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ShareLab NEWSハイライト記事ー2022年7月

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。そこでShareLab NEWS編集部が2022年7月を振り返り注目のトピックスをまとめた。2022年7月は盛りだくさんのニュースから厳選して注目するべき動向をお伝えしていきたい。2022年7月は35度を超える真夏の暑さが猛威を振るい日本国内でもコロナが再度感染者を増やした。そんな中ではあるが、3Dプリンティング技術に関連するニュースは衰えることをしらず、多くの事例報告や技術動向が見受けられた。

<2022年7月の業界動向>

ローカルなサプライチェーンの実現のために3Dプリンティング技術への注目あつまる

コロナ禍が教訓になりグローバル化したサプライチェーンへのアンチテーゼとしての地産地消、ローカルなサプライチェーンへの関心が世界中で高まっている。

米「AMフォワード」政策

米バイデン政権はAMフォワードという名称で、内需拡大に3Dプリンティング技術を活用する方針を示した。アメリカ応用科学技術研究機構 (ASTRO)が各種活動の推進役を務める中、アメリカ退役軍人省を中心とした教育プログラムの展開などを行っていく。また本プログラムに参画を表明しているAM活用先進企業が、自社の購買の一定比率にAM製造品の調達枠を設定すると発表している。

『AMフォワード』~バイデン米大統領が掲げる3Dプリンターを活用した内需拡大施策

日本でもローカルなサプライチェーンを支えるサービスビューロが台頭

ローカルなサプライチェーンに求められるのは変種変量生産への対応力だ。そういった意味で、受託製造を行うサービスビューロ側の対応力が向上していくことが求められる。受注活動が低迷し、AM製造のサービスビューロ事業の縮小や撤退を余儀なくされる企業もある中で、順調に受注を伸ばしている企業も頭角を現してきた。

30台以上工業用3Dプリンターを備えるサービスビューロ

世界各国で数十台、数百台の産業用3Dプリンターを備えたサービスビューロが立ち上がっているが、日本でも30台以上の3Dプリンターを保有するサービスビューロは存在する。その一つ、八十島プロシードがオンライン工場見学を行ったので、シェアラボ編集部でも参加してきた。その様子をご報告したい。産業用3Dプリンターは産業用製造装置だけあって、数千万円クラスの設備だ。30台以上製造装置を備えるサービスビューロは国内でもまだ少数。そういう意味でも最先端の生産設備を備える製造現場を目の当たりにできたまたとない機会だった。

日本最大級の産業用3Dプリンター活用工場を見学!八十島プロシードのオンライン工場見学

変種変量製造のための簡易型、型レス製造への取り組み

スワニーは小ロット製造で対応の範囲を広げる。ストラタシスの3Dプリンターを活用してデジタルABSなどの材料を使って数百ショット程度の射出成型に対応できる簡易型の設計や製造を提案してきた。今回CarbonのM2プリンターとクリーンルームを導入し、より対応範囲と材料を広げ最終部品製造も視野に入れるという。Carbonの魅力は最終部品製造の公開に積極的な姿勢とサポート体制の充実だが、国内でも微小部品の製造で年間10万点の製造を行っているというnittoku社などの取り組みもある。小型精密部品の筐体などの分野では有望な製造装置といえるかもしれない。

 

スワニーが金型レス量産サービスを開始

3Dモデルデータを用意するために必要なコトとは

3Dスキャニングに注目-3Dモデルが手元になくても3Dプリンターで造形するために。

3Dモデルをゼロから作るだけの時間はないが、3Dプリンターを使ってあの部品を造形したい。そんな場面は製造現場でもあるだろう。破損、欠品、他社部品への追加パーツを作りたいなど、さまざまな理由はあるだろうが、手元に3Dモデルがない場合に、威力を発揮するのが3Dスキャナーだ。図面がない部品を造形できるようになることで活用シーンが広がることが期待できる3Dスキャナーだが、実際に触ったことがある人は多くないのではないだろうか。シェアラボ編集部では、実際に3Dスキャナーを利用する体験会に参加してきたのでご報告したい。

3Dスキャナーを体験!モデリングいらずで現物からデータを起こすイベントに参加ー株式会社ミマキエンジニアリング

AMを使いこなすための教育は重要ーデンタル分野への取り組み

エキストラボールドのように企業から出向を受け入れ、技術移転を促進している企業もあるがまだまだ少数だ。どうやって3Dプリンターを自社事業に落とし込んでいくかを悩んでいる企業は少なくないだろう。群馬積層造形プラットフォームやひょうごメタルベルトコンソーシアムのように、中核施設をハブに、技術研鑽を行う取り組みも始まっているが、デンタル業界にむけて、学習プラットフォームの提供をはじめたFormlabsの存在もわすれてはならない。シェアの3割超をデンタル分野が占めるという光造形方式の老舗が提供する学習カリキュラムを紹介する。

