AM最前線、AdditiveWorksによる造形シュミレーションとは
3Dプリンター企業大手のEOS系ベンチャーキャピタルAMベンチャーズのアジア統括サイモン・リー氏が来日し、DMM.make主催のセミナーに登壇した。サイモン氏は同社が出資するポートフォリオ企業として3YourMindとAdditiveWorksの2社を紹介した。当日はドイツと会場をインターネット会議でつなぎ、ドイツから担当者がプレゼンを行ってくれた。本記事では、2019年11月1日開催の「In the frontline of AM Business ―AMビジネス最前線―」で行われた、AdditiveWorks担当者の講演の様子をレポートしたい。(画像は、DMM.make公式Webサイトより引用)
Additive Works・・・造形シミュレーションソフトが品質を変える!
AdditiveWorksは金属積層時の積層加工シミュレーションを行うソフトウェアを提供している。かれらが目指しているのは、3Dデータをシミュレーションすることで、事前に構造上の問題点を明らかにし、造形コストをかけることなく、改善を行う取り組みだ。
ソフトウェア上で造形シミュレーションを行うことで短時間で品質の仮説検証サイクルを回す!
設計者が積層造形に不慣れな場合、造形する際に、ゆがみが発生したり、造形後に期待通りの強度を保てない場合がある。切削や射出においても装置の特性に応じた設計上の加減が大事になるように、積層造形においても同様の配慮が求められる。実際に造形し試験してから強度が十分担保できない箇所や、ゆがみやたわみが発覚すると、再度設計見直しを入れ、再造形する必要が出てくる。しかしこうした試行は時間や費用が発生する。
19万円。20時間かかるテスト造形をシミュレーションでコスト大幅削減!
AdditiveWorksの資料によれば、飛行機用のパーツを金属3Dプリンターで積層造形する際に、加工時間として20時間、材料費として290ユーロ、電気代やオペレータを含む工作機械としての3Dプリンターの稼働コストが1310ユーロかかるため、合計1600ユーロが必要になる。1ユーロ120円だとすると、192,000円かかる取り組みとなる。
こうした安価とは言えないコストを削減し、より早くより高い品質に仕上げるためのシミュレーションこそが、AdditiveWorksの目指すところだ。
ワークの造形時の方向(縦置きがよいか横置きがよいか)、サポート材の形状や量、事前に設計データを調整することで、そりやゆがみを抑制する調整、3Dプリンターが造形する際のシミュレーション、レーザーで焼結する際の温度シミュレーションなど、品質改善のために打てる打ち手に即応したシミュレーションをカバーしているのが同社のAmphyon2019 として提供している。
こうしたソフトウェアでのシミュレーションは、3DCADの延長として取り組まれていた動きだ。3DCADを推進するベンダーでは、シミュレーションこそがモノづくりのデジタル化の価値とまで言い切るコスト削減効果が大きく見込める分野でもある。金属3Dプリンターが今後多くの企業に導入されるにつれて、求められる機能分野だといえる。
造形する3Dプリンターごとの最適化は今後の課題
非常に興味深い取り組みだが、現状ではまだ利用する3Dプリンターの機種や設定パラメータとの連携は未整備とのこと。次々と新機能をモジュールとしてリリースしている途中とのことで、今後の開発がまたれるところだ。
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。