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TCT Japan 2025主催者に聞く!3Dプリンター展示会来場のポイントとは?

TCTJapan2025

TCT Japan 2025は、日本における最大級のAM(アディティブ・マニュファクチャリング)総合展示会として、115社の出展企業が参加する注目のイベントだ。3Dプリンターの装置メーカーだけでなく、材料、ソフトウェア、周辺機器など、AMに関わる多様な企業が出展し、業界の広がりを実感できる内容になっており、日本のAMに対する取り組みの全体感が把握できるのだが、今年は初出展企業が23社・海外企業が11社参加するということで、ここからも業界の活性化が見て取れる。

「よく3Dプリンターの展示会はどれも同じに見えるが違いはなにか」と読者から質問を受けるのだが、筆者は「TCTは非常に時代の変化に関する感度が高い展示会」と回答している。

 今回初めての試みとして、全国11カ所の公設試験研究機関が集まったパビリオンが設置され、地域におけるAM技術支援の実態を知る貴重な機会となっているが、着実に金属AMへの取り組みが日本全国の製造業に広がっていることをとらえての実現した企画だ。

 また新規出展数が増えているように、新しくAM業界への取り組みに取り組んでいる企業をいち早く誘致する他、シェアラボ編集部と共同で3Dプリンターなんでも相談所を開設するなど、上手く時代の空気をとらえて会場づくりに落とし込む企画力には新しい産業と共に成長しようという意気込みを感じる。

こうした展示会の独自色も含め、開催間近に迫ったTCT Japan運営事務局の日比 まどか 氏を直撃し、特徴や目玉を伺ったので是非参考にしてほしい。(取材・文:シェアラボ編集部 編集長 伊藤正敏)

TCT Japan 2025とは?

シェアラボ編集部 伊藤:TCT Japanさんはシェアラボニュースが始まった2019年からずっと取材させていただいていますが、改めて、どんな展示会で特徴がどんなものかをお伺いしていきます。

TCT Japan運営事務局 日比まどか氏

TCT Japan日比氏: TCT Japan 2025は、タイトルが変わる前からすると11周年になります。TCT Japanとしては7回目を迎えます。脈々と続いてきた形ですが、TCT Japanはアディティブ・マニュファクチャリング技術の総合展で、3Dプリンターの装置に限らず、周辺技術、材料、ソフトウェアといった周辺ソリューションも集まる場になっています。総合展であり専門展の要素もあるので、3Dプリンターに精通している方も、これから知っていきたい方にも、しっかりと得るものを得ていただけるコンテンツを揃えているという自信があります。前身の3Dプリンティング展を通して11回という歴史があるからこそだと思っています。

シェアラボ編集部伊藤:装置メーカーさんだけではなく、AMに取り組む際に助けてくれるさまざまなプレイヤーさんが来ているんですね。今回は何社くらいブース出展があるんでしょうか?

TCT Japan日比氏:今回は110社を超える企業・団体にご出展いただきます。ブース装飾へ力を入れる方も増えてきており、広いスペースで装置やサンプルを展示し、自社の製品や技術で何ができるかを見せる方も見受けられます。装置が並ぶだけでなく、使い方やサンプルを触って体験できたり、デモを実施するブースが増えている印象です。説明員として現場で実践されている方もいらっしゃるので、具体的な課題を持って来られた方にその場で回答できる体制のブースにしている出展者さまもいらっしゃいます。

シェアラボ編集部伊藤:2019年のころは受託造形してくれる企業や後加工をやってくれるブースは少なかったのに、ずいぶんと様子が変わってきましたね。

TCT Japan日比氏:出展企業が増えたこともあり、展示製品・サービスも多様化しています。出展者は材料メーカー、ソフトウェア、3Dプリンターのサブシステム、ノズルなどを扱う企業様など多彩です。出展製品の約60%が装置以外の製品・技術で、AM活用に欠かせない工程技術を幅広くご覧いただけます。

TCT Japan2025に「公設試パビリオン」が新登場!

シェアラボ編集部伊藤:日本AM協会さんやひょうごメタルベルトコンソーシアムさんのグループ出展ブース以外にもパビリオン形式の出展があるんですね?

TCT Japan日比氏:はい!今年初めての企画として金属AM公設試パビリオンを設けることができました。日本各地で金属3Dプリンターを導入している公設試(公設試験研究機関)の方が地域での技術推進の中核になっているというお話は伺っていましたので、今回お誘いしたところ、全国の公設試験研究機関11カ所の担当者の方に出展いただけることになりました。金属3Dプリンターの技術開発を行っている内容の展示や、ご支援先での実績をご紹介いただける予定です。

シェアラボ編集部伊藤:公設試がまとまってブース出展するというのは初めてですよね?

