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2020年12月開催のTCT Japanレポート

2020年12月9日から11日まで開催されたTCT Japanの来場者数が公開された。併設する展示会をすべて含んだ数字だが、3日間で10,615人だったという。例年4万人強を集めるイベントだけに、4分の1という集客結果にはコロナの影響の大きさを感じざるを得ないが、去年まで見かけない企業/団体ブースや常連企業でも面白い展示を行っているブースもあり、コロナは怖いが、偶発的な出会いはやはり展示会ならではの魅力だ。

すでに事前の見どころとしても紹介したが、「金属3Dプリンターに後付けする性能強化パーツ」や「樹脂のJIS規格策定」など、新しいトピックスも散見された2020年12月開催のTCTJapan。実際に会場を回って撮影した会場写真を中心にその他の展示に関しても紹介していく。(冒頭画像はTRUMPFブースで撮影したアルミ製衛星用アンテナのサンプル。)

イグアス(XYZプリンティング取扱い)

今回のTCTでは、入り口すぐ左手に大きく展開していたイグアスxyzプリンティング代理店)とリコージャパンの展示が一際目を引いた。
   デスクトップ機主体だったxyzだが、産業用3Dプリンターのラインナップも2018年から展開。

リコージャパン(マークフォージド、ストラタシス、HP、AON、Sinteritなど取扱い)

紙のプリンターでは競合するHPの3Dプリンターも扱うリコージャパン。HPのフルカラー造形機での出力サンプル。

新しく取り扱いがはじまった、SLS方式の樹脂3Dプリンターとしては小型なSinterit社のLisaPro。サポート材が不要で複雑な形状を造形可能。

Pantoneカラーに対応し、外部アプリケーションを使うと木材や布などのテクスチャも再現できるストラタシスのJ55。

ストラタシス独自のPOLYJET方式(いわゆるマテリアルジェット方式)と専用材料で透明感のある部品も造形可能。

ビンやガラス容器のような透明な部品だけではなく着色した透明部品なども造形できる。試作造形時には異なるテクスチャを同時に造形できるため、おなじ形状の試作品で木目仕上げ、布地仕上げ、クリアパーツなどを同時に造形し、比較できるという。最近フォルクスワーゲンも同じPolyJet方式の機種であるJ850を2台導入している。

工業グレードのスーパーエンプラも造形可能なAON

機械的強度だけではなく、耐熱性や耐薬品性も実現できるスーパーエンプラは治工具分野でも用途が多く見込める。

FromLabs(フォームラブズ)

FormLabsの3Lがとうとう登場。造形領域のサイズが大きくなった上に、レーザーも2基に増設されより大きく早い。 

3つの部品にわかれているが、大人が両手でもって使うようなスコップも造形できる。

協栄産業

技術系商社の協栄産業は3Dシステムズ、BMFジャパン、三菱電機などの3Dプリンターを取り扱う。

参考展示だが、三菱電機が国産金属AMプリンターを2機種展示。ワイヤーDED方式(三菱電機)と電子ビーム方式(多田電機)の造形サンプルがあった。どちらもニアネットシェイプ(後加工を入れて完成させることを前提に、おおよその形を素早く低コストに造形する事)し、早く大きいものをローコストで作る用途での活用を見込む。

フィンを見ると、ざらついた肌ではあるがかなり薄物も対応していることがわかる。

研磨すると、プロペラのように光沢仕上げまで持っていける。どうせ後加工をいれるのであれば、精度よりも速さ、大きさが大事という割り切りは納得感がある。

NTTザムテクノロジーズ

NTTザムテクノロジーはNTTデータエンジニアリングシステムズからAM事業を分社化したNTTデータ100%子会社のAM専業会社だ。5年後に100億円の売上を目指す。ドイツの3DプリンターメーカーEOSの日本総代理店として樹脂3機種、金属3機種の販売のほか、導入支援としてゆりかごから墓場までのAM推進をすすめる。今回のTCTJapanでは、研磨装置の展示がされていた。「何個から量産というか定義は難しい部分ではありますが、日本でも樹脂部品に関しては量産が始まっています。そこで課題となる後加工に関して内製化したいというニーズは一定以上あるので、研磨も内製化できる装置を展示しています」とのこと。

