始 ― 日本3Dプリンター

Prusa Researchがさまざまなブランドの3Dデータを無料公開

チェコの3DプリンターメーカーPrusa Research社が、自社コミュニティサイト「Printables.com」内でさまざまなブランドの3Dデータを公開した。3Dデータはすべて無料で提供されており、3Dプリンターがあれば誰でも簡単にダウンロードして自宅で印刷できる。
Prusa Research社のコミュニティサイト「Printables.com」内では、一般ユーザーとPrusa Research社に加え、新たに8つのブランドが3Dデータを公開している。ユーザー自身による部品の修理にブランド側が理解を示すことは、ユーザーへのアピールとなる。また、交換部品だけでなく自社製品のアクセサリーパーツや新製品の開発に注力できることにもつながる。加えて、交換部品のための在庫リスクも軽減できるメリットもあるだろう。
フィギュア造形用にゲーム関連の3Dデータが並ぶ他、自作PCを作ったことがある人にはおなじみのcoolermasterや、IoT開発時には欠かせないRaspberry Piのユーザーが実際に困って作った補給部品のデータが並ぶ。DIY強者たちが初期からお世話になったPrusaらしいラインナップだ。
こうした部品データの提供は、ブランディングの為に行われているわけだが、今後はストックフォトと同様に、一つのビジネスとして成長するだろう。

Prusa Researchがさまざまなブランドの3Dデータを無料公開

 

船橋市が全市立中学校27校に3Dプリンターを導入

千葉県船橋市の全市立中学校27校に樹脂3Dプリンターが導入されることが、令和5年1月13日に開催された船橋市の令和4年度第7回定例記者会見の資料で明らかになった。装置の導入費用は378万円ということだが、この導入の為に数年前から技術の担当教師は3Dプリンターでの授業に備えた講習を受けてきたという。令和6年度からは3Dプリンターを使った授業は必修ということで、全中学生が実際に操作し、3Dデータの作成や造形を学ぶ。学校のパソコンの事業と同じで、それだけでプログラマーが育成できるわけではないが、きっかけと道筋を整備するという意味で、今後10年、20年後のモノづくり人材の増加を推し進めることは間違いないはずだ。

船橋市が全市立中学校27校に3Dプリンターを導入

3Dプリンターや大型加工機の時間貸しサービスを開始 – ロボコム・アンド・エフエイコム

ロボットを活用した自動化システムを提供するロボコム・アンド・エフエイコム株式会社(以下、R&F社)が、福島県南相馬市にある自社工場で、産業用の3Dプリンターや大型加工機の時間貸しサービスを開始した。1時間単位で個人法人を問わず機器のレンタルが可能。設備の貸し出しに加え、加工代行サービスも行う。同社はこれまで3Dプリント受託サービスも行ってきたが、設備レンタルという新たなサービス展開が始まることになる。所有から利用を志向して多くのニーズを開拓したサーバーサービスAWSのように専門性の高い機材を利用できる機会を活かす企業や開発者が増える可能性に期待したい。また海外のAM装置メーカーの中には、メーカーが自社運営するサービスビューロ内に、顧客の資産を預かり、運用するサービスを提供する取り組みもあると聞くし、オリックスレンテックとビーフルが取り組みを始めた定額造形サービスなどの取り組みなど、様々な形で外注製造を取り込む動きが生まれている。今後も所有か利用かの選択肢の多様化には注目したい。

3Dプリンターや大型加工機の時間貸しサービスを開始 – ロボコム・アンド・エフエイコム

「3D構造体食感ビュッフェ」取材レポート、下北沢で未知の食感を体験!

3D構造体食感ビュッフェというイベントが、フード3Dプリンターに取り組む有志によって実施されている。その目的は「表現のデータベースをつくること」だという。実際にフード3Dプリンターで造形された食材を試食する中で寄せられたフィードバックをもとに、未知の食感を自由自在に再現できる「食感ジェネレータ」を開発することにあるというのだ。ジェネレータとは、設定した条件に基づいてデータを自動生成するプログラムのことで、最近注目を集めているChatGPTなどのAIによる自動生成のことを指す。食感ジェネレータを開発するためには、さまざまな食感を表現するための元データが必要となる。一つの食感に対して多くの感想が集まるほど、データベースの精度も高くなる。そのため、イベントの冒頭では「食感を表現するために、皆さんには食感ソムリエになっていただきたいです」「最初に口に入れた時の噛みごたえと舌触りを確認し、次に飲み込んだあとの口の中に残った食感や舌触りがどのようなものかを表現してください」という説明があった。

「3D構造体食感ビュッフェ」取材レポート、下北沢で未知の食感を体験!

ShareLab編集部がニュースの発信を始めた2019年からかぞえて4年目を迎える2023年。年々AMに関するニュースの数は増え続けている。世界で活用される幅は増え、同じような取り組みの中にも進歩があり、用途の拡大がある。10年後には実際に身の回りにあるものの多くがAM造形品になっていると予感させるわけだが、その多くがいま開発途上にある。10年後から見ると今は一大ビジネスチャンスだ評される時期なのではないか。中国製、ベトナム製の製品を日常的に利用している日本市場だが、AM製部品でMade in Japan製品がどこまで復権できるか。装置や技術を利用する側の挑戦が、いま問われている。

 

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