Formlabs、歯科分野で3Dプリントを普及させるための教育プラットフォームを開始

<2022年7月の業界事例>

日本の自動車業界の巨人、トヨタも最終部品にAM製部品の導入を開始

トヨタ自動車は、全方位R&Dを行っている超巨大企業だが、3Dプリンターの活用でも先進的な取り組みを行っている。「赤字にならなければ儲けは問わない」と社長から取り組み指示があったともいわれている旧車部品の3Dプリンター製造がようやくプレスリリースされた。トヨタはソライズ、HPらとともに、旧車の樹脂部品を3Dプリンターで復刻する取り組みを行っていることを明らかにした。

廃番部品を3Dプリンターで造形

トヨタ自動車、HPの3Dプリンターを導入し、部品復刻生産へ

2022年7月は宇宙産業での事例が豊作

宇宙での居住空間へのアプローチ

NASAは、3Dプリントを用いて建設される月面前哨基地のデザインを発表した。開発には、宇宙技術設計機関であるAI SpaceFactoryも携わる。現在、地球上での建設テストを実施中だ。同様の取り組みは世界各地で活発に行われている。

NASAが月面前哨基地LINAのデザインを公開

デンマークのコペンハーゲンに拠点を構えるSAGA Space Architects社が、月面で暮らすための3Dプリンティング住居「ROSENBERG」の開発を進めている。いままでもグリーンランドなど北極圏での試作実験を積み重ねてきたが、最新モデルは2022年の9月までに建設予定だという。

月面で暮らすための3Dプリンター住居を開発

装置も打ち上げずに宇宙空間で創る!

宇宙に機材や資材を持ち込むには、地上からロケットで打ち上げる必要がある。その移送コストは想像を絶する高コストだ。人一人が打ち上げるには大きなコストがかかる。人間相当の質量の資材を打ち上げるためにかかる経費は数千万円ほどに上る。そのため、宇宙空間でロボットや建物を利用しようと考えると、現地で製造するという選択肢が現実味を帯びてくる。まさに3Dプリンターでロボットの脚部を造形しようという取り組みがおこなわれていたので、ご紹介しよう。

小惑星探査用の宇宙ロボットの製作に3Dプリンターを活用

<2022年7月の技術動向>

金属の付加造形領域のトピックス

廉価機でも金属付加造形ができる追加モジュールが登場

装置や造形材料の進展が日々起こっている。オランダのウルティメーカー社は数十万円台の樹脂3Dプリンターを製造販売しているが、金属造形が可能になるキットを提供開始した。残念ながら日本での提供予定はまだ未定だ。樹脂材料に金属粉を混錬させた材料を造形し、焼結炉で焼成させることで金属部品を造形する取り組みはすでに国内でも取り組みが始まっている。FDM方式を中心にこうしたとりくみで、セラミックス材料やシリカ材料が今後造形可能になっていく可能性がある。

Ultimakerが3Dプリンター「S5」で、金属造形を可能にするキットの提供を開始

ステンレス粉末で国内の研究グループが成果発表

名古屋工業大学と東京都立産業技術研究センターの共同研究グループが、従来の粉末と比べ、小さいエネルギー密度で高速造形が可能かつ、強度面も向上した3Dプリンター用ステンレス鋼粉末を開発した。材料の品質が造形の品質に大きく影響を与える。材料の形状・粒径がそろっていること、少ないエネルギーで造形できることは材料にとって非常に重要な性能だ。将来的には骨接合材、脊髄固定器具、人工関節、骨頭など、医療分野への応用が期待される。

金属3Dプリンター用ステンレス鋼粉末で新材料を開発

2022年7月の総括

3Dプリンターを活用した最終部品製造への取り組み事例が国内でも登場

3Dプリンターは射出成型や切削とは全くことなる工法だ。自由度が高いものの、再現性にかけたり、異方性がある。材料の物性も統一して比較できる規格がなく、メーカー各社の提示するデーターシートも各社基準がばらばらだ。そんな中ではあるが、自社独自のモノサシを形成し、果敢に取り組む先駆者たちの事例が公になり始めた。最終部品製造に足りうる品質と自動車会社大手トヨタが認め、一部の保守部品製造で取り組みを開始するほか、製造受託を行うサービスビューロの規模も成長を続けている。いち早くニーズをとらえ、サービスに落とし込んでいくことができれば、未踏の市場を得ることができるかもしれない。

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