DLyte装置は炭素鋼、ステンレス鋼、ハイス鋼、コバルト、クロム、チタン、ニッケル、貴金属の切削、研磨ができるとのこと。

砂状の研磨粉が入った釜に研磨したい部品を投入し混ぜることで、積層痕をなくしたり、表面を仕上げる研磨機。現状の3Dプリンターでは、一部の試作用機を除き、後加工が多かれ少なかれ発生するのが現状なので、いかに加工プロセス全体を最適化するかという大局的な視点が求められる模様。単一の部品に着目するのではなく、複数部品を統合し、その仕上げや試験工程まで含めて、比較するとコストや調達時間の面で大きなメリットを得られる。導入する設備の初期費用やランニングコストが大きく結果を左右するが、何を作るためにどんな機材を導入するのが最適なのかという大きな命題に現実解を出してくれるパートナーは重要な存在だ。NTTザムテクノロジーズがめざす「ゆりかごから墓場まで」は、そうした意味合いを指しているとのことだ。

TRUMPF(トルンプ)

トルンプはグリーンレーザーで金属を造形できる装置を展開している。光を利用するレーザーは銅のような光の反射率が高い金属の造形が苦手だといわれているが、光の波長で反射されにくいグリーンレーザーを用いる事で、銅も造形できるという仕組みだという。

上から撮影。

ご厚意で、ドアップでの撮影をさせていただいた。

銅で複雑な造形を実現。

  こうした複雑な熱交換器を造形できる事で、高額な産業用機器の性能向上や代替部品として活用用途が期待できるかもしれない。

通信衛星用アンテナとのことだが、非常に軽い。

非常に複雑な形状のアルミ製衛星用アンテナ。20時間で4つ造形できるとのこと。手のひらサイズだが、非常に軽く、すこし強く握ってもゆがみ等の不安感はなかった。

少し角度を変えて撮影。肌はつるつるではないが、でこぼこした感触はない。

まだ日本での導入事例はないとのことだが、近々公表できるかも、ということだった。

久宝金属製作所

国産3Dプリンターを独自に開発した久宝金属製作所。「まだ3Dプリンターの造形精度が良くなかった時代に、改良して試作につかっていました。『そんなにきれいになるなら、うちも欲しい』というお声がある程度あったので、他社の3Dプリンターの改造ではなく、自社の3Dプリンターを開発しようと思って取り組みを始めました(久宝金属製作所:古川社長)」社長のなんでもつくってみるというスタンスからはじまり、4年かけて400台を販売。「営業をそれほどやっているわけではありません。お客さまの紹介で広がっていったような感触です(同氏)」というがモノづくり企業として『開発者がみずからサポートする』スタンスは頼もしい。「お客さんにむりやりうちのものを使ってほしいとは思いません。何をやりたいかによって導入するべき機種は異なります。」という静かだが熱い語り口が印象的だった。

FDM方式の樹脂3Dプリンターでよく利用されるフィラメントの線径は0.4㎜が多いというが、久宝製作所ではテクダイヤ製の世界最小レベル0.1㎜口径のノズルを利用。
細かい造形も得意とする。価格は30万円台からという事だ

現物を見て、触って、話を聞くのが展示会の醍醐味

オンライン開催に魅力はわかりやすいウェビナーを何度でも関係者に見てもらえる点だ。間違いなく一緒に話を聞いたほうが伝えやすいので、社内への情報共有という意味では、オンライン開催に分がある。しかし、実際に会場に足を運び、展示物を見て、展示ブースの説明員と話をすることで得られる情報量は魅力的だし、ブースでは展示されていない、「実際のところ」に関する生の情報を耳にできるのは、やはりリアルな展示会ならではの魅力だ。まだまだ各社ハイブリッド開催に関して手探りでどう提供していくのか、どう参加していくのか迷いながら進めている中かもしれないが、ご事情が許せば、リアルな会場での情報収集も行っていくべきだろう。私たちシェアラボ編集部では今回記事にはできなかった展示ブースも実際にこの目で見て、現場の熱気に触れてきた。

引き続き2021年2月に開催される日本モノづくりワールドにも現地取材を予定している。コロナ感染拡大の動きもあるので、ちょっと現地に行けない、という方は、こちらのリンクにあるお問い合わせフォームから「こんなことを見てきてほしい、調べてみてほしい」というリクエストを私たちに送っていただきたい。全てにお答えできるかどうかはわからないが、取材の中でお答えできるものもあると思う。

 

 

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