アスリートデータ×3Dプリンターから生まれたadidasのランニングシューズ「4DFWD」
ドイツのスポーツブランド adidas(アディダス)と3Dプリント技術のスタートアップ企業 Carbon(米カリフォルニア州)は、3Dプリント技術を用いて共同開発した新たなランニングシューズ “4DFWD” を発表した。
3Dプリンターで作られたアディダスのニューシューズ
東京オリンピック2020では、アディダスのランニングシューズ “4DFWD” を着用した選手が表彰台に立った。
アディダスが17年間蓄積したアスリートのデータと、Carbon社の3Dプリント技術を用いて作られた新しいランニングシューズである。一般向けの販売は2021年8月12日から始まった。
3Dプリンテッドミッドソール
3Dプリント技術が用いられているのは、「ミッドソール」部分である。ランニングシューズが接地する部分を「アウトソール」、靴の中敷きを「インソール」と呼ぶが、ミッドソールはそれらの中間にある。
着地の際の力を分散させて衝撃を吸収、使用者の負担を軽減することが主な目的である。一方、4DFWDにおける格子状(中空構造で自在に変形でき、大きな弾性力を持つ)のミッドソールは着地時の衝撃を効率良く前進する力に変える。
開発の経緯
アディダスと Carbon の提携は 2016年に始まる。
革新的なミッドソールの厳しい機械的特性要求に応えるため、新しいエラストマー(弾性樹脂)材料 “EPU41” を開発した。また、従来にない構造のミッドソールを効率的に成形するため、ツールの開発を始める。
2017年、格子状のミッドソールを用いた “4D Futurecraft” を発表。格子の密度を変えることでクッション性を調整し、ランナーに合ったシューズを提供可能となった。
これ以後、ミッドソールの形状についてのさまざまな検討が行われた。ひし形、長方形、楕円形など、3次元格子構造の形状は無限のバリエーションがある。
アディダスの持つアスリートのデータをフィードバックしながら、500万を超えるチューニングを施し、形状を最適化させたランニングシューズが、2021年に発表された “4DFWD” である。今回の成果は、3Dプリンターの自由な創造力があってこそ成し遂げられたものと言えるだろう。
3Dプリント技術のスタートアップ企業 Carbon
2013年創業、アメリカ・カリフォルニア州レッドウッドシティに本社を構える3Dプリンターを製造・開発するスタートアップ企業。「ハードウェア、ソフトウェア、材料科学のプラットフォーム」として、これまで米自動車メーカー Ford Motor やアメリカンフットボール用品メーカー Riddell と3Dプリンター技術を用いた製品の共同開発を行ってきている。今回のシューズ開発にも、同社が専門とする 光の投影と樹脂を組み合わせて液体を固体化する「digital light synthesis」技術が用いられている。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。