Formlabs 交流イベント「FORM MEET 2024」参加報告
2024年11月14日にFormlabs株式会社 主催「FORM MEET 2024」が東京で開催され、我々シェアラボは招待を頂き参加した。Formlabs社の製品紹介や国内製品ユーザーの具体的な導入活用事例講演があり、また参加者どうしが活発に交流、情報交換をする姿も見られ、とても活気のあるイベントであった。本記事では、その概要をお伝えする。(写真は出展社許可にて記者撮影)
Formlabs社「FORM MEET 2024」とは
Formlabs社は2011年にアメリカで設立され、3Dプリンター製品としてSLA方式のFormシリーズと、SLS方式のFuse1を全世界累計で13万台以上販売した。「FORM MEET 2024」はFormlabs社が年1回主催する製品ユーザー、検討中顧客、販売パートナーを招待し開催する交流イベントである。今回は前回より大幅に多い100名以上の参加者があり、会場はほぼ満席の状態であった。以下に概要をお伝えする講演のほかに、プリンターシステム製品実機やサンプル展示もあった。
講演の要点
開会挨拶 & 会社概要
Formlabs株式会社 チャネルセールスマネージャー 大熊 宏 氏
- Formlabs社は「誰もが簡単にものづくりができる」を目指す。
- 最近企業の使命を「Build the tools that make it possible for anyone to bring their ideas to life」に改定。
- Formシリーズは年間約1万台販売で、同種販売数世界2位。Fuse1は年間1000台販売で同種販売数世界3位。
- Form 4はTIME誌「The Best Inventions of 2024」に選定。
- 汎用レジンの価格を値下げ、まとめ買い割引も開始。
製品アップデート
Formlabs株式会社 シニアアプリケーションエンジニア 小林 俊亮 氏
- プリンター製品 Form 4/Form 4L 造形後洗浄装置 Form Wash /Wash L(第2世代)など
- Fuseシステム 3点セット Fuse1 Fuse Blast(自動研磨装置)オプションPolishシステムで光沢研磨
- 造形後粉末除去装置 Fuse Sift グルーブボックスバンドル(粉末飛散防止)
- Form4用新材料 GreyレジンV5(安価、透明性・造形速度向上)Fast Model(造形速度・審美性向上)Precision(寸法精度良)
- Fuse1用新材料 Nylon12 White(白色で染色しやすい) Tough(壊れにくい)
- Fuse Wash用洗浄液 Resin Washing Solution(有機則非該当、非揮発性)
- Developer Platform 社外材料も使えるオプション
- ソフトウェアPreForm3.41.0(中空化、ラベル付け、テクスチャ付け、SLS用パーツケージ)
ユーザー講演
株式会社豊田自動織機 大岩 洋之 氏
- 社内3Dプリンタ活用状況
- 3Dプリンタの保有状況。近年3年半で従来の2倍以上の台数を各事業部で導入。樹脂MEXプリンターが最多。
- 未導入部署が造形依頼する「3D造形グループ」の役割。①社内のAM活用推進 ②3Dプリンタを活用した造形支援
- 社内の全3Dプリンタを把握し担当者を定期的に集めて情報課題共有。
- まず知ってもらい、AMを工法の選択肢の一つにしてもらう活動。
- 金属はダイカスト金型入れ子専用を1台所有 他の目的造形は外注。
- Form 3/3+各1台保有 既存機種の材料物性やランニングコストの課題改善。
- 透明材料は内部可視化用途でコンパウンド研磨で十分な透明性。その他耐衝撃、軟質材料、帯電防止材料も使用。
- Fuse1+/ Fuse Sift/ Fuse Blastを1セットを最近導入。昨年FORM MEETで既存ユーザと知り合い、見学の結果設置使用環境が確認できたことで導入。
- 靭性必要な機能評価、形状確認、治具などに活用、造形個数が多い依頼が増えた変化。
- 社内で成功事例を定型書類ファイルで共有
- 例として大型部品を社内で分割造形後接合し、社外で3週間かかっていたのを1週間に、コストも大幅低減。
ユーザー講演
株式会社コードテックCAM 内田 雅人 氏
- 電子基板やプログラムメーカー、市場ニーズから自動車アクセサリーパーツなど自社製品開発製造。
- Form 3は試作と塗装などによる少数生産に、Fuse 1は実販売品少量生産に使用、粉末飛散の問題はない。
- 活用効果
- フューエルキャップや電子デバイス筐体の試作検討が速く、早く量産化出来た。
- Fuse 1での電子デバイス筐体量産では、試作で偶然出た積層痕を活かした表面デザインにより未塗装で販売。
- 外国車パドルシフトレバー延長パーツは展示会に合わせ急いでデザイン、造形して持参したら好評で販売。
- 外国車純正フットレスト延長パーツ 昨年FORM MEETで知り合ったメーカーに塗装依頼して製品化。
- Fuse 1用Fuse Brast導入前は安価市販ブラスターによる手作業で3~4時間かかったが、導入後自動30分で不可欠に。
- 作り手でより多くの情報を共有することで、AM文化を普及活性化することが重要。
ユーザー講演
有限会社スワニー 橋爪 良博 氏
- 「人の心を動かすカタチづくり」をコンセプト 設計、部品試作、量産を提供。
- 設計者が小さな失敗を速いスピードで繰り返し挑戦できる環境と仕組みを作っている。
- 若い設計者が加工から販売まで経験し、承認欲求が満たされ、自信につながる。
- Form 3の活用例
- クリア材料での機能評価パーツで4MPa加圧流体の流れを可視化出来た。
- ドローンショー用機体500機を3週間で設計から製造納品出来た。
- Form 3の反転型から鉄粉型内圧縮後焼結で金型を1~3日で作る技術を共同開発。
- 3Dプリントを使った小児歩行補助具を開発中。
- 6歳でも使える樹脂3Dプリンター「Kidoodle」を開発。デジタルに強くない製造担当者や教育者にも有用。
まとめ
本イベントに参加したことで、日本国内でもFormlabs製品ユーザーが増えていることを実感できたと同時に、参加者から個別にうかがった声からも、Formlabs社が、3Dプリントの前工程から後工程にわたる課題解決や、これからAMを始めるユーザーの需要を品質、速度、コスト、運用効率と安定性の点で把握し、すぐに製品や価格に反映させていることと、日本の企業の大小を問わず、多くのユーザーの今の需要と合っていることが、本イベント参加者の多さや熱心さから垣間見ることが出来た。また、ユーザー講演からも単なる成功や成果だけでなく、他社製品との併用や改善要望を含めたリアルな情報や、イベントから生まれたユーザーどうしの交流効果を発表されたことで、更に交流が活発になる好循環が起きていることは、これまで日本でなかなか起きなかったことでもあり、これからの日本のAM活用拡大にもつながる良い傾向であると感じた。使い手が売り手からただ聞くだけ、得るだけの一方通行ではなく、このように双方または使い手どうしが、本音の情報を交換できるような機会と雰囲気を多く作っていくことは、今後ますます必要であり、有効であることを認識できたイベントであった。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。