TCT Japan日比氏:そうですね。AM分野では11機関が同時に展示会の場で揃うのは今回が日本で初めてだと思います。皆様装置をお持ちで活動されていますが、展示会には初めて出展するという機関も多いと伺っています。東京で開催しますがTCT Japanは全国各地から来場いただきますので、地方でもサポートしていただける方がいることをより多くの方に知ってもらえる機会になってほしいと思っています。

シェアラボ編集部伊藤:初出展の企業も多いという事ですが、何社くらいですか?

TCT Japan日比氏:初出展は23社です。全体の中で11社が海外からのご出展となり、うち5社は中国企業です。中国は非常にAMが進んでおり、その勢いを感じていただけるかもしれません。3Dプリンター専用ノズルを出展する会社や、大学の出展としては、兵庫県立大学様が兵庫メタルベルトコンソーシアムとして出展いただくことに加え、今回初めて、独自のマイクロ3Dプリント技術の開発と応用研究を行う横浜国立大学の丸尾先生がブース出展され、多彩な造形技術を紹介します。大学・アカデミアの分野でのAM発展も着実に進んでいることが感じられると思います。

TCT Japan2025の主催者セミナーには大物登壇者が続々登場!

シェアラボ編集部伊藤:約2割が新規出展企業というのは、要チェックですね。装置や材料も毎年のように新しい種類が増えていますが、プレイヤーも多様化している状況が会場を見渡すとつかめるというのは楽しみです。楽しみと言えばTCTさんは毎年、カンファレンスの企画が作り込まれている印象があります。

TCT Japan日比氏:ありがとうございます。今年のカンファレンスも3日間連日開催します。1日目はAMの市場動向、ビジネス機会、海外応用事例、2日目は国内の応用事例をテーマに設定しました。例年、アプリケーション・応用事例に関するご関心が非常に高いため、導入を検討されている方やこれから検討を始める方々のヒントになるよう、様々な業界における事例が揃うように企画しました。自動車・宇宙からファッション・スマートデバイスに至るまで、多数のユーザー様に情報発信いただきます。3日目は例年同様、研究開発事例でアカデミアの先生方にご登壇いただきます。

TCT Japan 2025の初日(1月29日)のセミナーは「AM業界の動向」がテーマ

1日目の市場動向のテーマでは、グローバル市場の観点で、CONTEXTのクリス・コネリー氏から情勢を解説していただきます。国内市場に関しては、矢野経済研究所の小山様から、デジタルものづくり状況からみる市場動向、課題感についてお話いただきます。国内外の最新の市場動向を踏まえて海外の投資動向と日本の現在地を知った上で、2日目や3日目を通して、実際の活用事例やより技術にフォーカスした話を聞いていただきたいと思います。

シェアラボ編集部伊藤:企画される際にいろいろお話が出たと思いますが、ざっくりどういう動向になっているとお感じですか?

TCT Japan日比氏:詳しくはぜひセミナーに参加し聞いて頂きたいのですが、日本は着実に成長しているものの、海外、とくに中国の市場の成長スピードが速いという印象です。日本は遅れているとずっと言われていますが、業界関係者の皆様からお話を伺うと、国内も確実に進んでいて、使う側の方たちにとっても、今まで不明瞭だったものがより具体的に、クリアになってきている印象です。出展者各社のブースを見ても、以前は手に取って確認できなかったようなサンプルも、実際に触って表面精度や重さを実感できる取り組みが進んでいます。

また、ユーザー様側のマインドも変わってきている印象です。なぜAMを活用したいのか、どのように、何に活用したいのかというユーザー側のニーズや意見は非常に大事ですが、そういった意見をしっかり発信していこうというマインドへの動きも増えてきているように感じています。

シェアラボ編集部伊藤:実用事例も国内での情報発信が出てきたのは心強いですよね。

TCT Japan2025の2日目(1月30日)の主催者セミナーは応用事例の共有がテーマ

TCT Japan日比氏:そうなんです。カンファレンス2日目には、自動車分野で株式会社SUBARUの須崎 兼則氏より「カーデザイン領域における量産部品への3Dプリント活用の現在地」として日本HP様の3Dプリンターを用いたコンセプトカーの活用事例、コニカミノルタ株式会社の高木 信氏からコニカミノルタにおけるAM生産適用事例をお話いただきます。また、大型ロケット構造へのAM適用を目指した取組みと研究開発事と題し、JAXAのロケットへの活用事例を寺島 啓太氏様にお話しいただきます。

