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ORNL、メイン大学の研究者らが3Dプリントによりリサイクル可能な天然素材の床パネルを開発

ORNLのニュースページより。

アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(アメリカ合衆国テネシー州オークリッジ、以下、ORNL)とメイン大学(アメリカ合衆国メイン州オロノ)の研究者らは、3Dプリントによる単一構造のリサイクル可能な天然素材の床パネル「SM2ART Nfloorカセットパネル」を設計・開発した。この床パネルは、建設材料として使用される鋼材などと同等の強度を持つとされる。このプロジェクトは、持続可能な材料と製造技術の開発を目的とした「SM2ART(Sustainable Materials & Manufacturing Alliance for Renewable Technologies)」プログラムの一環である。同プログラムでは、以前にも米国内初の完全バイオ素材を用いた3Dプリント住宅「BioHome3D」を建設している。このBioHome3Dの構成要素と新たに開発された床パネルは、米国住宅都市開発省(HUD)が主催した「2024年住宅イノベーションショーケース」において展示された。(上部画像はORNLのニュースページより。出典:ORNL)

環境に優しいモジュール型建築への転換

新たに開発された「SM2ART Nfloorカセットパネル」は、従来の鋼材やコンクリートを使用した床構造の代替を目的とする。この技術により、高強度かつバイオベースの建材が生み出され、環境負荷の低減につながると期待されている。また、本技術は、工場であらかじめ建築部材を製造し、建設現場で組み立てる「モジュール型建築(プレハブ工法)」の発展にも貢献する。

モジュール建築では、建物の一部を工場で製造してから現場で組み立てることで、施工の効率化とコスト削減が可能になる。この方式は特に都市部の住宅建設において、持続可能な建築手法としての期待が高まっている。

バイオ由来材料の活用による革新

ORNLの研究者ケイティ・コペンハーバー 氏は、以下のように述べる。

「今回の研究は、環境に配慮した強靭な建築用床パネルの開発における大きな進歩である。バイオベースの大規模3Dプリント技術を活用することで、従来は31個の部品と3種類の材料から構成されていた床組みを、単一材料の床パネルに置き換えることができた。しかも、従来の鋼製床と同等の強度を備えている」

この「SM2ART Nfloorカセットパネル」の強度は、ポリ乳酸(PLA)と木粉の独自配合によって実現されている。PLAは、トウモロコシの廃棄物から得られる生分解性熱可塑性ポリエステル樹脂であり、木粉は製材業の副産物として発生する廃材を利用している。

メイン大学先端構造・複合材料センター(ASCC)の構造技術者スコット・トムリンソン(Scott Tomlinson)氏によるとPLAと木粉の混合材料は、大型3Dプリント部品のリサイクル可能性に優れた材料とのことだ。本技術によって、鋼材とコンクリートを用いた従来の床構造に比べ、剛性の高い床面を実現し、歩行時の快適性も向上したという。

3Dプリントによる生産効率の向上

今回、研究チームは、大型3Dプリンターを活用し、PLAと木粉の混合材料を幾何学的に正確な形状で積層、約30時間で製造した。このプロセスにより、鋼製床を従来の手作業で組み立てる場合に比べ、労働コストを約33%削減できることが分かった。また、従来の鋼製フレーム床では、電気配線や配管、空調用ダクトを後から設置するための加工が必要だったが、3Dプリント技術を活用すれば、これらの配線・配管用の穴をあらかじめ設計に組み込んだ状態で出力できる。

持続可能な循環型経済への貢献

「SM2ART Nfloorカセットパネル」は、完全にリサイクル可能な点でも画期的である。従来の建築材料は、建物の解体後に廃棄物として処理されるが、PLAは再生可能な材料であり、廃棄後も別の製品に再利用できる。そのため、本技術は「循環型経済」の実現に貢献するものと期待されている。現在は開発初期段階にあり、今後は、製造プロセスをより迅速かつ効率的にし、さらなるコスト削減を実現することや、耐火性の向上や、持続可能な断熱材の導入、生産技術の改善などが研究課題として挙げられている。

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国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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