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フォームネクストフォーラム 東京 2022の企業セミナーから見えてくる業界の最先端

世界中のニュースを見て日々実感できるように、3Dプリンターを支える技術は日々進化しており、応用事例も毎日尽きることがない。だが実際に自社でも購入できる装置や材料でどこまでなにができるのか。情報収集を続ける読者諸氏の疑問に答える一つの回答が、日本でマーケティングを行う各社のセミナーだ。シェアラボ編集部では、フォームネクストフォーラム 東京 2022(formnext TOKYO)の企業セミナーに密着。そこで解説されている各分野の専門企業の最新動向を簡単にまとめてみた。

DED方式の金属積層造形による金型補修、表面コーティング(DMG森精機)

DMG森精機(株)田中氏
DMG森精機(株)田中氏

DMG森精機(株)田中氏から、DMG森精機のDED方式金属3Dプリンターに関してのプレゼンがあった。同社のDED方式金属3Dプリンターは赤色レーザーで金属粉末(ステンレス系、インコネル、青銅など)を積層造形できる。シールドガスとしてはアルゴンを使い、コーティングにはステライトや超硬合金40%+Niバインダ60%を用いる。コーティング、修理、バイメタル(銅+インコネルなど)での造形ができることは、他社の金属3Dプリンターには見られない特徴だ。硬度が必要なプレス金型の補修や入念な熱管理が必要な鍛造トリムなどでであるが、大幅なリードタイム短縮が期待される。

超高解像度3Dプリント技術PμSL(ピュースル)と第2世代プリンターS230の紹介(BMF Japan)

BMF Japan(株)の田村氏からは、BMFの超微細3Dプリンターのプレゼンが行われた。同社はMITの技術をもとに2019年10月に創業後、アメリカ・ヨーロッパ・日本に拠点を構え活動をおこなう。独自の超高解像度3Dプリント技術 PμSL(ピュースル)は投影型マイクロリソグラフィーであり、2μmの解像度で3Dプリントが可能だ。

 BMF Japan(株)の田村氏
BMF Japan(株)の田村氏

PμSLは自社開発されたレンズと樹脂材料を用いており、BMFが取り扱う3Dプリンター「S230」では、2μmという目で見えないサイズのマイクロラティス構造の実現や、マイクロニードル、マイクロフルイディクス、超マイクロデバイスなどの超高精細なマイクロ造形が可能。

日本でも続々と進む、Carbonプリンタによる最終製品への適用事例(JSR)

JSRはCarbonに出資し、日本でのマーケティング活動を担当している。現在Carbonの3Dプリンターは世界で1,100台が稼働している。 Carbonの3Dプリンターは独自開発の液体樹脂材料を光で造形し熱で硬化させることに特徴がある。対応材料は12種類あり、試作品や治具だけではなく最終部品の量産にも活用されている。

Carbon/JSR(株)銅木氏
Carbon/JSR(株)銅木氏

欧米では、アディダスなどのスポーツシューズ、アメフトのヘルメット、アイスホッケーのヘルメット、自転車のサドル、フォードやランボルギーニの車のパーツなどに用いられている。日本では、JiNS(眼鏡)、ニットク(RFID)、EIZO(モニター製造用治具)、SWANS(スポーツゴーグル)、ラピセラ(メディカルインソール)、WHILL(車いす)、ヤマハ(バイクのパッド)、スワニー(小児用歩行装具)に加えて、クリモト、アネストイワタ、デンサンシステム、大工大×山本光学、ハイフン×アトラス、など多くの実績を有している

カーボンファイバー3Dプリンターの台頭と応用事例(マークフォージド・ジャパン)

マークフォージド・ジャパン(株)トーマス・パン氏
マークフォージド・ジャパン(株)トーマス・パン氏

CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)は、軽量で強度が高いなどメリットが多々ある。しかし、コストが高い、成形にノウハウが必要、異方性がある、厚肉を作るのが難しいなどデメリットも多かった。これらの欠点を乗り越えて、デジタル化することで、誰でも簡単にCFRPを用いることができるようにしたのがマークフォージドの3Dプリンターだ。マークフォージドが開発したCFRP配合のナイロン樹脂は強度面でアルミ同等。アルミ切削部品を樹脂3Dプリンターで代替できる点が多くの製造現場に受け入れられつつある。ドローンの軽量化などでも採用実績が多い。 CFRP対応3Dプリンターとしては、MarkTwo、X7、FX20などがある。最新モデルは500×400mmの大きさのモデルを作成可能になった。

APA法を用いたAMに最適な金属粉末( 森村商事)

森村商事(株)中室 氏

森村商事は森村グループ(TOTO、日本特殊陶業など)の商社であり、3Dプリンティング分野では、AP&C社の金属材料を扱っている。AP&C社とは2014年からAMに用いる金属粉末を取引開始し、2015年に協業。2016年に AP&C社がGEの傘下になった以降も取引を続けてきた。