さらに建設分野では、3Dプリンター建設で非常に活躍されているセレンディクス株式会社から、株式会社JR西日本イノベーションズと共同登壇にて、車を買う値段で家を買う3Dプリンター住宅「セレンディクス3Dプリンター住宅最新動向」 ~3Dプリンター建設技術×鉄道関連施設~と題して、最新事例をお話しいただく予定です。

TCT Japan3日目の主催者セミナーはアカデミアの動向がテーマ

TCT Japan日比氏: 医療分野においては3日目に「整形外科用インプラントにおけるAM造形利用の国際標準動向」として大阪大学の村瀬 晃平先生にお話しいただきます。医療分野は規制というハードルもありますが、AMの医療応用に向け、非常に熱心にご活動されている先生から、カスタムメイドな医療インプラントの標準化動向や日本からの国際提案について紹介いただきます。

シェアラボ編集部:今年は主催者セミナーだけではなく出展社セミナーも充実していますね。

TCT Japan日比氏: 出展者セミナーのプレゼンテーションも今年は用意した枠が全て埋まるくらいで、3日間ずっとどなたかがプレゼンをしている形になります。本国からメーカー技術者様が来日登壇されるほか、日本AM協会様の中での共同出展になる株式会社FUJI様が電子基板のAM、最先端のエレクトロニクス3Dプリンター技術についてお話しされたりしますので、注目いただければと思います。

シェラボ編集部伊藤:今年はセミナー会場が二つ設置されていて常時発表があるということで、取材も大変だ、と編集部内でも話題になっていたところです(笑)セミナーブース以外にでも出展企業がミニセミナーをブースで行っているのも多く見かけるようになりましたし、内容も年々濃くなってきていますよね。

TCT Japan日比氏:そうですね。そういった意味ではブース内でワークショップを行うという取り組みも予定されています。AM実用にむけた「教育」の観点は非常に重要ですが、日本溶接協会 AM部会様が、初めてAMに接する方を対象に、AM造形プロセスを考慮したAM設計を体験し、AMの難しさと従来プロセスに対する優位性の両方を実体験できるワークショップを実施いただきます。出展者と来場者のギャップがより縮まることで、展示会内での商談やコミュニケーションが更に活性化されることを期待しています。

TCT Japan2025は出展社115社、来場者4万人以上!情報の洪水に吞まれない歩き方は?

シェラボ編集部伊藤:セミナーも出展社もかなり充実していますが、去年は何名の来場があったんですか?その方々はだいたい何時間くらい滞在されているんでしょうか?

TCT Japan日比氏:同時開催展を含む展示会全体では前回、4万名以上に来場いただきました。来場後アンケートベースでは、1-2時間、2-3時間、半日が滞在時間として多い傾向がございます。カンファレンスやセミナーを聞かれる方は滞在時間が長くなる傾向にあります。具体化していない方ほど情報収集のためにセミナーに参加される傾向があり、滞在時間が長くなるようです。

シェラボ編集部伊藤:100社以上が出展している規模なので、ぼーっと会場を見ているだけだと、すぐ時間が過ぎてしまいますよね。やはり樹脂の3Dプリンターで廉価なモノを見るだとか、樹脂材料でアップデートを追おうだとか、大型なものはどの程度の大きさを造形出来て、装置の価格はいくらだろうとか何点かポイントを定めて調査したほうがいいですよね?

出展社を社名や取扱分野で検索できるTCT Japan公式サイト

TCT Japan日比氏:おっしゃる通りで、本展公式WEBサイトでは、事前に出展者情報や会場レイアウトを公開しますので、是非事前に調査して、周り方をある程度決めていただくと、効率よく見落としもないかと思います。今年は、会場で掲示する本展のマップ上に、各出展者の製品分野をわかりやすく表示する工夫もしていますので、是非ご活用いただきたいです。

シェアラボ編集部伊藤:今年もTCT Japan事務局さんと共催という形でシェアラボ編集部が3Dプリンターなんでも相談所を開設しています。こんなことしりたいんだけど、どんなブースが出ているかなどのご相談をいただければ会場に出展している企業をご紹介しますので、お気軽にお越しください。お時間がある場合はまず,ぐるっと一周して雰囲気をつかみ、その後相談所で課題感をご相談いただくと、ご案内できると思います。あとは帰り際に「こんなところ見てきたけど、こんなテーマで他に見ておくべきブースさんある?」などお話をふっていただく形もいいかもしれませんね。

シェアラボ編集部伊藤:今回改めてブース配置をみると、結構大型ブースがふえましたよね?

