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ShareLab NEWSハイライト記事ー2022年8月

毎日こまめに3Dプリンター関連のニュースを追いかけるには、時間と労力が必要だ。そこでShareLab NEWS編集部が2022年8月を振り返り注目のトピックスをまとめた。2022年8月は日本国内でこそコロナ禍はそろそろ落ち着きを見せてきたが、海外でのサプライチェーンへの影響はまだ残る。ロシアのウクライナ侵攻の影響も依然存在し、資源供給への不安はぬぐえない。そんな中電力ひっ迫で計画停電の可能性もささやかれた8月だった。そんな中ではあるが、3Dプリンティング技術に関連するニュースは衰えることを知らず、多くの事例報告や技術動向が見受けられた。

<2022年8月の業界動向>

この10数年で3Dプリンターと製造業の関係は変わったか

3Dプリンターの現実と可能性を最も知っているのは、実際に3Dプリンターを利用してビジネスをしている現場だ。2022年現在、日本の製造業にどのように3Dプリンターが受け入れられているか。最初期から造形サービスを手掛け上場に導いた第一人者であるJMC社の渡邊大知社長に現状と可能性を伺った。

3Dイノベーションハブで実現したいコト:AMの可能性と現実の正しい理解促進ーJMC渡邊社長

海外市場でも大型M&Aが続く

コロナによる中国を中心としたサプライチェーンの停滞とロシアのウクライナ侵攻で資源に大きな影響が出たことで大きな影響を受けている景気動向だが、3Dプリンター業界の大手各社も大きな影響を受けている。景気が思わしくない時期は、資金力に優れる企業はM&Aによる拡大を図る絶好のタイミングとなる。手持ちのキャッシュで人材と顧客基盤と技術資産を手に入れる各社の動向を見ていく。

Xometryが3Dプリント受託プラットフォーム事業で売上を大幅に伸ばす

日本での知名度は低いが、ゾーメトリ―はサービスビューロと加工を依頼したいユーザー企業を結ぶプラットフォームサービスを展開している。同じく受託加工マッチングプラットフォームを展開するThomas.netを買収し、大きく業績を伸ばした。

3D Systemsが量産志向の回転するビルドプレート方式をもつ独3Dプリンターメーカーdp polarを買収

円状のビルドプレートが回転するというアプローチは、量産ラインを意識した機構で、いまは生産力に劣るとされている3Dプリンティング技術が今後大きく変わる可能性を体現している。既存の技術との融合がどのように起こっていくのか、注目していきたい。

2022年8月も住宅・建設分野での3Dプリンティング技術活用事例が続く

間違いなく2022年は日本の住宅・建設用3Dプリンター業界にとって潮目が変わった年となるだろう。建築基準法などへの対応が進み、注目するべき事例が毎月のように報告されている。

日本初!宿泊施設をコンクリート3Dプリンターで造形ー會澤高圧コンクリート株式会社

実際に予約すれば宿泊できる宿泊施設が登場!今後こうしたホテルがインターネットで気軽に借りることができるようになっていく予感。

すでに100件以上の注文実績あり!住宅模型をオンラインで注文できるサービスーDMM.com

3Dプリンターで家を作る未来はこれからの話だが、住宅模型はすでにかなりの数作られている。
自動車と一緒で、自分が購入した家のミニチュアがもらえるのはうれしいもの。

3Dプリント建築用断熱材として廃棄衣類をリユースーMAT一級建築事務所・ワークスタジオ

この後に触れるリサイクル関連ニュースでもあるが、住宅建材にリサイクル材料を活用する取り組みが登場。3Dプリンターで住宅を造形する時代には、防音、断熱、強度強化、モジュール式の電気・水道・ガスインフラの整備など、追随して多くの要素がエコシステムに加わるはず。

あえて3Dプリンターを利用する理由になりえるリサイクル

生産性や品質に課題がある中でも、3Dプリンターをあえて採用する動機はなにか?その答えの一つがエコ、循環型社会の実現、リサイクルだ。気候変動が無視できない要素になっている中、単純なエコではなく、より社会にとって付加価値を図るアップサイクルの取り組みが次々と報告されるようになってきた。

三井化学が野外イベントの使い捨てカップごみを大型3Dプリンターでアップサイクル

リサイクルよりも付加価値が高い形で、コストや手間が見合うモノづくりに挑戦していくアップサイクルは、リサイクル自体が環境負荷が高いという矛盾を解決しようという取り組みでもある。三井化学は、アサヒビール関連会社とともに、野外開催のビールフェスタで廃棄されるプラスチックのコップを改修し、リサイクルし椅子を造形した。ごみを高付加価値に転用するアップサイクルの事例。

3Dプリント建築用断熱材として廃棄衣類をリユースーMAT一級建築事務所・ワークスタジオ

先ほども取り上げたが再度登場した衣服のリサイクルの取り組み。「いいものは結局お得です」という言葉は本当にその通りなのだけれども、お財布にやさしいファストファッションをついつい買ってしまうことで、家じゅうに着ない服があふれるご家庭もあることだろう。うちは違う、という方もシーズンごとに多品種を製造するために破棄される服の多さは、私たちが目にしないだけで相当数存在している事実はご存じだろう。こうしたロスを無駄にせず、転用することで価値あるものにする取り組みがより低コストでより経済合理性のある取り組みに成長させていく試みは今後も登場するだろう。

次世代電池の量産にも活用される3Dプリンター

全固体電池やナトリウム電池、EV化推進や電力不足に対応するために電池性能は今後も注目されるトピックスだ。その開発、製造にも3Dプリンターは活用されている。

米ベンチャーSakuuがシリコンバレーに3Dプリント製の固体電池生産工場を開設

2016年創業の全固体電池製造ベンチャーのSakuu社は、シリコンバレーに3Dプリント技術を使った全固体電池量産の新工場を建設した。同社は世界に先駆けて3Dプリント技術をつかった全固体電池(solid-state battery)の製造に取り組み2023年には量産に入る構えだ。79,000平方フィートにもなる広大な施設の建設費用は数百万ドル規模になる。今回のSakuu社の工場設備増設は、2023年からの量産のための設備投資で、すでに量産案件を受注しているとみられる。Sakuuの全固体電池開発には、開発パートナーとして2019年に全個体電池製造ベンチャーのKercelに出資した武藤精密との連携もあるということで、日本車や日本の製造業とも関連性が期待できるかもしれない。

2022年8月の総括

全個体電池の製造ラインや衣服のリサイクルに活用されたり、、、多様化する3Dプリンティング技術

3Dプリンターという言葉でひとくくりにできないほど多様な活用用途があるために、AM技術や3Dプリンティング技術と呼ばれる3Dプリンター活用。現状の日本では、製造業の最先端分野で活用されているだけにとどまっているが、住宅などより消費者に身近な分野にも活用が広がってきた。またdp polarのように生産設備として量産を視野に生産ラインに組み込まれる装置の未来を描く企業も存在する。今後も活用用途が広がり、影響範囲を広げていく未来が見えた8月だった。

 

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