環境負荷を大幅に低減する3Dプリント眼鏡フレーム
YOU MAWO社がEOS社製3Dプリンターを用いて製造した眼鏡フレームについて、環境への影響を包括的に評価したところ、従来品を大幅に下回る環境負荷であることが分かった。
目次
EOSが実施するLife Cycle Assessment
50 Sustainability & Climate Leaders は、気候変動に焦点を当てた国際的イニシアティブだ。気候変動を抑制する活動を評価し、ESG投資などを促進する役割を持つ。
このイニシアティブの3Dプリンター部門を代表するEOS社は、3Dプリントで製造されたさまざまな製品の環境負荷を調査した。環境負荷はLCAによって評価される。
LCA(Life Cycle Assessment)とは、製品の焼却処理におけるCO2(二酸化炭素)排出だけでなく、原料の調達や製造工程、包装、輸送工程など、製品が寿命を終えるまでに辿るすべての段階(ライフサイクル)を考慮して、環境影響を評価する取り組みだ。
50 Sustainability & Climate Leaders では、気候変動、人体への毒性、オゾン層破壊、水枯渇などの原因となる18の影響カテゴリについて LCA を実施している。
YOU MAWOのLCA評価結果
EOS社製の3Dプリンターを用いて眼鏡フレームを製造している YOU MAWO社の製品についてLCAを実施したところ、優れた評価結果が得られたことが話題となっている。
YOU MAWO社の眼鏡フレームは18すべての項目について、従来品より「大幅に優れている」と評価を受けた。特に、カーボンフットプリント(ライフサイクル全体におけるCO2排出量)は、従来フレームと比較して58%も低く、廃棄物は80%削減できることが分かった。
YOU MAWO社経営責任者兼セールス責任者である Sebastian Zenetti 氏は次のように述べている。
EOS社と協力すれば、一人一人に合った3Dプリント眼鏡を提供する未来も創出できるだろう。EOSの技術は、我々の求める高い品質と低い廃棄率を満足するものだと確信できた。持続可能な生産と製品を追求する我々の試みを後押しするものだ。この技術により、高度に個別化された(個々人向けにチューンナップされた)アイウェアの設計と製造が可能だ。よって、過剰生産を避けて、サプライチェーンを最小限に抑え、オンデマンド生産が可能になる。
YOU MAWO社経営責任者兼セールス責任者 Sebastian Zenetti 氏
YOU MAWO のさらなる環境負荷低減への取り組み
YOU MAWO社は、2021年初めにドイツで眼鏡フレームの製造を始めた。生産設備や基本的な材料、染色プロセスで用いる消耗品は国から調達している。同社の拠点はすべて再生可能エネルギーを利用しているが、LCA調査の結果、環境負荷を今以上に低減できることが明らかになった。
その方法とは、製造プロセス内の粉末材料の交換頻度を下げ、環境負荷の小さな生体由来粉末を開発することだ。
LCAは、製造工程における環境負荷を可視化する。企業が製造方法や材料を最適化するために改善すべきポイントを指し示し、環境負荷の正しい理解に助けとなるのだ。
3Dプリント眼鏡フレーム市場の将来
現在、さまざまな企業が独創的なアイウェアの製造事業に参入している。これは3Dプリンターによって生産の柔軟性が大きく向上したためだ。
注目すべき例をいくつか挙げる。
まず、世界的スポーツブランドのadidas(アディダス)はスポーツサングラス 『3D CMPT』 を発表した。3Dプリンティングの活用により、軽量性と衝撃吸収性を兼ね備えることに成功している。
フランスのアイウェアブランド MOREL は、他企業と異なり、3Dプリンターを大量生産に活用している稀有な例だ。
Materialize社は光学3Dプリンティング(眼鏡のレンズ部分)に参入した。ソフトウェア開発会社の Ditto を買収し、オンラインで眼鏡の試着サービスを可能にしている。
3Dプリントする「スマートグラス」の市場も注目を集めている。Luxexcell は AR(拡張現実)スマートグラスの 3Dプリントを開始した。
眼鏡市場は、3Dプリントの登場で大きく変貌を遂げている。数年後には、価格、機能、形状などあらゆる面で我々の日常における眼鏡の在り方が大きく変わっていることだろう。
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