TCT Japan日比氏: NTTデータ・ザムテクノロジーズ様やファソテック様、キーエンス様が規模を拡大して出展されるほか、本展初出展者として、日本HP様が単独でご参加されたり、C&Gシステムズ様とローランドDG様による共同出展、国産メーカーとしては日本電子様、SOLIZE様、グーテンベルク様、アスペクト様も参加されるなど、注目出展者様は数多くいらっしゃいます。アスペクト様には特別講演として、初日の最後に早野社長よりAMに長らく携わってこられたパイオニアとして、AMの歴史や課題、市場の今後の可能性をお話しいただく予定です。

TCT Japan 2025では事前の「予習と準備」が成果を分ける

シェアラボ編集部伊藤:最後にこんなポイントを押さえておくと展示会で得られる情報が格段に変わるというお話にも触れておきたいのですが、主催者の観点で、来場される方に伝えたいことはありますか?

TCT Japan日比氏:可能な限り、課題感や確認したい・見たいもの・知りたいことを具体的にもってご来場いただくとよいかと思います。過去に出展者様から、その場で図面を見せて相談され、すぐに具体的な話になり、有意義な時間になったと伺いました。

前のめりなご参加によって展示会で得られる情報は変わると思います。その準備のために、ぜひ本展WEBサイト上の情報をご活用いただきたいと考えております。

シェアラボ編集部伊藤:出展社の方にきくと、3Dプリンターの利用者層は特定の業界に偏っていないので、まずはどんな業界でどんなモノづくりを行っているかを確認したいそうですね。パンフレットをもらって説明員の話だけを聞くだけでは説明をする側に情報が足りないことが原因で、製品やサービスの説明に終始してしまうかもしれません。「うちはこんな材料を使っているけど最近の3Dプリンターではこんな材料使えるの?」などこちらから球をなげて、濃い情報を引き出していく必要があるかもしれませね。材料メーカーの方とお話すると、いろいろ進んでいるけどブースではだせないものがたくさんあるというお話よく聞きます。

TCT Japan日比氏:たしかにそうかもしれません。3Dプリンター活用を検討する際に材料は一番最初の分かれ道になりますし、日本が世界と戦っていく上で、材料は大きな武器になるのではと思います。3Dプリンターは装置はもちろんブラッシュアップされますが、何を作るかという観点から材料は非常に重要です。優れた技術や製品を出展される材料メーカー様もご参加されますので、ブース規模だけではなく、内容にも注目していただきたいと考えています。

また同時開催するナノテクノロジーの展示会nano techや新機能性材料展では、3Dプリンティングにかぎらない革新的な材料に関する製品・技術が数多く出展されます。材料でお困りの方は他のホールにもぜひ足を運んでいただきたいと思います。

日本のAM業界について、世界と比較しても直面している課題感や展示会の傾向は、そこまで遅れているわけではないと感じています。これから更に日本のAM業界が盛り上がってほしいと強く思っております。

ぜひ多くの方にTCT Japan 2025へご来場いただけますと幸いです。皆様のご来場をお待ちしております。

TCT Japan 公式WEBサイトにて来場登録受付中!

1年の最初にある大きな展示会で、2025年の活用を検討しよう

TCT Japanは出展企業も110社を超える日本を代表する3Dプリンターの展示会に成長しているが、情報量が多いだけに、ただ漫然と来場するだけでは、業務課題を解決する情報を社に持ち帰れるとは限らない。カンファレンスプログラムで全体観や先進事例を収集し、自社での再現や活用を模索するために会場を回るのもよいだろう。

カンファレンスプログラムでは3日間にわたり、市場動向、実用事例、研究開発と、段階的に理解を深められる構成になっている。特に2日目には、SUBARU、コニカミノルタ、JAXAなど、具体的な活用事例の発表が予定されており、実用化に向けた日本企業の取り組みを知ることが可能だ。ここでしか聞けない活用事例もある。事前予約での聴講をおすすめしたい。

出展社の多様化も著しい。具体的な課題を持って来場し、長時間滞在して情報収集する来場者も多くなっているが、シェアラボ編集部としては、事前に会場マップで見学計画を立て手際よく回ることをおすすめした。必要に応じてシェアラボ編集部の3Dプリンターなんでも相談所も活用してほしい。

TCT Japan 2025

TCT Japan 2025は出展社数115社、併設展も含めた来場予想4万人以上の日本最大級の3Dプリンター活用・AM技術の総合展示会。今年はGoogleのスマホ「Pixel」開発者の事例発表など国内外の先進事例を当事者から聞けるセミナーもあり期待が高まる。会期は2025年1月29日~31日、東京ビッグサイトを舞台に開催される。

編集/記者

2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。

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