AP&Cはカナダのモントリオールで年間1,200トンのAM材料を生産しており、そのうち800トンがチタン系粉末。その他にニッケル系粉末を200トン、アルミニウム系粉末を100トン生産している。チタン系粉末については世界的なリーダーであり、プラズマ技術を利用したガスアトマイズ法で粉末材料を生産している。AMに適した金属粉末には化学組成、かさ密度、広がり性、粒子形状、内部気孔率などがキーとなるパラメーターがあり様々な材質を作り分けている。

光造形法由来のマイクロカーボン3Dプリンティング(東北大学)

東北大学の工藤氏がカリフォルニア工科大学在籍時に、3Dプリンティングにカーボンを組み合わせることに着想。現在では30μmや25μm、15μmの解像度のマイクロ3Dプリンティングを研究している。

カーボン材料の造形には、DIW(ダイレクト・インク・ライティング)と熱分解法という造形方法がある。DIWはゲル状インクの中にグラフェンなどの炭素を混ぜ込んだものを3Dプリンティングしたのちに、グラフェンなどの炭素だけ残すという造形方法。熱分解法は樹脂をSLA方式などで成形し、熱分解して炭素だけを残すという造形法である。

工藤氏らが採用しているのは熱分解法。造形されたカーボンは軽くて強く、電気を流す材料になる。ただし、弱点としては必ずしも強度が高いというわけではないという

完成したマイクロカーボンはナトリウムイオン電池の材料として用いることができる。将来的な展望としては、3Dプリンティングのための精度の良いカーボンを作り出す樹脂(熱分解時の歩留まり率の向上)の開発、3Dプリンティングのための装置(大きくて細かいものを作る装置)の開発、環境保護(熱分解後のガスの再利用、カーボン自体の再利用)を目指している。

量産グレードのUV硬化樹脂と造形技術(スリーディー・システムズ・ジャパン)

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパンの春日氏が登壇。3Dシステムズは35年前、光造形を用いたシステムを世界で最初に上市した。樹脂用の3Dプリンターも小型から超大型まで取り扱っている。SLA方式といっても、UV光の照射方法によって、モデルが沈み込んでいく方法と、天井に吊り上がっていく方法との2つに分かれる。

製造された樹脂硬化物は二次硬化として電子レンジのような熱と光を与える装置で加工することで、精度の良い製造物となる。最近は自動車の内装設備や住宅の内装装備に用いられている。国内に12種類のマテリアルがあり、要件に応じて選ぶことができる。新製品として透明性の高い材料もリリースしており、最近は自動車や家電、電子機器だけでなく玩具(ガチャガチャ用のミニチュア玩具)や眼鏡等のアイウェアにも用いられている。日本のユーザーからのリクエストが多いのは 300度を超える温度に耐える難燃性を持った樹脂とのこと。

大型造形から高精細造形まで多彩な応用が可能なUV樹脂(アルテック)

アルテック株式会社の渡邊氏が登壇。アルテックは1976年創業の産業機械の輸入商社。3Dプリンターの販売も行っている。取り扱っている3Dプリンターは、ポリジェット(インクジェット)方式、DLP方式、GDP方式を採用しており、フルカラーや大型造形に対応が可能。

同社が取り扱うストラタシス社のフルカラー造形はポリジェット方式を用いることで50万色以上の臨機応変な彩色を行うことができ、車のパーツや人体模型などに用いられている。また最新の技術により布地(0.2mm~2.5mm)にも3Dプリンティングすることもできるようになった。同技術はファッション関係だけでなく自動車業界、コンシューマープロダクト業界などからも注目されている。

おわりに:日本の3Dプリンター業界は日々成長しビジネスとしての生態系が多様化している

日本の3Dプリンター活用が遅れているという言説に関して、シェアラボ編集部では取材を続けているが、業界各社のセミナーを聞いている限り、日本企業も自社のペースに合わせて貪欲に情報や装置の導入を続け、自社なりの3Dプリンター活用を行っている様子が見えてくる。業界関係者への情報を集約すると、数万円で購入できる趣味の3Dプリンターを除いても、日本の製造業各社は、数十万円から購入できる産業用3Dプリンターを毎年合計一万台以上導入している状況だ。

Carbonの導入事例セミナーからもわかるように、3Dプリンターを活用した試作や治具製造(EIZO社の生産治具を3Dプリンターで内製する取り組みは経済合理性の観点から多くの企業の参考になるだろう)はもはや珍しい取り組みではない。最終部品製造への取り組みはまだまだ多くの課題があるが、着実に公表事例が増えてきた。nittoku社は産業用のRFIDの分野で3DプリンターでRFIDのガワを作ることで大きな成果を出している。製造能力に劣ると言われる現在の3Dプリンターでも、微細な部品であれば年間数万点の量産に対応できる好例だ。ご存じのように公表される事例よりも水面下で取り組まれる事例の方が数が多い。遅れているといわれる日本でも、量産時の課題を乗り越える工夫をおこない3Dプリンターを活用し、大きな成果をあげつつある企業がいま現在も新しい市場を獲得している状況だといえるだろう。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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