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新型コロナウイルスの影響―製造業界、3Dプリンタ製造業界の場合
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。
ShareLab編集部は、今までもさまざまな新型コロナウイルス関連のニュースをお届けしてきた。言わずもがな、コロナウイルスによる膨大な経済損失はどの業界にも当てはまるが、中でも、日本経済の屋台骨を支える製造業界は苦境に立たされている。相次ぐ工場の操業停止など前例のない危機に対してどのように立ち向かうべきなのか。
今回は製造業界、3Dプリンター製造市場という切り口でコロナ禍での大きな動きをお届けする。
製造業界―コロナ禍で鍵となる工場シェアやスマートファクトリー
コロナ下の製造業企業に見る”工場シェア”のお話は以前させていただいた。さまざまな動きがある中、今後特に注力していく必要のある分野とは何か。鍵を握るのは、スマートファクトリーだ。スマートファクトリーを国家レベルで推進するドイツを例に、そもそもスマートファクトリーとは?どのようなメリットがあるのか?をご紹介する。
ドイツの国家施策「インダストリー4.0」
日本の製造業が新型コロナウイルスの影響により大打撃を受けている一方で、同じく製造業を基幹産業としているドイツは、自国生産を上手く行い、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えている。 自国生産によってマスクを供給している他、感染対策となる手袋や防護服、患者の拠り所となる人工呼吸器のメーカーなど、様々な製品を自国生産でまかなっている。 ドイツが“モノづくり大国”として成功している要因は、「労働生産性」と「高付加価値生産性」が高いことであるというのは有名な話だが、何故今回のコロナ禍でも比較的その影響を抑えられているのだろうか。
ドイツは、国を挙げて「インダストリー4.0」というプロジェクトに取り組んでいる。 ドイツ政府が2011年に発表した「インダストリー4.0」は、産官学共同で進めている「第4次産業革命」を起こす取り組みだ。そのコンセプトは、工場をスマート化する“スマートファクトリー”にある。スマートファクトリーとは、その名の通り”工場をスマート化する”動きである。具体的に言うと、人間、機械、その他の企業資源が互いに通信することで、各製品がいつ製造されたか、そしてどこに納品されるべきかといった情報を共有し、製造プロセスを最適化することを目的としている。 “スマートファクトリーの実現”により、労働生産性向上をはじめ、コスト削減、超少量多品種対応、品質向上といった多くの課題が解決するとされている。
日本版「インダストリー4.0」?
このスマートファクトリーを、日本に当てはめて考えてみよう。このような状況下において、日本の製造業は、工場停止などの生産調整を余儀なくされたが、スマートファクトリーはこれを解決することが出来る。例えば、CADなどを用いてデジタル上で生産ラインを構築し、スループットやコストなどを予め予測することができるため、その時々で社会に求められる製品に適応した生産計画、リソース配分が可能になる。 また部品供給が滞り、突然設計変更せざるを得ない場合でも、デジタル上で製品の再設計と生産ライン再構築の検討が可能なため、生産ラインを柔軟に変更しやすくなる。
デジタル上で生産ライン構築及び検討が図れるため、同様の生産ラインを異なる工場や地域で立ち上げる際も、シミュレーションを行うことで徹底的に検証を行い、費用対効果も算出したうえで迅速な投資判断することが可能となる。 また、デジタルデータがあれば生産設備の構築が迅速に行えるため、サプライチェーンの一部が途絶した場合においても、異なる工場や地域において代替製品の制作が迅速に可能となる。
このようにスマートファクトリーは、ShareLab編集部でもお伝えしてきたような3DプリンターやCADなどのデジタル分野と密接な関わりを持ち、部品共有の滞り・サプライチェーンの分断など不測の事態においても、デジタル上で設計~検証~変更~構築が行うことが出来る。
3Dプリンター製造業界―相次ぐ関連イベントの中止や今後の市場予想
3Dプリンティング関連イベントの中止・延期
新型コロナウィルスの感染拡大により、世界各地のアディティブ・マニュファクチャリング関連イベントが中止に追い込まれている。
世界最大規模のアディティブ・マニュファクチャリング関連団体のアディティブ・マニュファクチャリング・ユーザー・グループが、今月22日から26日までの日程で開催を予定していた年次会議を中止したほか、米カリフォルニア州アナハイムで開催予定だったラピッド+tct2020も来年までの延期となった。また、感染拡大が続くスペインで開催が予定されていたアディティブ・マニュファクチャリング関連展示会のADDIT3Dも11月の開催へ延期された。同じく感染拡大が続くドイツで開催が予定されていたラピッド・テック展示会も来年の開催へ延期された。
3Dプリンター製造の世界市場予測
そのような中、株式会社グローバルインフォメーションは2020年7月31日、「3Dプリンター製造の世界市場(2020年~2030年):Covid-19の影響による成長と変化」の販売開始を発表した。同レポート概要に沿って、コロナ下の3Dプリンター製造業界および今後の市場予想をお伝えする。
3Dプリンター周りの装置販売と関連サービスで構成される3Dプリンター製造の2020年の世界市場規模は、新型コロナの影響を受け、2019年の101億米ドルから87億米ドルへと減少し、年平均成長率は13.76%で縮小する見込みだという。しかし、その後市場は次第に回復基調となり、2023年にはCAGRが戻り24.2%、166億9000万米ドルに達するとしている。
同レポートは、3Dプリンター製造市場をけん引する地域についても触れている。最も大きな可能性のある地域は北米であり、アジア太平洋地域も今後急成長が期待される地域だとする。産業別に見ると、自動車分野での3Dプリンタ活用は、市場の成長を大きく後押しするとあった。車両の軽量化、性能向上、燃費向上を目的に、自動車分野での3Dプリンター活用が本格的に拡大することで、その需要が大きく高まるとしている。
一方、市場成長の抑制要因となっているのが、コストの問題だ。特に、材料費などの他、消費電力、関連ソフトウェアの導入/メンテナンスといったさまざまな要因が運用コストを押し上げており、これらが市場成長の抑制につながっているという。そうした中、3Dプリンターに関する技術革新も急速に進んでおり、大型造形に対応し、従来よりも高速に造形できる装置なども開発され、市場投入を果たしている。