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2024年次世代3Dプリンター展東京速報①

2024年6月19日から21日にかけて東京ビッグサイトで行われた日本最大級の3Dプリンター展示会、次世代3Dプリンター展。69,717名の来場者が足を運んだ現地では、来場者の積極的な情報収集が行われていた。併設展も含めて3DプリンターやAMに関連するブースを3回に分けてお届けする。今回の記事では会場を回った丸岡がご報告する。

製品の説明主体だったコロナ前の出展傾向と比べると、実際に設計や製造の現場で活用できるヒントを打ち出そうというブースが増えた印象だ。業務のヒントにつながる発見をいくつか共有したい。

エイチティー・エル 金属極小超精密金属受託製造サービス開始

株式会社エイチ・ティー・エルは3Dプリンター、半導体製造関連製品の販売・サービスを主業とし、AMは金属電子ビームPBFのWAYLAND、レーザーPBFのaconity、DEDのRPM、金属粉末VBNの輸入販売とサポートを行う。

今回の注目展示は、ドイツ3DmicroPRINT社の極小超精密金属受託製造サービスの展示で、5μm以下の微粉末と20μmのレーサースポット径により、他ではできない小ささ、精密さの部品がSUS316L中心に多種金属ででき、組み立てレス一体化可動部品もできる。

「先日ドイツの工場も見学し、すばらしい技術です。先日航空宇宙関連展示会で展示し、人だかりができるほど注目されました。」(エイチ・ティー・エル 保田3DP事業部長)

国内外で金属AMは装置も部品も大型化の競争となっている傾向にあり、注目も高いが、極小精密部品造形の技術や装置は少ない一方、AMの利点を活かせる需要は国内でも大きいのではないだろうか。

3DSystems 樹脂・ワックスAMでインダイレクト製造提案

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパンは今回ブースに3Dプリンター製品実機を展示せず、既存工法で製造するための型などを作る「インダイレクト製造」用途を提案する、これまでにない展示を行った。

例としてEXT 1070 Titan Pelletプリンターと炭素短繊維強化樹脂での積層切削ハイブリッド加工にて欧州鉄道車両部品の樹脂真空シート成形型(左上写真)や鋳造砂型木型(左下写真)、SLAでセラミック精密鋳造焼失中子を製造、ProJet樹脂でシリコーン注入成形後に壊して取り出すエッグシェル型、ジュエリー石膏鋳造ロストワックスをMJP300Wで直接製造のサンプルと説明を展示。

「もちろんAMで部品をダイレクト製造するのは目指すところですが、既存工法との材料の違いなど課題もあり、既存と同じ材料で製造できるインダイレクト製造にも取り組みましょういう提案に特化した展示にしました。」(スリーディー・システムズ・ジャパン 並木セールスディレクター)

このように3Dプリンターの世界的なトップメーカーが、3Dプリンター実機を一切展示せずに、また比較的身近で取り組みやすい用途提案に絞った展示としたことは、海外の展示会では見られる傾向で、日本でもAMの売り手、買い手の認識や意識の転換期にあることを示す展示だと感じた。

金属AMと仕上げ加工一貫受託サービス 流体研磨や密度品質保証も

株式会社キャステック(埼玉県加須市)は金属AMと仕上げ加工まで一貫の受託製造サービスを行っている。金属AM装置はレーザーPBF EOS M 2機種を所有し、他社提携でDEDなどの加工もできる。今回のトピックスとして、型冷却内部3D冷却水路の内面を、専用装置で流体研磨加工を行っている。金属PBF造形表面の粗さでは流体抵抗により流量が減り冷却性能不足となる課題を解決するそうだ。研磨後カットモデルサンプル(左上写真)の流体研磨用の出入り口のメネジは造形後タッピング加工とのこと。

株式会社ODEC(和歌山県有田市)は3DSystemsとSodickの金属LPBF装置でステンレスを中心に多種の金属AM受託加工紹介で出展。特に金属AMで問題となる密度を測定管理し、品質保証付きのサービスを提供している。実用部品活用事例として、高エネルギー光伝送ファイバーコネクターをSUS316Lで製造(左下写真)。冷却の必要がある部員で、コネクター内部にらせん冷却水間を作り要求を満たしたとのこと。

これらの企業のように、主業として金属加工の高い技術を活かしながら金属AM製造で新たなビジネスを作り、実用用途に応じてAMの課題を独自技術で解決することで付加価値や競争力を上げている例は、機械要素技術展の方でも見られ、これは日本の製造業に合ったモデルであり、先行企業を参考に挑戦する企業が増えることを願いたい。

Stratasys 樹脂MEXプリンター新製品 F3300 国内初実機展示

丸紅情報システムズ株式会社はStratasysおよびDesktopMetalの正規販売代理店で、装置販売、サポート、受託造形サービスも行っている。

今回のトピックスとして、Stratasysの樹脂MEXプリンター新製品F3300を実機初展示した(左上写真)。マルチ解像度/マルチカラー対応の4つのエクストルーダー(左下写真)をリニア駆動で造形高速化、同社初採用のオートツールチェンジャ―機能とオートキャリブレーション により精度と再現性が向上。4つの除湿機能付き独立材料庫とフィラメントスプール(4100cc)で材料交換の回数を減らし、長時間の連続稼働が可能。

樹脂MEXプリンターの老舗であるストラタシスが、「製造用」新世代FDMとして開発した製品であり、樹脂も汎用から炭素短繊維強化PA12や高耐熱難燃性PEIが使え、 用途範囲は広く、今後日本での評価と活用に注目したい。

日本市場参入中国企業 金属粉末製造から造形まで受託サービス提供

Avimetal AM Tech Co., Ltd.は中国北京近郊に本社を置く金属AM粉末製造から受託製造をワンストップでサービスする企業。日本初出展で代理店募集も今回の出展目的(左上写真)。

同社は2015年設立、工場面積5万平米以上、シニアエンジニア10名以上、研究開発チーム80以上、従業員数300名以上で、自社開発の粉末製造装置、2機種金属レーザーPBF装置で金属粉末材料から造形まで一貫の受託サービスを日本で販売したいとのことだ。

今回の展示では中国最大とされるVPP樹脂3Dプリンターメーカー・プリントサービス会社でもあるUnionTech/Unionfab(左下写真)など中国のメーカー、受託製造サービス、材料製造販売企業が日本市場参入を目指し初出展するブースが複数あった。当然様々な課題はあると思うが、AMを使う企業にとって最適な装置、材料、サービスを選ぶ選択肢が増えることは良いことであり、AM産業が急速に発展している中国の企業規模や技術レベルは高まっており、先入観を持たず評価し、活用するのがよいのではないだろうか。

9月、11月にも展示会開催!会場でサンプルを手に取って確認しよう

シェアラボ編集部では、活況を呈した次世代3Dプリンター展に関しては続報もご用意する予定だ。記事で気になる装置や造形サンプルがあればぜひ実際に実機を見て、サンプルを手に取って触りながら、担当者と話ををしてみていただきたい。進化を続ける3Dプリンターのリアルを体感することができるだろう。

2024年9月のフォームネクストフォーラム東京、2024年11月のJIMTOF、2025年2月のTCT Japanと首都圏での3Dプリンター関連展示会が続く。ご検討されたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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